ソフトウェア開発における記号接地問題

2015-12-10 07:13

この年にしてようやく自覚が芽生えたのだが、私は現実に足がついていないふわふわした言葉に対して異常な嫌悪感を抱くのだな。

だからこの年にして自分でコードを書いている。コードはそれを書いた人間の年齢や肩書きに関係なく実行される。人間の間ではそうはいかない。

プログラマ「お願いします3日ください」
SE「1日でやれ」
営業「3分間待ってやる」

引用元:【悲報】ガールフレンド、プログラマーが逃げた可能性濃厚になる:わんこーる速報!

こんな記事があったから、公式サイトを見てみた。見る人がみれば、その「お詫び文書」の羅列の裏に何があったか手に取るようにわかるだろう。サービスの開始は12/1

みなさま大変お待たせいたしました!
本日12/1、『ガールフレンド(♪)』の配信を開始いたしました☆

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト | ページ 3

しかしその直後から状況は暗転する。

メンテナンスのお知らせとなります。
 
12/1 19:44より、システムの都合上、緊急メンテナンスを実施しております。

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト | ページ 3

そしてより詳細な状況報告が。

現在対応中の不具合につきまして、状況と今後の対応をご報告いたします。
 
【発生している事象】
■アクセス過多によるシステム障害について
サービスリリース後、想定以上のアクセスに伴いシステム障害が発生いたしました。 そのため緊急メンテナンスを実施し現在対応を進めております。
 
■一部のお客様への影響について
2015年12月1日22:04-22:07の間にアプリをご利用された一部のお客様にて、プレイデータが消失する事象が発生いたしました。

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト | ページ 3

12/4になってこのようなアナウンスがでる

【サービス再開について】
現在、すべての要素を含めた最終的な検証を進めており、
Android版につきましては、今夜遅くの再開になる見込みで対応しております。

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト | ページ 2

そのあとに起こったことを思えば、この時点での「最終検証」とは営業の「3分待ってやる」と同じような言葉であったことがわかる。コードに触っているプログラマは「こんなの動くわけありません!」と言った言葉が3階層あがると「現在最終検証中」になるんだろうな。

「いつできるんだ!今日中と言ったじゃないか!」

などと怒鳴ったところで動かないコードは1mmも動かない。かくして気の毒な中間管理職は嘘を重ねる。

現在対応中の不具合についてご報告いたします。
昨日夜に確認したゲームプレイに影響を及ぼす不具合に関して、引き続き修正対応を行っております。
最終検証は本日12/05(土)午後を予定しております。

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト | ページ 2

しかし何を言おうが「困るよなんとかしてもらわないと。我が社の存亡に関わるんだよ」と泣きついたところでコードは動かない。

現在対応中の不具合についてご報告いたします。
 
現在行っている最終検証ですが、
安全を期すため時間を延長して実施しております。

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト

お詫びの「無償提供」もそろそろつきかけ、現在はこのような文字が1日ごとに表示されている。

12/8(火)の対応状況についてご報告いたします。
 
昨日に引き続き、現在検証及び修正対応を行っております。
復旧の目途が立ち次第、ご報告いたします。
 
メンテナンスが長期化しており、大変申し訳ございません。
サービス再開まで今しばらくお待ちください。

引用元:最新情報 | ガールフレンド(おんぷ)公式サイト

「最終検証」はどこに行ったのか。多分「メンテナンス」が長引いてるんじゃなくて「開発」が長引いているんだよ。

私もとっさの時に嘘をつく人間だから、実行はできないがよく知ってはいる。トラブル対処の第一原則は「現実を冷静に把握すること」怒鳴っても泣いてもいけない。

クリフォードは定員いっぱいの乗客を乗せて出航しようとする移民船の船主を例にあげた。この船主は、船が古くて状態が悪く、そもそも造りがあまりよくないことを心配していた。もう一度無事に航海できるかどうかは疑問だと真剣に考えていた。しかし、船主はなんとか疑問を打ち消し、、あと一度だけ航海したからといって、たいした危険はないと自分に思い込ませた。この船はかつて何度も嵐にさらされらたが、いつもどうにか港へ戻ってきたではないか。もう一度できない理由はあるまい。船は出航し、乗客乗員もろとっも沈没した。
「この船主についてどう考えるべきか」とクリフォードは問いかけ、自分の答えを示した。
人々の死についてこの男に罪があることは間違いない。たしかに、船主は自分の船の安全性を誠意をもって信じていた。しかし、そのような誠意はなんら罪を軽くするものではない。船主には目の前にある証拠を信じる権利がなかったからだ。その確信は忍耐強い調査によって誠実に得られたものではなく、疑念を押し殺すことによって得られたものだった。
(中略)
信じる権利があるものだけを信じることを「リスク管理」という。」(熊とワルツを プロローグより)

引用元:失敗の本質の一部