「当たり前の義務」を楽しい経験に

2013-11-05 06:56

飛行機にのると、必ず出発前に安全上のインストラクションが行われる。それは完全にルーチン化しており、初めて飛行機に乗った人以外誰も見ていないと思う(私は結構好きだが)

しかし義務だからやらなければならない。ビデオがあればよいが、ビデオがついていない機体ではキャビンアテンダントが実演しなければならない。きっと何十回も何百回も練習したのだと思うが、義務だからやっている感ありありである。

こういう「誰もが当たり前だと思っている」ところに気がつけば、いろいろとイノベーションのネタがある、、と他人ごとのように書いてみよう。いや、このビデオがとても気に入っただけなのだけど。

いや、楽しい。あるいはこのビデオをみてエンターテイメント分野における日米の絶望的な実力差に思いを馳せるのもいいだろう。日本だったらまず間違いなくどっかのお笑いコンビがでてきて、つまらないギャグを交えた説明をして終わりだ。(あるいは私の感覚がずれているだけかもしれない)

ミュージカルビデオが即ち顧客サービスのレベルの高さを意味するわけではない。しかし乗客を単に利益をもたらすものと考えていて出てくる発想でないことは確かだろう。

Virginのやり方は、顧客との新たな関係性を求める企業の動きの一例と考えることができる。同様の動きを見せている企業としてはTesla Motorsがある。(中略)Teslaは第一に「人々が運転したくなる車」の実現を目指している。何よりも「顧客へのアピール」を最重要課題として考えているのだ。

via: Virgin Americaが制作した機内安全(ダンス)ビデオがYouTubeで人気上昇中 | TechCrunch Japan

こう聞くと、働いたことがない人は「当たり前のことだ」と思うに違いない。しかし少うとも私にとってこれはとてつもなく難しいことだ。短期的な収益は数字ででてくるし、わかりやすい。かくして

「そんなビデオ作成に大金をはたいたとして、どれだけのリターンがあるか合理的に説明してくれ」

という言葉の前にイノベーションは消えていくことになる。
その企業が「どんな企業か」というのはコーポレートスローガンが語るものではなく、その会社が提供しているサービス、製品からにじみ出てくるものだと思う。少なくとも私なんぞはこのビデオを見ると

「機会があればバージンに乗ってみるか」

と思うのだが。