CHI2016-Case Study: Organizational Change for Better UX

2016-05-18 07:05

あれこれ理由があってCHI2016という国際会議に行ってきた。いくつか興味深い点があったので、がんばって会社にレポートを書いた。予想したこととはいえ誰も読まない。もちろん私の文章力・理解力のなさ故だが。

というわけで、会社のサーバーの肥料にしておくのもなんなので、ぽちぽち書いていこうと思う。

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まず最初は二日目にあった表題のケーススタディから。このセッションの途中で発表者が「企業から来てる人。じゃあアカデミアから来てる人」と聴衆に手を上げさせた。このセッションでは圧倒的に企業から来ている人が多かった。

「型」を勝手につくりあげ、それにはまる度合いを競う、というのは何もわが国だけのお家芸ではない。CHIにも強烈な型がある。それについては別の機会で述べるが、それ故実際にものを作って世の中に問うている企業の人間としては

「だからなんなんだ。こんな特殊ケースの評価になんの意味があるんだ」

と言いたくなるような発表が多い。というわけでそうしたCHIsh(これは私の造語)なセッションに飽き飽きした企業参加者が集結したのではないかとかってに思っている。広い部屋ではなかったが、最後には立錐の余地もないほどたくさんん人が入っていた。発表者が何かいうと

「あるある」

と会場が一体となって同意するのが面白い。皆同じようなところで悩んでいるのだろう。

以下発表を聞きながらとったメモの清書。

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1)UX Strategy as a Kick-starter for Design Transformation in an Engineering Company
・ヘルシンキにあるUX関係のコンサル、デザインを提供する会社の事例発表。従業員300人ほどで、客先はnokia, amazon,etc..
・UXの改善を依頼されて客先に行ったが、それ以前の問題だらけなのに気がついた。
そのため、当初依頼されたものよりもっと長期間のプロセス改善を提案して実施。Senior vice presidentがプロジェクトのスポンサーだったのがよかった。

(発表後の質問):これはどうして可能となったか?

答え:我々はexteremely luckyだった。問題を担当した副社長が問題を理解出来るだけ頭がいい人だった。

・客先が採用していた開発プロセスはウォーターフォールで、それ自体は悪くいないのだが、そもそも社員が数千人いるのに、Designerが一人しかいなかった。
(発表後の質問):何人デザイナーを雇えばいいか?

答え:可能な限り多く、としか言いようがない。あるいは全員にdesignerの一部を学ばせるとかの方法もある。

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2)Embedding User Understanding in the Corporate Culture: UX Research and Accessibility at Yahoo

・以前はresaerchをしている人間が各部署に分散していたが、組織的には一つにまとめた。ただし実際にはグループメンバーをそれぞれの組織に埋め込む形にしている。
・Accessibilityのチームは、開発を遅らせるのではなく事業部のpartnerになると宣言した。つまりやりたいことをなんでもやれ。Accessibilityを我々が担当すると。

こうした姿勢をとったことにより開発部隊との関係が改善し、実際の改善がうまく進むようになった。

所感:思うにAccessibilityのチームは彼らの目的に専念するあまり、事業部から嫌われていたのではなかろうか。やれデザインに口出しする、やれ開発の工数が増える、と。

・ユーザを招いて、デザイナー/エンジニアと一緒に製品を使ってもらうイベントを実施している。これにより、社内の人間がユーザが実際にどのように製品を使っているかを知ることができる。

・Resarch TeamのManagerがチェックする事Timing/Belief/Actionable/Surprise
リサーチチームの成功を測る指標。.Awareness(事業部はリサーチチームがあることを知っているか).Engagement(使ったことがあるか?) Quality(サービスの品質)Impact(事業にどういう影響があったか?)

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3)UX Expeditions in Business-to-Business Heavy Industry – Lessons Learned

フィンランドのお話。B to Bのビジネスであっても、Custmer experience からuser experienceに変換する必要がある。
また重工業もPproduct to service businessに変換しようとしている。
というわけで、そうした転換を支援するためのInfogprahicsを作った、という話。
将来的にはUser ExperienceからBrand experienceに向かいたい。

所感:やっていることは悪くないのだが、プレゼンが悪すぎる。Infographicsにある言葉をだらだら説明して終わり。「結局そのInfographis作っただけか?」という質問が飛び、「いやそんなことはない。私がやったあれこれの苦労をこの時間では説明できないだけ」とか言っていたが、だったら最初からそうした面白いエピソード、苦労話をプレゼンに盛り込めばいいのに。

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4)Why Designers Might Want to Redesign Company Processes to Get to Better UX Design – A Case Study

・大切なことはGet the champion。偉い人のサポートを得る事が第一。それがないならこうした企業文化を変えるような仕事は無理。

・担当した役員は、発表者に「結婚して」といった。他の役員はそれほど熱心ではなかった。

・もともとサイトのログイン画面を修正するという話だったが、6ヶ月のプロジェクトで一枚もデザイン画をかかなかった。対象となる会社はサイロだらけだった。なぜこんな変な設計になっている?と聞いても答えが返ってこないことが多かった。そうした問題の解消に全精力を費やした。

・サイトの全体図を張り出し、誰もが通るところにおいた。そのため、とてもたくさんの人と話をすることができた。こうしたアナログな手法が効果的だった。

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二つのプレゼンで強調されていたのは「企業文化を変えるためには、トップのコミットが必要」という点。私は長いサラリーマン人生でいくつか悟りを得たがその一つに

「会社は下からの意見では絶対に変わらない」

というものがある。もちろん経営者は「企業をよくするための社員のアイディア」を「熱望」するだろうけどね。そんなことはおこらないんだよ。

というわけで何か変化をもたらそうとすれば、リソースを動かす権限をもった人間のコミットが絶対に必要になる。逆にその会社の文化がゴミのままだとすれば、その会社の経営者がゴミだということだ。