ユーザビリティの歌

2014-01-27 09:45

Microsoftは優れたソフトウェアを生み出すことができる企業だ。批判をするのは簡単だが、例えばNECのACOS(そんなものがあったことを誰か覚えているだろうか?)上のスプレッドシートを使ったことがある人であれば、NECのほうがMicrosoftよりソフトウェア開発能力が上だとは言わないだろう。

前にも書いたがここしばらくWindows8を使っている。なんとか使っている。企業が馬鹿げた製品をリリースするのはこれが初めてではない。いや、これよりひどいものはいくらでもある。

私はユーザビリティ原理主義者ではない。だから教条的にモードがどうのこうのということはしないが、先日来ある動作には特に苛立っている。

Windows8には全画面のMetroとかmodernとかいう画面モードが有り、それとは異なる従来型の画面モードがある。全画面は主にタブレットの使用を想定したのだと思う。従来のユーザを切り捨ているわけにはいかないから、従来画面も「残す」けど将来はみんな全画面を使ってね、というのがMicrosoftの元の意図だったのだと思う。

しかし

今のところ私には全画面モードは無用の長物だ。だからほとんど常に従来のウィンドウがたくさんあるモードで使っている。ところが

PDFの書類をダブルクリックした途端、いきなり画面が全画面モードに移行するのだ。更に悪いことにそこからどうやってさっきの従来の画面モードに戻るのかわからない。

私の考えでは、PCを使うのが苦手な人にとってこの「突然画面が変わる」というのは一番恐ろしいものの一つだと思う。え?今何が起こったの?さっきの画面どこにいったの?でもってパニックに陥る。

あれこれ調べて「タッチ画面を左から右にスワイプすれば、元の仕事に戻る」ということを知る。それをやると周りの人が感心してくれるが、「普通」のユーザはいつまでたってもこの操作にはたどり着かんだろうな。(画面にしつこく矢印がでていたのは覚えている。今から思えばあれはこの操作を「教える」ためのものだったかもしれんが、その時は「消し方」がわからず苛立っただけだった)

こんなのは、「よくある些細なユーザビリティ上の問題」なのかもしれない。繰り返しになるがこれよりひどいものは世の中にいくつもある。しかし私が不思議に思うのは

一方Microsoftは、127カ国超でユーザビリティテストを実施し、ユーザーにとって最も適切な情報を見つけられるOSに磨き上げたとしている。

via: 「Windows 8」ユーザビリティへの批判は時代遅れか--大幅な変更の妥当性を考える - CNET Japan


さすが金持ちMicorosoft.世界中でユーザビリティテストを行うのにいくらかかるか想像もつかない。しかし一体彼らは世界127カ国でのユーザビリティテストで何を発見し何を改善したのだろう?これが不思議でしょうがない。

これは私が「ユーザビリティ原理主義」を毛嫌いする理由の一つになっているかもしれない。ユーザビリティテストが重要だ。ユーザセントリックがどうのこうのと言ったところで結果としてこんな奇妙なものがでてくる。

Windows 8も最初ダメだったところは8.1で大量に片付いて、今はだいぶ使いやすくなってます。チュートリアルもできて、UIの細かいところも直ったし、みんな誰かの受け売りで悪口言ってるだけなんじゃ…。

VistaよりXPを宣伝するのならまだ理解できるんですが、Vistaと違ってWindows 8が消えることはありません。サポート期間も7よりずっと長いです。

それにタッチUI、モバイルとデスクトップのコンバーティブル…というのは全体的な潮流であって、1社で後戻りできるようなものでもないですからね。

via: HPがWindows 7復活キャンペーン。未来から逃げても… : ギズモード・ジャパン


まさかとは思うが、Microsoft内部でもこんなレベルの意見が大声で語られている、ということはないよね。

Microsoftが如何にユーザビリティ評価予算を無駄に使ったか、ということに関して是非知りたいと思うのだ。おそらくその物語からは多くの人がいろいろなことを学べるに違いない。