社内のアイディアコンテスト

2015-01-09 18:10

日本の企業は、「社内のアイディアコンテスト」が大好きである。第一に「会社はみんなのアイディアに耳を傾けていますよ」という姿勢を示すことになる。第二に「社員の未熟なアイディア」をこきおろすのは楽しいし自分の経営者としての力量を示すことになる。第三に対して費用がかからない。

というわけで、苦境に陥った日本の家電メーカーはアイディアコンテストにいそしむのであった。問題は

「そもそも苦境に陥ったということは、経営陣に新しい事業を評価する目がない、ということだ。その経営陣に社員のアイディアが評価できるのか」

という点にある。今まで打率1割の打者しか育てられてませんでした、という監督の声を誰が聞こうというのか。そういえば元巨人の土井が「イチローはだめだ」といったとかなんとかで「わーい、俺土井監督にけなされちゃったー!」と高校生が喜ぶ漫画があったな。とはいえ多くの企業では冗談ではなくこうしたことが大真面目に行われている。

この問題を認識している数少ない企業は、それぞれに「対策」をとっているようだ。まずシャープ。

アニメの声優の声で「べ、べつに、あなたにほめてほしくて掃除したんじゃないんだからね」などと話すおしゃべり機能付きの少し変わった掃除機だ。高橋社長は「全然売れへん」と苦笑いするが、「社長がどう思おうが関係なく、こういう商品を出していくのはいいことだ」と話した。

引用元:シャープ「おもろい家電」再び 失敗も評価する新制度:朝日新聞デジタル

社長が自分に評価する能力がないのを認め、バンザイする。これは確かに一つのやり方だ。そして親愛なるソニー。

SAPについてもアイデア出しから始まり、いろんなステージがあるんですが、各ステージをクリアするときに社内の事業本部長とか、平井のような者が「あーだこーだ」と言っても若い人たちにしてみれば、「どういうことをやろうとしているのかがわからないオジサンたちに評価してもらいたくないよね」という意識があるわけじゃないですか。ですから、社内の知見も大切ですが、シリコンバレーで長く仕事をしてきた人など、いろんな外部の知見を「評価委員」のような形で入ってもらって、外部の視点から「これはいい」「これを考えなかったら、この商品はうまくいかない」といったことをどんどん指摘してもらいます。

引用元:ソニー 平井一夫 CEOグループインタビュー - ケータイ Watch

これも一つのやり方だと思う。そもそも事業の評価ができないのであればCEOである資格はない、といいたいところだがそうはいっていられない事情もある。であれば

「現役時代も、監督になってからも1割バッターでした」

という人より「過去三冠王、もしくは三冠王を育てた」という人に評価してもらう、というのは真っ当な方法だ。(書いていて気がついたが、こういう「野球に関する知識」を前提とした表現はもうすぐ死滅するのだろうな)

何もTop-DownのApple流のやり方だけが正しいわけではない。己の才能のなさを認め、それをおぎなえる人材を持ってくるのは経営者として真っ当な方法だ。