イノベーションの解

2013-05-01 06:44

というわけで、私がこのブログに書くことは、8割程度「世の中に対する悲観的な見方」もしくは「愚痴の類」である。

しかし

常に「何か道はないか」と思っているのも事実だ。というわけでここ数日仕事の合間を縫ってこの人に関する記事を読んでいる。

ビジネスデザイナーZIBA濱口秀司さん のシンプルな図解とフレームワーク



濱口さんは本も出版されていない。だから、自分の勉強用にWeb記事や講演を聴いた方のBlog画像を狩猟しまし


via: ビジネスデザイナーZIBA濱口秀司さん のシンプルな図解とフレームワーク - NAVER まとめ

極めて面白い。何よりも自分が講演で強調しているように「大学のセンセイではない」ので彼の実成功体験に裏打ちされているところが良い。世間に流布されている「イノベーションマネージメント」の類とは一線を画している。

特に面白いと思ったのは「イノベーションを起こす方法の一つは、バイアスを壊すこと」という類だ。ではちょっと自分でやってみましょう。

図形を描くソフトについて。2次元と3次元という軸があります。使うのに易しい、難しいという軸があります。

ch0.png

既存のソフトをプロットしてみると、2D-易しい象限。それに3D-難しい象限に多くあります。2D-難しい象限にはPhotoshopとかはいるかもしれません。

というわけで2D-易しくできる。3D-難しいという「バイアス」が存在しているわけです。

これを壊してみましょう。

ch1.png

ほら。東大の五十嵐さんが開発したTeddyはここにきます。これでTeddyの何がイノベーティブかが図で簡単に理解出来ますね。ををこれは便利(これを自画自賛と言います)

一つ提案だけど、WISSとかで「自分の着眼点の何が新しいか」を説明するのにこういうチャートを作成することを義務付けてはどうでしょうかねえ。もちろん研究というのは着眼点勝負だけではないのだけど。既存研究(あるいは従来技術)はこういう象限にあります。私はそうではないここを狙っています、というのがあると読んでいるほうもすっとわかると思うのだけど。

バイアスとは常識でもある。それを裏切る研究に触れると我々は「おわっ」と思うのではなかろうかな。

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濱口氏はこうも書いている。

だから僕の場合は、社内教育に限らず、オープンセミナーなどをやる際に実践しているのが、あえて「ある塊は論理的に見せるが、包括的な概念や各塊やその理論の繋がりは意識的に説明しない。全体像としてはミステリアスにしておく」というフォーマットで進めます。

via: ビジネスデザイナーを育成する方法-ZIBA濱口流"知識の移転"(3/3):企業のIT・経営・ビジネスをつなぐ情報サイト EnterpriseZine (EZ)

彼が発言している内容、あるいはプレゼンを聞くと確かにこのとおりだと思う。個々の要素はとてもおもしろいのだが、そのつながりが意図的に隠されている。つまり彼の言ったことを勝手に自己流に解釈してもいいわけだ。Creative Commonsバンザイ!

ブレーンストーミングは、「バイアスをあぶり出すために行う」という彼の主張は大変おもしろい。そこで「日本人には八百万の神の視点があるからイノベーションに向いている」という意見については、賛成したい気持ちと反対の気持ちが半ばする。彼の理論によれば、「バイアス」はイノベーションを殺す一番の敵だ。そして日本では無言のバイアスが常に強く働いている。

何度も書くが、これは悪いことばかりではない。大震災の後、(もちろん犯罪はあったのだろうけど)多くの人が(相対的に)安心してよる自宅に帰りつけたのはこの強力なバイアスのおかげだ。-他の多くの国では間違いなく暴動が起こっていただろう-

しかし大企業の人に新しいideaを話すときは常にこの「バイアスとの戦い」を念頭においておく必要がある。彼らが決して明示的に語らないバイアスをうまく避けなくては、彼らに話しを聞いてもらえないのだ。

というわけで

上記の「バイアスを図にしてあぶり出す」という方法はとても良いと思う。なによりも彼らの「不文律」を形にすることで、それを一旦客観的な形に変換することができる。言葉で彼らの「不文律」に逆らうのはとても危険な行為だが、図の上で「ほら、ここが開いてますよね」ということはお互いにとってより安全な行為だ。

コンサルタントとしては、図だけ書いておき、顧客に「ここに新しい領域があるじゃないか」と書かせるのが一番いいのだろうな。手柄は顧客に。

彼がプレゼンの中で述べている「桃太郎を壊してください」という課題は面白い。この問題に取り組むためには「桃太郎があなた達の中で象徴しているものはなんですか」という問題を明らかにする必要がある。「桃太郎」は文字に書かれた物語ではなく、それを読んだ人が考え、イメージを持つものなのだ。それは何か。それが明らかになれば壊すことが可能になる、と。

というわけで、この内容を「ユーザインタフェース開発失敗の本質」第3版に追加しようと思いながらあれこれ考えているうちにあることに気がついた。明日は(覚えていれば)その話しを。