目的と手段

2016-06-29 07:24

先日こんな記事を読んだ。

日立社内での実証実験では、幸福感の目標値を社内で設定。さらに、これを実行した結果、受注額の上昇に繋がったかどうかも評価するという。「受注額の上昇については、景気動向や市場変化の状況なども勘案しながら評価することも必要になる」としている。

 同社では、今回の試行の成果を取り込んで、国内外の企業や組織に同技術を提供。働く人の幸福感の向上と、それに伴う組織の活性化を通じた企業の生産性向上を支援するという。

引用元:日立、人間の幸福感を高めるAI活用の新技術を開発 - PC Watch

かなり怪しげな手法についてはコメントを差し控える。しかしなぜこの記事に強烈な嫌悪感を抱くのだろう?そう考えてみて

「売り上げが目的。社員の幸福度はそのための手段」

というメンタリティが根底にあるからだ、と気がついた。

「幸福度の目標値を設定」という言葉のインパクトも凄い。人口知能(笑)が送ってくるアドバイスを的確に実行すると社員は幸福になり、その度合いに対して目標値が設定される。

実験をしている企業は名だたるところだ。「幸福になることはあなたの社員としての義務です」と言えるメンタリティには感服する。こういう会社に勤めたら、幸福度センサーをごまかす方法を誰かが開発し、それでもって「私たちは幸福です!」と北朝鮮のような回答をする。

幸福といえば、外せないのがザッポスである。トニーシェイはこう言っているらしい。

靴のオンライン販売で全米最大の企業ザッポスは、「ザッポスは世界に幸せを届ける会社です」と宣言し、顧客と社員に幸せを届けることを企業活動の目的としています。

引用元:「幸せを届ける会社」ザッポスのマネジメント - 水上武彦のCSV/シェアード・バリュー経営論

ザッポスでは幸福が「目的」であり、「生産性」だの「売り上げ」はそのための手段の一つ。文章にすると些細な語順の入れ替えだが、この違いは大きい。

ヒラ社員というものは(私は実際にその専門家だからわかるのだが)経営者の本音を簡単に見抜く。

経営者は、社員の前で、本来の自分ではない人間を演じるスキルは必要だと思いますか? それとも、自分に正直でいることが大切なのでしょうか。

BH:自分を取り繕うことはとても危険です。そこから生じる矛盾をきっと見抜かれます。驚くほど簡単に見透かされてしまうんです。1対1の会話ですら、そうです。全社員の前で自分を偽れば、誰かがそれを見抜いて、それをほかの誰かに話しやがては会社中に伝わってしまう。

引用元:会社にとって利益は「空気」。それはゴールじゃない──ベン・ホロウィッツ|WIRED.jp

会社との関係を円滑にするためには会社が何を欲しているか(言葉で何を言っているかではなく)を見抜きそれに答えることにある。会社が「売り上げの数値」を欲していれば嘘をついてもそれに答える人間が評価される。これは東芝だが、この「幸福センサー」を導入する企業でもそうしたことが大々的に行われるのだろう。会社は従業員を幸福にしたいのではない。「従業員が幸福だ、というデータ」が欲しいのだと。