公家の商売

2018-01-31 07:28

願わくば今後の人生でNTTグループを客先に持つことがありませんように。しかし「これだけは避けたい」と思っているとそれが起こるのが人生だからなあ。

というわけで、親愛なるdocomo様である。2000年のITバブルの頃、米国からきたベンチャーが要求することはただ一つ

「docomoに会わせろ」

だった。そのころお公家様たちは平安時代後期のような気分だったのではなかろうか。

今でも、「出入りの業者」としてdocomo様に行けば、ぺこぺこする。しかしこんなニュースを聞けば、頭を下げながら顔はニヤついているかもしれない。

ドコモはらでぃっしゅぼーや69億で買って10億で売るんか。おまけにオイシックスの増資も引き受けて6.3億も出すのか。キャベツに換算したら何個分だ。

引用元:たにやんさんのツイート

こと投資事業に関しては高貴なdocomo様は下賎なSoftbankに手も足もでない。らでぃっしゅぼーやも買収当初から現場は「は?」という状況だったようだ。

さてさて、僕の遠い上司でもある(笑)加藤社長はどうでしょうか?

なんと先日、有機野菜の通販サービスであるらでぃっしゅぼーやや、タワーレコードを買収しました。

それに加えて、docomo online shopなどの運営にチカラを入れはじめ、

「Amazon、楽天を目指す」と、通販のサービスにチカラを入れている模様です。

現に、僕が勤務しているドコモショップでもらでぃっしゅぼーやの野菜を配ったり、

「今後はらでぃっしゅぼーやの契約もとっていただきます。」

と張り紙がしてあったり、ショップスタッフはぽかーんです。

引用元:docomo・au・ソフトバンク 3社の未来を本気で予想。 | ふじさわブログ

docomoで働く超優秀なエリートがバカなことをやるのは、側からみてれば実に滑稽である。docomoにお布施を払っている人からみれば「俺たちの税金をこんなことに使いやがって」だろうが。

本業が穴だらけな時に、全くやったことがない分野にやたらと手を広げる、というのはどういうメンタリティが可能にするのだろうか。現実を直視しないからお公家様であり、であれば

「マロは携帯事業はもう飽きた。お前らで適当にやっておけばよかろう」

とでも思うのだろうか。

ちなみに本業以外は何もできない、と言う点では惑星Toyotaも同列である。前にも書いたが私はAmazon のAWSというのは驚愕するような現実だと思っている。ToyotaとかDocomoの偉い人は、自分たち(彼らは個人ではない)がジェフ・ベゾスの足元にもおよばないことをどう考えるだろうね。


コインチェクの顛末

2018-01-30 07:47

家でパソコンを使っていると、息子が必ず覗き込む。うちではPC利用は1日10分に制限されているので、そうやって少ないチャンスを生かしているのだ。でもって昨日

「お父さん、コインチェックのニュースよくみてるけど、何か関係あるの?」

と心配そうに言われた。私が損をしたとでも思っているのだろう。

そうした息子の心配を知りながらもチェックしてしまうほどコインチェックの話というのは興味深い。昨日?と思ったのはこのニュース。

仮想通貨取引所大手コインチェックから約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した問題で、警視庁は29日、同社の社員から事情を聴いた。

引用元:コインチェック社員から聴取=仮想通貨流出、捜査本格化―警視庁 (時事通信) - Yahoo!ニュース

あれ?事情を聴くって、被害者側に使う表現だったっけ?まあ無茶苦茶やって盗まれたんだから、、とか思っていた。ところがこの主張がでてくる。

つまり、コインチェック社は:

仕入れていないNEM/XEMを、ユーザーに対して販売していた

疑いが極めて強くなります。

引用元:コインチェック社「持ってないコインを消費者に売る」商法と顛末(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

実はそもそもコインチェック社自体が詐欺のような存在だったのではないか、という主張だ。山本氏がここまで具体的に述べているのは彼なりに勝算があってのことだろう。となると今後何が明らかになるか気になりませんか?(血走った目で主張)

【金融庁会見:仮想通貨交換業者の行政対応】実況(27)
Q.コインチェック社の現状について
A.報告では返済できる原資があると受けているが、まだ具体的な所は今後精査。

引用元:bitpress(ビットプレス)さんのツイート

現に、「自己資金で返します!」と断言していた資金もどうやら金融庁は確認していないらしい。もちろん「具体的なところは今後精査」といっているのであって「ない」とは言っていないのだが。

難しい話は学ぶとして、私の中で「クロ確定」なのはこの事実。

※一部誤表記がございましたため、2018年1月29日 20:00頃表記の修正を行いました。

引用元:当社に対する金融庁の業務改善命令について | コインチェック株式会社

金融庁からの業務改善命令を意図的に改ざんして自社サイトに載せていたのだ。「誤表記」の内容は

顧客への「適切な」対応、「責任の所在の明確化」が抜けてる。特に「責任の所在の明確化」は大事でしょう。ダメだこりゃ。

引用元:ひとり配当金生活-さいもんさんのツイート

お前は宿題を忘れた小学生か。

しかしなんで日本のインターネット界隈はこういうチンピラしかいないのか。

「仮想通貨取引所はすでに1.5強。うちがトップで、ビットフライヤー(東京・港)さんがうちの半分くらい」と大塚氏は自信たっぷりに語った。「口座数は非開示だが、3年かかるところを1年でやってしまった印象」と続ける

引用元:コインチェック暗転前日、冗舌だった経営幹部の甘さ  :日本経済新聞

金融にはあれやれこれやの法律上の制限がかかっている。それはとても面倒な物だろうが、歴史上でなんども繰り返されてきた「詐欺との戦い」で学んだ結果でもあるらしい。

それが及ばないと何が起こるのか。最近全く聞かないVALUとか仮想通貨とかそうした歴史の勉強にはとても興味深いものだが。


バブルをささえる人たち

2018-01-29 07:07

バブルには典型的なパターンがあり、「これまでの常識は通用しない!」と叫ぶ人が出てくることもその一つだ。実際先日おこったCoincheckからの盗難事件は、「これまでの常識が通用しない!」に満ち溢れていた。

盗難のあと、かなりの時間を経て全ての出金がとまったのだが、それでもCoincheckのサイトにはなんの変化もなかった。探しにくい「ブログ」にアナウンスがあるだけ。また面白いことに、Coincheckのサイトのトップページからはプレスリリースへのリンクがない。一旦会社情報に飛んでからしかプレスリリースを見ることができない。こんな変なサイトは初めて見た。

彼らがどうやって補償金を確保したのかは謎に包まれている。一番素直な仮説は、彼らは無茶苦茶に儲けており、銀行にうなるほど預金がある、というものだ。仮にそれが正しいとすれば、そんなデタラメ放題な会社が無茶苦茶な利益を上げていることになる。

こういう「非常識」な現実はこういう人間によって支えられているのだと思う。

今回の件でコインチェックの知名度が一気に向上し、セキュリティーなどの信頼が回復すれば「災い転じて福となす」になる可能性もあります。

引用元:コインチェックの463億円返金補償対応で感じた「2つのこと」

「信頼が回復する」あの記者会見をみてそう思えるというのは、よく言えば楽観的。普通に考えれば信じられないほど愚かである。しかし彼は(私より一つ年下のようだが)おそらく私の数十倍も資産を持っている。

2016年の日本国内の仮想通貨取引所におけるビットコインの取引高は、約2兆800億円だったが、2017年には8兆円に達すると予測されている。既にビットコイン取引高では日本が世界一といわれる。

 仮想通貨に関して、日本は法整備の面でも世界の先陣を走っているのは間違いない。

引用元:「仮想通貨先進国」日本はビットコイン市場の覇権を握れるか│NEWSポストセブン

その意味も理解できないうちに「最先端を走る」ことはまあ地獄への片道切符だよね。ひょっとして仮想通貨というのは、すでに乏しくなっている日本国内の富をうまく吸い上げるための仕組みなのではなかろうか。


書き続けること

2018-01-26 07:25

というわけで、ブログという形式で最初に書いたのはおそらく2005年の末。そこから数えてかれこれ12年もブログを書いていることになる。

先日こんな文章を読んだ。

考えてもみろ、アラサー、アラフォーにもなる大の大人が、ブログを書き続けているってことを。そこには意図があり、欲求があり、目的があり、衝動がある。そういったもの抜きではブログなんて書きつづけられるわけがない。マトモなキャリアを真っ直ぐに突き進んでいく人は、決してブログなんて書かない。私も含め、数年以上にわたって頻繁にブログを書き続ける人間は、どこかおかしいし、どこか憑りつかれている。マトモじゃあない。ほかにすることはないのですか。だけど書かずにはいられないからブログが生き残っていく。それは、めでたいことかもしれないが、おめでたいことかもしれないのだ。

引用元:大の大人がブログを書き続けているんだぞ!わかっているのか! - シロクマの屑籠

アラサーねえ。。私はあと数年で「アラカン」である。まあそんなことはどうでもいい「マトモなキャリアを真っ直ぐに突き進んでいく人は、決してブログなんて書かない」というのは確かだな。しかしこの文章を読んでも何かの繰り返しがあることはわかるが、それ以上に得るものはない。

ではこの文章はどうだろう。

「《私のいうことを聴いて下さい》というのは、《私に触れて下さい、私が存在することを知って下さい》ということだ。」
 

開高健と同じこと言ってますね。批評は、かまってちゃんの叫びなのです。

引用元:セッション【連載】田中泰延のエンタメ新党 | 田中泰延 | 街角のクリエイティブ

こちらはもう少しわかりやすい。私はかまってちゃんなのだ。あるいは引用先の文章のもう少し下にでてくる「不安を紛らわすため」なのかもしれん。もう少し綺麗な表向きの理由は、このブログのフッターに書いてあるMake some noiseという言葉。

「主張しよう」19歳歌手 クリスタル・マイヤーズより。「どんなノイズ(主張)?」との問いに対して:

自分たちがだれであるか。どんな人間になりたいのか。そういうこと。なりたい人間になるためには、他人を巻き込み、人に興味を持ってもらわないと:クリスタル・マイヤーズ



この言葉の後半は、おそらく彼女が考えているよりずっと広い範囲で有用ではないでしょうか。

「自分たちがだれであるか。どんな人間になりたいのか。」というのが、わかっていないときこそ、「他人を巻き込み」自分の外側にヒントを見いだすことで道が開けることが多いと思います。

引用元:ハーバード大学医学部留学・独立日記 第二部 三重大学医学部編 ... メイク・サム・ノイズ

プレ-アラカンの男が「自分がどんな人間になりたいのか」というのがわかっていないのである。まったくもって最近の50代は嘆かわしい。日本終わったな。

結婚してからというものの、言葉を発することの虚しさに目覚め最近の私は会社で「滅多にしゃべらない人間」と思われているらしい。ところが人間ができていないので、時々失言をする。現実世界で失言をしないように、このブログに書いている。というのが私の場合もっとも正しい「ブログを続けている理由」なのかもしれない。最後にもう一つ「ブログを続けている理由」を引用しておく。

数十年経ち少年は大人になって、ふとその男のことを思い出す。そして何かを書くと言うことは森の奧の底なし沼に死んだ猫を何度も投げ入れることとよく似ているということに思いあたる。

引用元:森の奧の沼



そもそも論

2018-01-25 07:16

今日はネタがないのでぼんやりした話を。

Deep Learningの世界では「なぜそれでうまくいくのか」というのは禁断の質問になっているのだそうな。(少し前に聞いた話だから今は違うかもしれないが)とにかくうまくいくからうまくいく。

しかし

ぼーっとした瞬間、なぜそれでいいのか、という疑問が頭をもたげる。

この問題に対して、20歳の若い物理学者であるHenry W. Lin氏が次のような仮説を立てている(図1)1)。世の中にみられる(カオスになっていない実用上興味のある)問題は次のような特徴を持っており、ディープラーニングはそうした問題に特化しているので成功しているのではないかというものである。

引用元:《日経Robo》なぜディープラーニングがうまく学習できるのか - 日経テクノロジーオンライン

こうした「根本的な問い」をする人は本当に少ない。「シンギュラリティで社会がかわる!」と騒いでいるお祭り付きな人たち(これはバカ、ペテン師、疑似科学者のなりそこない、の婉曲な表現である)とつきあうよりこうした問いに対する考察を聞きたいものだ。

もっと遡れば

物理で数学を使うことに時々疑問を感じる人もいるだろう。数学というのは物理現象とは全く独立に存在していてもいいはずのものだ。なのになぜ物理現象を数学で表現することができるのか。10gの重りと10gの重りを皿に載せたら、30gになってもよかったはずなのだ。なのになぜそうなっていないのか。

こういうことを言っても、ブログのネタにしかならないから誰も問わんのだろうか。

一方で、人や動物が非常に少ない経験から学習できることは、まだ見つかっていない帰納的バイアスがあることを示唆している。人や動物はこうした帰納的バイアスを進化の過程で脳の構造として獲得してきたが、そこに工学的に参考になる部分はまだ多いにあると考えられる。

引用元:《日経Robo》なぜディープラーニングがうまく学習できるのか - 日経テクノロジーオンライン

シンギュラリティ馬鹿にこういう疑問を振っても「シンギュラリティだ!」としか言わない。だからそういうバカの集団の中では無口になる。

しかしここは個人ブログだから好きなことを書こう。このバイアスはどういうものなのだろうか。何かの形で回路化されているのだろうか。そうではないのだろうか。

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今考える、考えを深めるといった分野をサポートするシステムがつくれないかと考えている。そしてそうした分野の研究が少ないことに驚いている。(ブレスト支援は山ほどあるけど、ブレストは考えることではないから)つまりほとんどその方法がわからないのだ。

このようにDecision Supportの分野では機械的にモデル化できる部分を除き、IT技術は驚くほど浸透していない。実際現実世界のDecisionがどのようになされるかは、例えば会社員として生きていれば毎日のように実例を見ているはず。なのになぜ「シンギュラリティだあ!」とはしゃげるのかな。そうした思考回路の方が私にはよっぽど謎だ。


エラい人の心持ち

2018-01-24 07:21

私の今の肩書きは「上席研究員」なのだそうな。つまるところはヒラである。雇ってくれる会社がなくなり自分で会社作って代表取締役になる可能性を除いては、まあ一生ヒラなのだと思う。

でもって

「エラい人」の心持ちというのは想像するしかないわけだ。豊臣秀吉は足軽から天下人になった後、自分の出自を改ざんしようとあれこれ試みたらしい。金も権力も握ってるんだから、そんなことどうでもいいじゃないかと思うがどうも偉くなってもそういう気分にはならないものらしい。というか尚更「どうでもいいことが気になる」ようだ。人間というのは面白いねえ。

もちろん現実世界で接点がある人にはそんな「エラい人」は一人もいないが、世の中にはちゃんと存在しているようだ。

「まさか天下のソフトバンクを率いる天才起業家の孫正義さんが、子飼いの茶坊主を使って『pepperの父』とかいう『あれオレ詐欺』をぶちかますとは思ってませんでした。そういえばサウジアラビアの10兆円ファンドと福島への義援金100億円はまだでしょうか、お待ちしております」

こうですか?

引用元:山本一郎(やまもといちろう@告知用)さんのツイート:

言っていることは幼稚園児の「僕なんでも知ってるよ」と同じレベルだからにやにやしていればいいのだが、その「俺が作った」という主張する様の滑稽さ、それが滑稽であることを認識できない愚かさ。偉そうなことを言い、一代で巨大企業を築き上げても人間というのは所詮バカなのだなあと再認識する。

でもって万年ヒラとしては、権力者の狂った現実認識と現実の間で苦悩する「最前線の兵士」に思いをはせる。

ソフトバンクの広報って、広報のエキスパートともいえそうな百戦錬磨ぞろいの印象があって、当然こんなお願いを出すことが不自然なことは百も承知なはずなので、これは、なんか広報的に止められない何らかの力が働いてこうなったんだろうなぁとか、色々と知りたくなる裏事情がありそう。

引用元:Junya ISHINO/石野純也さんのツイート

もちろんプロの広報なら本当のことはおくびにも出さないと思うが、その心中は察するに余りある。歴史が教えるところによれば、こうした「権力者の狂気」は年齢が上がるにつれひどくなるのだが。



Macを職場に持ち込むための長い戦い

2018-01-23 07:15

今から30年前、私は会社にMacintoshを買わせようとありとあらゆる努力をしていた。それについて書き出すと長くなるので、本家を読んでもらうとして、そこを辞め次の会社とも呼びたくないような組織で働いた後はほぼ一貫してMacを仕事で使っている。今働いている会社も入社した時はWindows一本やりだったけど数年前に状況が変わった。

変化しないことが日本の大企業の特質である。だからいまだに「PCはWIndows!」と言い張っている会社もたくさんあるのだろ思う。私のような狂信的Apple原理主義者がいるからには、問答無用でApple製品を嫌う人がたくさんいることも認識している。しかし今やそういう人は何を社員に持たせているのだろう。選択肢は限られており

・そもそも社用で携帯電話の使用を禁じる

・もちろん信頼と実績のWindows Phone..あれ?

・Android. Get Wild.

・ガラケー。あれ?ガラケーまだあったっけ?

これくらいしかない。そして「ユーザの声」は決まっている。

mobile share

引用元:Jamf 2016年調査

この調査は、世界各地の大中小企業の役員、マネージャー、そしてITプロフェッショナル480名の回答をまとめたものだ

引用元:エンタープライズの世界とApple | TechCrunch Japan

30年たてば同じ会社名でも別の会社になる(場合もある)そう理屈ではわかっていても、30年前会社にMacintoshを買わせるために悪戦苦闘した記憶が蘇る。時代は変わった。


詭弁を学ぼう

2018-01-22 07:26

白を黒といいくるめる。あるいは白を「これは食用に適さない」と話をそらす。詭弁を弄することはとても重要で必要な技能である。

というわけでケーススタディをしよう。今日のお題は「野球離れは巨人一局離れ」

オヤジ系週刊誌やタブロイド紙といった旧メディアで度々語られる“プロ野球離れ”のイメージというのは、“世間の巨人離れ”と同義語だと思う。

引用元:「プロ野球離れ」はどこまで本当か? 伝統のスターシステムの終焉 | VICTORY

つまり終焉を迎えたのは「野球は巨人」であり、野球そのものではない。プロ野球中継が減ったって?それは偏ったものの見方だ。

プロ野球離れと言っても、BSやCS放送、スマホやタブレットの動画配信とそれぞれのライフスタイルに合った方法で観戦できる現在において、テレビ視聴率を軸に野球人気を論じるのは無理がある気がする

引用元:「プロ野球離れ」はどこまで本当か? 伝統のスターシステムの終焉 | VICTORY

それらの「多種多様な視聴方法」を足し合わせても、プロ野球を映像として楽しむ人が激減している。しかしそこは定量的に語らず「多種多様な楽しみ方がある」で誤魔化す。

球場観戦に出掛けるファンは近年増えており、NPB史上で今が最も観客数が多いと言える状況だ。各本拠地の環境も家族連れや女性も安心して楽しめるボールパーク化が進んでいる。

引用元:「プロ野球離れ」はどこまで本当か? 伝統のスターシステムの終焉 | VICTORY

観客動員の数が増えていることは定量的にデータを示す(私はその数も信用してないが)しかし「ボールパーク化」によって家族づれ、女性が増えているという点については概論でしか語らない。

プロ野球離れと言われる一方で、過去最多の観客を集める球場の風景。今後の課題は、いかに“コアなファン”と“ライトユーザー”の間の距離を縮めていくかだと思う。それを実現させた時が、昭和でも平成でもない、新時代のプロ野球の始まりだろう。

引用元:「プロ野球離れ」はどこまで本当か? 伝統のスターシステムの終焉 | VICTORY

でもって最後は「ちょっとの前向きな課題」で締める。こうした技能はとても有益だが、長期的に見ると「問題から目と話をそらしている」だけでなんの解決にもなっていない。先日引用した建設的な批判と比べ、この「幻想に閉じこもる」力は日本人のお家芸でもある。(かといって日本人だけが幻想に閉じこもるわけではない)

「ところが人間は幻想を作り出すことができるから困るの。それを失われた現実の変わりとして作り出してしまうの。現実の変化は、たいていはゆっくりしたものよ ね。老化もそうね。ところが、もし私たちがその変化を隠すために幻想をこしらえはじめると、じき私たちは気づいてみればその幻想を維持するために全エネルギーを費やしていた、ということになるの。(中略)

で危機をいっそう悪化させるのは、われわれが現状維持のために注ぎ込むエネルギーだ、というわけね。

そのとおり、それを私の「最後の悟り」と呼ぶといいかもしれないわね。

変化を食い止めたり和らげたりしようとして幻想を作り出すと、変化はますます起こりやすく、また受け入れにくくなるものだ。」

引用元:G.M.ワインバーグ著:コンサルタントの秘密P164 via 失敗の本質の一部

今の子供は野球のルールを知らない。結果として誰も野球を見ない。このような状況で「野球防衛軍」の最後の心のよりどころは東京オリンピックではなかろうか。

そもそも日本と韓国以外真面目に選手を派遣する国があるかどうかもわからない状態だが、仮にそこで「野球」が「ベースボール」に完敗した場合大本営は何を発表してくれるのだろう。今から楽しみだ。


孤島で続く日本軍の抵抗

2018-01-19 07:47

先日「無駄な抵抗はやめなさい」ということで、北米ToyotaがとうとうCarplayをサポートするという記事を引用した。

さて、北米では決着がつきつつある戦いだが、太平洋の西端にある孤島ではまだ日本軍の抵抗が続いているらしい。

iPhoneとの相性がいい(というかiPhoneをそのまま使うだけなので当然なのだが)CarPlayだが、海外ではFerrari FFをはじめとして、高級車の純正ナビがCarPlayに対応しているケースが出ているものの、日本国内ではSPH−DA700のみ。各社の純正ナビは対応するそぶりすら見せない。

引用元:Apple CarPlayを徹底レビュー 、今後は普及していくのか? | CL

それどころか、孤島では日本軍がまだ優勢を保っているらしい。これは実に馬鹿げたことだ。iPhoneのシェアは日本のほうがはるかに高いのである。これほど自分たちの都合を優先し、消費者を舐めきった態度はないと思う。

かくしてこの記事の終わりにはこのような支離滅裂の言葉が並ぶ。

日本の自動車/カーナビメーカーも、シェアが限られるiPhone単体であれば無視を決め込むことができても(といっても日本市場ではiPhoneが半数近くを占めているのだが)、Androidまで対応する頃になれば対応を真剣に検討しなければならないはずだ。

引用元:Apple CarPlayを徹底レビュー 、今後は普及していくのか? | CL

50%を「シェアが限られるから無視できる」数値だと主張しないと日本の自動車メーカーの行動を擁護できない。すごい。日本の消費者は馬鹿だからディーラーで「やっぱり純正ナビじゃないと」とか言われて大人しく馬鹿高い金をゴミのような端末に払う、ということなのだろうか。かくしてカーナビメーカーおよびそこで奴隷のように働くエンジニアたちの苦闘には終わりが見えない。

我が家では、奥様が車を買い換えろと主張している。多分彼女は私に内緒で宝くじを購入しておりそれが当たったのだと思う。というわけであれこれ見ているが、カーナビなんぞにビタ1文払う気は無い。っていうかDisplay Audioでいいんだけど。それが購入条件とかいうとまた怒られるんだろうな。


燃料電池車が来る!

2018-01-18 07:10

3年前だったらもう少し現実味をもって読めたのかもしれないけど。

2030年度の燃料電池車(FCV)市場は、2016年度比で170.6倍の2兆6270億円になる——。これは調査会社の富士経済が2017年12月12日に発表した市場予測だ(図1)。日本や北米を中心にFCVの市場は拡大。2020年以降に各メーカーの量産体制が整い、市場は大きく伸びるとみる。

引用元:燃料電池車、2030年には市場が170倍に拡大 - 日経テクノロジーオンライン

この記事に限らず、まだポツポツと「電気自動車はダメだ!未来は燃料電池車だ!」という記事を見かける。記事を書いた人の名前で検索してみると、まあいろいろ事情があるようだ。

実はどうしてもトラックをゼロエミッションにしたいのならば、水素燃料電池の方がはるかに向いている。長距離トラックは基本的にターミナルからターミナルへの運用である。そこに水素ステーションがあれば、インフラの効率としても、トラックの効率としても極めて都合が良い。

引用元:中国製EVに日本市場は席巻されるのか? (2/5) - ITmedia ビジネスオンライン

未来のことは誰にもわからない。とはいえ燃料電池車を普及させようとすれば、膨大な「燃料供給インフラ」を整備する必要がある。iPhoneがあれだけ普及したのだって、通信網というインフラ自体はガラケーのものを使えたからで、仮にiPhoneがどれほど素晴らしい製品であっても

「通信網、再構築する必要があります。えへ」

だったら普及しなかっただろう。(実は通信会社の人はそれに等しい苦しみを味わったのかもしれないが、私は素人なので考えないことにする)

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同じように自然エネルギーについても、従来「とにかくこれがあれば解決!」だったのが、最近ようやく「バッテリーないとダメ」という記事を読むようになってきた。

配電網への蓄電池導入のメリットは大きい。配電網で勝手気ままに発電して、電圧や周波数を掻き乱すルーフトップの太陽光発電の影響は、配電網内でしか対策できないためだ。

引用元:離陸寸前、米国の住宅向け蓄電池 (4ページ目):日経ビジネスオンライン

自然エネルギーは不安定という宿命を持っている。もちろん「晴れている間だけ電気使えればいい!」と責任をもって言ってくれればいいのだが、一部の人を除いてそうは言わない。つまるところ、石炭でも石油でもぼんぼん燃やして自然エネルギーの穴埋めをする。それがいやならバッテリーもって自分で自分の面倒を見てもらうしかない。

でもってバッテリーとなるとパナソニックの名前をちらほら見かけるのが「最近負け続きの国」に国籍をもつ人間としてはうれしい。テスラのパートーナーもパナソニックだし。これは旧三洋電機の技術の流れだったりするだろうか、とかそういう内幕記事はそのうち誰かが書くだろう。

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東日本大震災からそろそろ7年。まともな議論ができるようになるまでにはとても時間がかかる。


人口比率で考えよう

2018-01-17 07:53

イスラエルは埼玉県と同じくらいの人口なのに新規産業の創出に関しては埼玉どころの話ではないとか、なぜ日本がサッカーでクロアチアに歯が立たないかとか今まで書いてきた。昨日こんな記事を読んだ。

ドミニカ共和国は、日本の人口の12分の1ですが、メジャーリーガーは140人くらい出ている。日本は昨年10人にも満たなかった。これはどういうことなんでしょうか? どんな分野によらず世界で通用する人材が必要とされている世の中で、日本の野球界がこれだけ遅れているのは事実です。

引用元:DeNA筒香「球界の変わらない体質」にモノ申す | 日本野球の今そこにある危機 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

この人の疑問はもっともだ。この事実をもって

「だからメジャーリーグのBaseballはダメだ。日本は独自の野球を築き上げたのだ!」

と叫ぶことができたのが、バブルの余韻があった2000年代初頭である。

日本の野球に関して言えば、彼が言っていることは正しいが正しくない。日本の野球はBaseballと似て非なるもの。しかしそれで収益をあげるシステムができあがっているから問題ない。

高校野球の目的は、世界に通用する立派な選手を作ることではなく、学校の宣伝である。プロ野球の目的も企業の宣伝。何人メジャーリーグで活躍するとかどうでもいい。そもそも勝利も大して目的ではない。

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この記事に関するSNSの反応をみると概ね好評のようだ。しかしこの「野球」に関する問題は日本の他の部分に当てはまらないか、と考えてみるのは有益だと思う。

新入社員にはお茶汲みをさせ、議事録をひたすらつくらせる。誤字脱字を徹底的に指導する。そうやてって「10年は泥のように働け」というマインドは新入部員に球拾いしかさせない部活動のマインドと共通する。冒頭の疑問に戻ろう。どうしてイスラエルはあのように革新的企業をたくさん生み出すことができるのか?なぜその10倍以上の人口を持つ我が国からモービルアイがでてこないのか?SNSで

「いいことをいう!日本の野球は問題だ」

と他人事のようにつぶやいている人間の大半はそれが自分の問題であることに気がついていない。


無駄な抵抗はやめて

2018-01-16 07:22

最近人質をとった篭城事件というのが少ないせいか「無駄な抵抗はやめて、早くでてくるんだ」という警察の呼びかけ(多分ドラマの中でしかみたことがないが)を聞かないような気がする。

いずれにせよこれは「無駄な抵抗」の終焉を意味するものだ。

Toyota officially announced that CarPlay will appear in its upcoming 2019 Avalon sedans.

引用元:Starting with 2019 Avalon, Toyota finally bringing CarPlay to select vehicles | 9to5Mac

トヨタ様が、自前のenTune3.0の一部としてとうとうCarPlayをサポートすることにしたんだそうな。

Toyota has resisted offering Apple’s CarPlay and Google’s Android Auto in its vehicles, citing concern that doing so would diminish safety and security.

引用元:Ford, Toyota, and more form alliance to prevent Apple and Google from taking over the in-car experience | 9to5Mac

この無駄な抵抗は2011年から続いていた。AppleとかGoogleとかいう惑星トヨタ以外のシステムを入れると、安全性とセキュリティが損なわれる!と叫びFordとコンソーシアムを組むとか、まあ無駄な抵抗を7年に渡って続けてきたわけだ。

私がenTuneの開発に(末端で)従事していたのは2011年。その時ですら、画面のデザインは別として、enTune上で作るアプリとiPhoneアプリの機能、操作性の差は歴然としていた。裏のアプリを作る生産性に至っては冗談のような差がついていた。ナイフ一本使って無人島で作る家と、工場内で組み立てる住宅くらいの差があった。

そうした現実はトヨタ様にとって無縁なものだった。なぜなら彼らはコードを1行もかかないから。デンソーのかわいそうな担当者に嫌味を言い続ければ彼らの「エンジニアとしての仕事」は満足に行われたことになるのだ。

トヨタには頭のいい人がたくさんいる(母数が大きいから、%が小さくてもその数は膨大だ)そろそろ現実に誰かが気がついたということかな。あるいはToyota Motor Salesの人が言い出したことか?

引用元の記事の筆者は、今トヨタの車に乗っているがCarPlayがないから次の車はトヨタをやめようかと考えていたとのこと。何を言っているんだ!Toyota AmericaにはenTuneというすばらしいシステムが!といくらToyota Motor Corporationのアレな人が叫ぼうが、実際に車を販売し、現実と直面している人たちには聞いてもらえない、というシナリオの方が野次馬としては面白い。もちろん今はToyotaの内幕について知る立場にはないが。



古いブログのデザイン変更

2018-01-15 08:49

Movable Typeのデザインから今のブログデザインに変更したのは2014年の1月である。それ以前のブログは「これはこれで歴史的意味があるよね」と古いままにしていたのだが、正月に行なった「https化強制」とかにともない表示ががたがたになっている。というわけで、文章部分だけ取り出し、今のデザインに当てはめた。

本当のことを言えば、画像のリンクがきれていたりあれこれあるのだが、結果を見よう。これが過去のデザイン

古いデザイン

でもってこれが今のデザインである。

新しいデザイン

自分で作っておいてなんだが、その読みやすさの差に愕然とする。古いデザインも自分なりに余分な要素を取り去ったはずなのだが、今読み返してみると

「ごちゃごちゃしたなかから、なんとか文章を拾い出そう」

という行為をしているように思える。

今のデザインでは、いくらなんでも削りすぎだろうとちょっと自分でも思っている。しかし仮にナビゲーション用のあれこれを付け足すとしても、この読みやすさの差異は常に自分の頭においておきたい。

というか、いまだにサイドバーに情報てんこもりに乗せ「さあこれを読め、こういう風に飛ぶこともできるんだ便利だろう」とやっているのは、邦画のポスターのごちゃごちゃさにあい通じるところがあるように思う。

君の名は
引用元:togetter

「日本人にはこういうのがいいんだよ」と強硬に主張する人たちがいるのは知っている。しかし私はこれはその精神においてBad UIだと断言する。つまり

「読み手の読みやすさ」

ではなく

「作り手の”あれも読め、これも読め”という都合」

を優先しているからだ。そう思ってBad UIで有名な先生の研究室サイトを見てみると...まあここらへんは見解の相違というやつだろう。


サイトの表示を早くするためにやったこと

2018-01-12 07:46

去年の11月、このサイトの表示スピードはこんな感じだった。

詩子

でもって今朝はこうである。

speed

まだ改善の余地はたくさん残っているが、前進には違いない。じゃあ何をしたかということなのだが。

1)サイトの余分なものをばっさばっさと切った。jQueryももう使わない。SNSボタンも表示も簡単なものにしてしまう。

2)サイトをさくらのサーバーからNetlifyに移した。

正月に文句を言っていた「お名前.com」からGoogle Domainsにドメイン管理を動かしたがたぶんそれは関係なかろう。それぞれを個別に行なって、スピード測ればいいのだけどそういうのをちゃんとやらないのがいけませんねえ。

今回のお引越しに関連しあれこれ調べたがNetlifyには驚いた。平たく言えば、Webサイトの面倒を見てくれるのだが、この仕様でよく商売がなりたつなと不安になるほどである。セットアップは簡単だし、このサイトのアクセス量くらいでは楽勝で無料である。13年お世話になったさくらのサーバーもこれでおさらば。さくらは真面目に商売をやっているいい会社だと思うが、無料には勝てない。それに無茶苦茶早いし。

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さて、このNetlifyのサイトにはサイトのスピードをテストしてくれる機能がある。さっそくこのサイトを入れてみると

before

こんな結果である。そもそもこのサイトにFranceやブラジルからアクセスする人はいないから多少遅くてもいいのだが、Tokyo,Japanの数値がSan Fransiscoより悪いのが気にかかる。

なぜこうなるのか。読んでみるとCDNというものが働いていないらしい。CDNとは何かについて多少勉強したが

「世界中どこからアクセスしても、近いところから早く応答を返してくれる仕組み」

らしい。それが無料で使えるというのもうれしいのだが、動かなくては宝の持ち腐れである。

じゃあそれを働かせるためにはどうしたらいいのか?あれこれ調べ、1時間に渡りこのサイトがアクセスできなくなったりしたが、ようやく方法が見つかったと思う。今現在の測定結果はこうである。

after

まあすばらしい。世界中どこからアクセスしても、2-5msで応答が返る。そもそも世界中からのアクセスがあるわけないだろう、という些細な問題は気にしないことにする。

では何をやったか?


Netlify上で、primary domain(これが何かはいまだによくわからない)をotsubo.infoからwww.otsubo.infoにした


基本的にはこれだけである。Google Domainsの設定はCNAMEでwww.otsubo.infoをnetlifyのxxx.netlify.comにとばす+Aレコードで直接Netlifyのロードバランサーを叩いているだけで変わりはない。このサイトにアクセスしている時、ブラウザのURLをよーくみると、去年は

http://otsubo.info/blog/

だったのが

https://www.otsubo.info/blog/

にかわっていることに気がつくだろう。多少長くなったが、サイトを作成している本人が使っても早いほうが楽しいし、ほとんどの人は長くなったことに気が付きもしないと思う。

ここらへんの理屈が半分くらいしか理解できていないのは気持ち悪いが、まあそこは今後の勉強の課題にしよう。


失敗を恐れるなというけれど

2018-01-11 07:19

免責事項:このブログの内容は私が雇用契約を結んでいる企業の見解ならびにその中で起こっていることは何の関連もありません。ないったらないんです。

ビジネス関連でこうした言説を目にすることは多い。

もっと多くの間違いを犯そう、もっと多くの失敗を歓迎しよう――。

 成功しているビジネスリーダーの間で、みずからの会社と従業員にこう訴える人が、にわかに増えている。なぜだろうか。

引用元:コカ・コーラ、ネットフリックス、アマゾン……成功企業のリーダーが失敗を奨励する理由 | HBR.ORG翻訳マネジメント記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

失敗を歓迎。それはいい言葉だ。問題は

「じゃあ、その評価はどうなるの。来年の給料が下がらないという保証があるの?」

である。

そりゃ経営者は部下が失敗をして「よく失敗してくれた。ここから重要な教訓を次に活かすように」と言えばいいけど、来年の人事評価はどうなるんでしょうかね。そもそも首はつながっているんでしょうか?

こうした言説は「そもそも失敗にも種類がある」ということを無意識か意識的にかわからないが省いている。正しく失敗すること。成功確率が50%であり、外部環境によって成功が左右される場合失敗は避けられない。こうした場合は仮に失敗したとしても人事評価にマイナス点をつけない。逆にろくに調査もせず、開発管理(すなわち自社の努力によってコントロール可能な分野)もデタラメで、案の定プロジェクトは失敗。こうした場合には容赦なく減点する。

つまり「失敗を許容する」というのであれば

「はい、KPI達成できなかっからマイナス評価ね」

という...な人事評価の仕組みを変える必要があるのだが、

「どんどん失敗しろ」

という人間ははたしてそれが理解できているんだろうかね。



企業のビジョンについて

2018-01-10 07:12

免責事項:このブログの内容は私の個人的な意見を示すものであり、私が雇用契約を締結している企業の見解とは何の関係もないことを可能な限り強力に強調しておきます。

企業ビジョンというものがある。私は長年の研究の結果、企業ビジョンは2種類に分類されることを確信するに至った。

「きらきらビジョン」

「これだ!ビジョン」

である。いきなりそう言われてもわけがわからないと思うので、例を示そう。たとえばこんな企業ビジョンがある。

毎日を楽しく幸せに、社会を自由で効率的に。
(中略)

新しいサービスをより早く、より多くの人へ。

(中略)

素晴らしいサービスを生み出すために素晴らしい会社を作る。

引用元:グリー株式会社 (GREE, Inc.) - 会社情報 - ミッション

これが典型的なキラキラビジョンである。きらきらしているだけで何も言っていない。社員が手に手を取り合い「世界が平和になりますように」と唱和している姿が目に浮かぶ。キラキラビジョンのいいところは人畜無害な点。実際の企業の行動には何の影響も与えないし、私のようにひねくれた人間以外から問題点を指摘されることもない。

では「これだ!ビジョン」とは何か?IBMは一時このビジョンを掲げていた。

IBMはサービスである。


IBMは長年ハードウェアの覇者でしたが、それらの成功体験から抜け出せずに(特に日本勢に押されて)いた1993年、CEOに就任しルイス・ガーズナーが掲げたビジョンは「IBMはサービスである」でした。

引用元:ビジョンとスローガンの違いとは何か?|Work , Journey & Beautiful

そもそもIBMとはInternational Business Machinesの略である、ということを考えればこれは実に大胆なビジョンである。大型汎用機の製造で食べていた会社がこれからはハードウェアの製造ではなくサービスで収益をあげるといっている。

営利企業は利益を上げなければ存続できない。そのための選択肢はいくつもあるなかで

「わが社はこの道で行く!」

と「これだ!」と示すのが「これだ!ビジョン」である。わが社は「いい会社になる」のではなく「サービスで食って行く」と宣言する。これは実に大胆だ。「これを選ぶ」ということは「他の選択肢を捨てる」ということでもある。勇気がいる。だからほんとんどの日本の会社はキラキラビジョンに逃げる。もう一つキラキラビジョンの例を上げておこう。

DeNA
引用元:DeNA
これも実にキラキラしているが見事に何も言っていない。グリーもそうだが結局やっていることは、ネット上のパチンコ屋だからねえ。あんたのデライトってユーザの射幸心のことだよね。
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ここまでが長い長い前振り。今米国でCESというイベントが行われている。悲しいくらい話題にはならないが、私は昨日ある日本企業の発表に驚いた。

「自動車メーカーからモビリティの会社になることが目標」。そう豊田社長が語るように、e-paletteはトヨタが示すモビリティ・サービスの新たな形だ。

引用元:トヨタは“モビリティ版アマゾン”を目指す:日経ビジネスオンライン

豊田社長は本当にこう言った。(基調講演のビデオを見たから間違いない)トヨタは自動車メーカーではなく、モビリティの会社になる、と宣言したのだ。

私くらい惑星トヨタを忌み嫌っている人間はそういないと思うが、これには率直に感服した。日本の経営者が忌避する「これだ!ビジョン」を大胆に宣言したのである。この社長が、まだ社長になる前に推進したG-Bookというビジョンの顛末や、トヨタの社員が「自動車作り」の一歩外に出た途端どれほどの能力を発揮するかを知っている身としては多少生暖かい視線にもなってしまう。しかしこの「これだ!ビジョン」には心からの拍手を送りたい。


ブログのモデルチェンジ

2018-01-09 06:58

などと仰々しく書くほど見かけは変わっていないではないかと思われるかもしれない。それはほぼ正しい。

先日このブログを含むサイト全体のお引越しをした。その顛末は本家のほうに書いてあるからここでは繰り返さない。それにあわせてブログを作っているシステムも変えた。一番変えたのはこのブログを作るしくみである。面倒なことはおいておいて

「人が読むときではなく、文章を書くときにあれこれやってしまう」

というポリシーのもと、あれこれ作りかえた。巨大でありながら一部しか使っていないjQueryとかあっさり使わないようにした。結果として爆発的に素早く表示されるようになるはずだった。しかし測って見ると1割程度早くなっただけだった。

いや、長くエンジニアをやっているとこんなことでめげたりはしない。めげるのだが、そのまま旅にでたりはしない。

今回のお引越しにあわせ、あれこれ調べた。サイトをつくる仕組みもどんどん変わるなあと感慨にふけっていたが、そもそもサイトをとても長い間作っているのだった。本家を最初にアップロードしたのは20年前である。そりゃ20年もたてばあれこれ変わるわね。

というわけでこれから何度モデルチェンジができるかわからないが、また気が向いたときにあちこちいじるようにしよう。


お名前.comに何が起こっているのか

2018-01-01 08:21

下に示すのは、私のメール受信箱を「更新早期割引」で検索した一覧である。

メール一覧

ここのところ毎日「本日限定」の「今ドメインを更新すればお得ですよ」というメールが届いている。今こうして一覧にして気がついたのだが、タイトルを微妙に変化させているのだな。ちなみに9月の終わりにも同じようなメールの嵐があり、その時ねぼけたままドメインの契約を更新してしまった。だから今私の契約の残り期間は3年を超えている。

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このサイトを置いているotsubo.infoというドメインは「お名前.com」というところで登録していた。(過去形)安いと思ったからである。少なくとも初年度に関してはそれは正しかった。

長い間特に不満も抱かずに使っていた。ところがこのメールの嵐である。何が「お名前.com」に起こっているのか?久しぶりにサイトにアクセスして驚いた。

前に使った時どんなサイトだったかとか覚えちゃいない。というわけで、トップページにある「ドメインNaviログイン」という文字列をクリックする。ID,パスワードを入力するといきなりこんな画面が開く。



契約更新

普通ログインすれば「契約しているドメインの一覧」を出すと思うのだが、出て来るのはいきなりドメイン契約更新画面である。契約を更新しないことには何もさせないぞとい言っているようだ。いや、私はドメインの設定をいじりたいのであって、別に更新はしたくないのですが。そう思って別のページに移動するボタンを押すと


確認画面

このポップアップが表示される。まるで契約を更新せずにこのページから移動するとよくないことが起こるような気がして来る。いや、ここは勇気を振り絞って「ページから移動」を押す。するとようやく「契約しているドメインの一覧」に移動できるのだがドメイン一覧の上にこういう文字が出て来る。


文言


【重要】契約更新について
更新手続きを忘れて失効してしまったドメインが再取得専門業者に取得・流用され、それまでのブランドイメージや信頼が毀損するトラブルが急増しています。
ドメインを一度失効してしまうと、取り戻すことは極めて困難です。 今一度その財産価値をご確認のうえ、 契約更新手続きをお早めにお申込みください。

引用元:ドメインNavi

ここまで言われると、もはや契約を更新しないのが罪であるかのような気がしてくる。

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英語圏のサイトに比べ、日本のサイトはダサい、という意見をよく聞く。ちなみに「いや日本人にはああいうサイトが合っているのだ」という意見も同じくらいよく目にする。しかし今の「お名前.com」に起こっていることはそういうレベルとは次元が異なっているように思う。まるで

「節税にもなるマンション経営を始めてみませんか」

というありがたい勧誘電話を聞かされているような気分になる。

私は外部の人間だから、なぜ「お名前.com」がこんなことをするのかは想像するしかない。現時点で考えられる仮説は三つである。

仮説1:「お名前.com」はとにかくユーザに契約を更新させる必要がある。この際ユーザビリティがどうとか言っている暇はない。この無理矢理さ加減は、倒産間際のPCショップが「出血大売り出し」を繰り返しとにかく「現金を手に入れよう」としている姿をなんとなく彷彿とさせる。

仮説2:「KPIはユーザの契約更新数。これをあげないと君のボーナスはなし」との必達目標を押し付けられた哀れな担当者が存在する。彼(もしくは彼女)はKPI達成のためならなんでもやる。契約更新数が向上すればいいのであり、「こんなクソサイトつきあってられるか」と他の会社にドメイン管理を移す私のような人間がどれだけでようが知ったことじゃない。

仮説3:これが日本人にはいいんだよ!

どれが正解なのか。あるいは全部間違っているのかは私が知るところではない。ああ、新年早々何を書いているのだろう。