自由に自分を表現しましょう

2016-02-10 07:05

芸術っぽいカルチャー教室にいって「自由に自分を表現してみましょう」といわれても、どこかで見たオブジェもどきしか作れない。それが凡人というものだ、とはOL進化論にあったセリフ。

「自由にやってよい」と言われて「待ってました」と思う人はめったにいない。ほとんどの場合は「どうしたらいいのか」と戸惑うばかり。こういう時は成功事例に学びましょう、というわけでこんな研究があるらしい。

というわけで、「小説家になろう」というサイトがあることを知りのこのこ見に行った。そしてこの研究通りの内容なのに驚いた。ランキングはこんな感じである。

+第1位+
無職転生 - 異世界行ったら本気だす -

+第2位+
謙虚、堅実をモットーに生きております!

+第3位+
八男って、それはないでしょう! 

+第4位+
異世界迷宮で奴隷ハーレムを

+第5位+
ありふれた職業で世界最強

+第6位+
デスマーチからはじまる異世界狂想曲

+第7位+
転生したらスライムだった件

+第8位+
盾の勇者の成り上がり

+第9位+
蜘蛛ですが、なにか?

+第10位+
異世界食堂

引用元:小説家になろう

なんでも「異世界」と「転生」がキーワードなんだそうな。「売れ筋」を分析し、見事なマーケティングとか少し皮肉交じりに書いてみたくもなる。あるいは「若い人の自由な発想は素晴らしい!」とでもいうか。

私はマーケティングとかKPIというものに疎いのだが、こうした「指標だけみれば素晴らしいが完全に狂っている」状況を表す言葉が何かあるべきだ。どれだけ書籍化されました!アニメ化もされました!といわれようがなんだろうが、私がここに見るのはヲタ芸と同じ狭い範囲での気持ち悪いなれあい。しかしおそらく指標としてみれば正しいのだろう。

いや、「なろう系」に話題をしぼって矮小化する必要はない。ベトナム戦争のときの国防長官はマクナマラという男だった。彼はこう評されている。

そう、ベトナム戦争で米軍増派を繰り返し戦争の泥沼化を招いた彼の初期の決断は、数万の犠牲者を生んだかもしれない。だがそれ以前フォードにいた頃の彼の行動は、長期的により多くの人命を救った、というわけだ。

引用元:追悼マクナマラ、計算高い泣き虫男 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

マクナマラは(当時この言葉はなかったと思うが)KPIと定量分析が大好きだったらしい。そしてその国防長官を辞する時には、その観点から「ベトナム戦争は失敗だった」と反省していたのだそうな。

つまり

こういうことだ。KPIだのマーケティングだの定量評価だのは時として完全に狂った結論を正当化されるのに使われる。我々はそうした厄災につけるべき適当な名前を持っていない。そしてなぜそのような「正しいKPIによる惨劇」が起こるのかについてもまともな考察、分析がなされていない。それはwisdomとか英知とかいう言葉でごまかされている。まずは適当な言葉を見つけることが必要と思う。