大日本娯楽提供公社

2015-08-12 06:57

あるところで、資本主義と社会主義の違いに関する極めて簡明な説明を見た。資本主義とは消費者が強い世界で、社会主義とは提供者側が強い世界だと。そうだよねえ。計画経済なんてまさに提供者の都合通り消費しなさい、ってことだ。

というわけで日本のエンターテイメント産業は社会主義的にできている。(考えてみれば最近人民公社って言葉聞かないな)TVや映画にでてくる謎のタレントという人種がほとんど視聴者のニーズではなく、「事務所」の都合で決定されるというのはまずまちがいないのだと思う。大日本娯楽提供公社は必要に応じてビッグダディとか亀田とか剛力とか韓流とか誰もが欲していない「安価なタレント」を作り上げ、視聴者に押し付ける。

先日来何度も取り上げている「進撃の巨人」もその類だ。大切なのは供給者側の平穏。そのためには消費者を食い物にすることなどなんの問題でもないらしい。食い物にするとはどういうことか?ゴミ映画に「絶賛レビュー」を書いて消費者の時間と金を無駄にすることだ。

最後に、
7月半ば、仕事上で実写進撃の絶賛レビューを依頼されお断りしました。
各所、ライターや作家が同じような言葉で絶賛しているのは、そういう依頼があるからです。
こういった慣習、もうやめにしませんか?

(中略)
今回は元々自分で観て評価したかったものを、「無償で観て絶賛レビューを」ということでお断りした次第です(yahoo映画のレビューではありません)。
仕事上の関係で頼まれたのでは、お断りしても自身の記事でこのレビューのような事はもう書けませんので、投稿致しました。

引用元:レビュー依頼の件追記しました - ユーザーレビュー - 進撃の巨人 ATTACK ON TITAN - 作品 - Yahoo!映画

上記の「告発」は大変興味深い。まず供給者側は評論家に「絶賛レビュー」をお願いする、ということ。さらに仕事で頼まれたのでは「ゴミ映画」という評価をかけないらしいのである。

これらは全て「社会主義的」発想に基づいている。消費者は供給者が「良かれと思って作った」ゴミを食え、ということらしい。この人は匿名でこうした告発をしたわけだが、おそらくこの人の告発が正しいと思われる理由もちゃんと存在している。Yahooレビューとかけはなれたこの「権威ある評論」の存在だ。

わっ、わっ、顔も体型もバラバラの〝巨人〟たちに全面降伏だ。俳優たちがどんなに派手なアクションをしても、ヌーッと現われ、足元を右往左往する人間たちをヒョイとつかんでポイ喰いする全裸の巨人たちの映像には敵わない。巨人たちの下腹部をボカしているのも奇妙なリアル感があり、巨人に挑む若者たちの話などより、ただずっと巨人たちを観ていたい気も。ピーピー泣いているベビイ巨人にもシビレた。ともあれ特撮もCG技術も世界レベル。世界遺産となった軍艦島ロケも効果的。

引用元:キネ旬 Review ~キネマ旬報映画レビュアーによる新作映画20本のレビュー|KINENOTE

さて視線を太平洋の向こう側に移そう。資本主義大国米国においても多少はこうした「生産者の都合」もあると想像する。しかしこの記事はどうだろう。

日本でも10月6日に公開予定の『ファンタスティック・フォー』が、アメリカで公開前から酷評の嵐となり、予想以上のきわどい状況に追い込まれている。複数の海外メディアが報じている。

 『VARIETY』によると、前作『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』から8年、1億ドル以上の制作費をかけて作られた新作『ファンタスティック・フォー』は、批評家からこてんぱんにやり込められているだけでなく、ジョシュ・トランク監督が、失敗の責任は20世紀フォックスにあるとほのめかす事態にさえなっているという。

引用元:『ファンタスティック・フォー』にアメリカで厳しい評価 予想興収を大幅に下回る見方も|Real Sound|リアルサウンド 映画部

「7人の侍」を見るたびに思う。かつて我が国からはこのような映画が生まれたのだ。(もちろん同時にくだらないものもたくさん生まれていたのだろうが)この凋落ぶりはどうしたことだろう。社会主義が崩壊したのは、その原理的誤りもさることながら、「現実を直視せず、フィードバックがかからなくなった」からでもある。まずは「現実を直視する」とこから始めませんか。そして消費者を食い物にしている商売をやめるところから。