感動をありがとう!

2017-08-23 07:28

多分そういう文脈でこのニュースを語る人間もいたのではないかな。

 仙台育英の逆転サヨナラ劇が、地元楽天の試合を止めた。

 仙台育英が9回裏に逆転サヨナラ勝ちを収めた瞬間、Koboパーク宮城のスタンド全体がざわつき、石山球審がタイムを宣告。場内が静まり返るまでの約10秒間、試合を止めた。

引用元:仙台育英の逆転サヨナラ影響? 楽天の試合止まる - 野球 : 日刊スポーツ

でもってその試合でどうやって劇的なサヨナラ勝ちがなされたか。

7回に足を蹴ってしまった後、9回二死から大阪桐蔭の一塁手の足がベースを踏んでいなかったことで試合終了とならず、直後に仙台育英がサヨナラ勝ちを決めた。

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : 大炎上中のネットに仙台育英の選手が反論 「足蹴りくらい高校野球ではありえること」 - ライブドアブログ

おそらく昔なら、NHKがビデオを封印すればそれで「ちょっと走塁の際によろけたようにも見えたが」で済んだ話だったと思う。しかし今は繰り返し繰り返し誰もがみられる形で再生される。誰がみてもこれは「勝利を得るための懸命なプレー」である。

さすがにこの本人は発言していないようだが、こうした弁護の声がある。

仙台育英のムードメーカーで佐藤世那投手(現オリックス)の弟・佐藤令央(3年)は「いろいろ騒ぎになってるらしいですけど、渡部も一生懸命にプレーした上でああなったわけで、別にわざとやったわけではないんで。いろいろ書きたがる人はいるかもしれないけど、高校野球ではこういうことはあり得ることなので渡部を責めることはおかしい。」という。

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : 大炎上中のネットに仙台育英の選手が反論 「足蹴りくらい高校野球ではありえること」 - ライブドアブログ

これはとても正直な意見だ。「あれくらいのプレーは当たり前だ」。少年野球兵にとっては試合とは殺し合いなのだ。

全国大会にでるようなスポーツ選手には相当の割合でロクでもない人間が含まれていることは、誰でも知っている。だから「あれくらいで非難されるのはおかしい」ということ。それはもっともなのだが、それを美談にしたて「感動をありがとう」とか寝言をいうのは詐欺ではなかろうか。かつて日本軍の戦争を美化し、聖戦だの軍神、とか言っていた。その実態がどのようなものだったかは今の我々はよく知っている。戦争が避けられないものならば、せめて現実を正直に報道すべき。しかしこの高校野球という戦場において我々はまた太平洋戦争との時と同じ間違いを繰り返している。

前にも書いたが、この悪習を断つ唯一の方法は、メディアが異常な取り上げ方をやめることにある。スポーツ新聞は部数を稼がなければならないからしかたがないとして、NHKは遠い昔、地元だけで試合を放映していた頃に戻すべき。あるいは国体と同じ扱いにすべきだ。それで多くの少年野球兵は仕事を失い、あるものは勉学にあるものは勤労に勤しみ、そしてあるものは野球を続けることとなる。それでいいではないか。