唯才

2015-09-10 07:20

これは曹操がかかげた言葉である。

曹操の成した偉業は数え切れない程あるが、今の時代から見ても斬新すぎる施策が、建安15年(西暦210年)発令した「求賢令」である。この命令の真価は冒頭の4文字にある。そこには「唯才是挙」と書かれていた。唯(ただ)才のみ是(これ)を挙げよ。つまり、家柄や出自、経歴にこだわらずに、ただ才能のある者だけを推挙するように役人に命令したわけである。

当時は儒教が中国の学問の中心であり、役人は儒教家ばかりであった。孝の道を説く儒教にとって、才能さえあれば家柄なんて関係ないという考えは、あり得ないことであった。しかも、才能がある人物を見逃してしまった役人には、国家に機会ロスを与えたとして厳罰を下すと明文化されていた。

引用元:唯才是挙 - ノスタルジー社会を打倒せよ(その2) - 仙人の祈り

少し前学生さんに就職活動について話を聞いた。なんでも

「おじさんとうまくコミュニケーションをとれる人間から内定が決まっていく」

とのこと。私の考えではそうした企業は間違いなく衰退する。そしてこれは面白いことだが、そういった環境しか体験したことがない人間に採用をやらせると

「口ばかり威勢がいいバカ」

を雇う傾向があることだ。まあそれはいいや。

太平洋と2000年の時を経て同じ言葉を聞く。

経験を積めば積むほど、社員一人ひとり(自分を含む)に何か重大な問題があることに気づく。完全な人間などいない。だから、弱みがないことではなく、強みが何かで人を選ぶことが絶対的に重要だ。誰にでも弱点はある。人によって見つけられやすさに違いがあるというだけだ。弱点のない人間を雇おうとすることは、心地よさを最優先することを意味している。そうではなく、自分が必要としている強みを見つけ出し、その分野で世界レベルの人物を探すべきだ──ほかの重要度の低い領域に弱点を抱えていたとしても。

引用元:【読書メモ】「HARD THINGS」を読んで「困難との闘い方」についてまとめた - Curiosity

こうした態度は、あるいは「マネーボール」に描かれていたアスレチックスの採用にも通じるところがあるかもしれない。

アスレチックスは「試合に勝つために何が必要か」を徹底的にデータから分析し、その要素を持っている人間を安く獲得した。例えスローイングができないキャッチャーであっても獲得する。ファーストにコンバートすればよい。足が遅かろうが、おっぱいが三つあろうが採用する。出塁率などアスレチックスが重視する特性を持っていれば。

日本企業は「リクルートスーツ」(最近しって驚愕したのだが、彼らと彼女が身にまとうスーツは会社にはいったあとは使えないのだそうな)に身をつつみ、おじさん、おばさんと仲良くできる人から採用していく。それは「心地よさを最優先する」ことに他ならない。心地よさを重視することが間違っていると言っているのではない。それを最優先するのが間違っているというのだ。