Simplicity = Intent

2014-08-13 07:08

昔働いた会社のもと社長が、Facebookでこんなことを書いていた。

「Go Proが好調です。日本の家電メーカーの社長さんと話すと”うちの製品のほうが機能も性能も上だ。なのに売れない”とボヤいています」

多分そうなのだろう。前にも書いたが、日本の会社では「失敗し、反省しないものが出世する」仕組みになっている。別の記事を引用する。

しかし、同じ方向を向いて歩んでいても、大手メーカーのカメラとGoProは、スタート・ポイントとスマートフォンに対峙する立ち位置が大きく異なるように見える。

 一方は、開発者自身が「本当に欲しい」と考え、自分が使いたい機能を加えてきたら、いつの間にかプロにも見初められる機器が完成していた。これまでと同じ進化の方向にスマートフォンがパートナーとして存在する。

 もう一方は、従来の枠組みで機能を進化させてきたら、いつの間にかスマートフォンという強力なライバルが出現。そこから逃れるために新たな機能を加えている。

via: デジカメの革命児「GoPro」、300万台超を売った人気の秘密(page 5) - 家電・モバイル - 日経テクノロジーオンライン


簡潔にして状況をよくとらえた文章だと思う。この二つの姿勢には大きな違いがある。前者は「自分たちが何を作りたいのか」が明確であること。後者はそれが不明確である、という点だ。

デザインとは意図のことである、とは表のブログに書いたこと。「機能追加」というのは基本的に

「自分が何をしたらいいかわからない」

という無知、無意図の告白であり、

「自分たちはこんなにがんばっている」

という言い訳である。

話はいきなり飛ぶ。なぜデザインはシンプルでなければならないか?

NYTは、「Communicating at Apple」(Appleにおけるコミュニケーション)という講座を紹介している。その中で講師は、Picassoの「The Bull」を元にした11枚の絵を見せる。スライドが進むごとに、雄牛の細かい部分が取り除かれていき、最後には棒線画のみが残るという。

via: 「シンプル」を追求するアップルの社内教育「Apple University」--NYT報道 - CNET Japan


「シンプル」にするとは、たくさんある線の中から「必要なのはこの線だ」と一本を選び、そしてその結果を世に問う事である。すなわち「シンプル」にする、ということは「この製品はこのように使う物だ」という強い明確な意図と同義語なのである。

モニターを見たりファインダーを覗いたりしながら撮影することが難しい状況が多いからそれらははじめから不要であり、そうなるとだいたいの方向に向ければ撮りたいものが画面に入るように広角のレンズが必要になる。もちろんズーム機能は必要ない。ブレ防止機能はぜひとも欲しいところではあるものの、一般のビデオカメラについている手ブレ補正機能ではアクションカメラの利用シーンでの激しい動きに対応するには不十分であり、中途半端なものは搭載しない方がいいと割り切ってしまう。

via: SONYはなぜGoProを作れなかったか? 日本のモノづくりを考え直す時 WEDGE Infinity(ウェッジ)


これが「意図」というものだ。それは

「よくわからないけど、とりあえずつけておこう」

といったメンタリティとの決別でもある。

それゆえ「意図を持たないことで出世してきた」人たちが上にいる会社の製品はゴミになる。「うちの製品のほうが機能も性能も上だ」とかいっている人間がトップにいる限り、その会社の未来はB to Bにしかない。お客様のご機嫌を伺うことに熟達し、「意図」とは「お客様の意図」のことだ、と断言できるような業態にそうした人間は向いている。

というわけで今日は唐突に終わる。