サイバネティクス革命

2018-04-25 07:28

50年前なら彼は、応用天文学とサイバネティックスと宇宙推進装置の専門家とみなされるところである。 2001年宇宙の旅P120

2001年宇宙の旅は何度読んだかわからない。しかしこの「サイバネティックス」という単語はいつも頭にひっかかっていた。ここ以外で読んだことがないからだ。そして昨日久しぶりにこの言葉に再会した。別の場所で。

Wiener had coined “cybernetics” to refer to his own vision of intelligent systems — a vision that was closely tied to operations research, statistics, pattern recognition, information theory and control theory. McCarthy, on the other hand, emphasized the ties to logic. In an interesting reversal, it is Wiener’s intellectual agenda that has come to dominate in the current era, under the banner of McCarthy’s terminology.

引用元:Artificial Intelligence — The Revolution Hasn’t Happened Yet

Alan Kayにしかられそうだが、私はマカーシーはArtificial Intelligence-AIという名前を使い始めた人として名を知っていたが、Wienerの名前は知らなかった。この文章を訳す。

適当な訳:

Wienerは、彼の知的システムのビジョンを表すのにサイバネティクスという言葉を使った。そのビジョンはオペレーションズリサーチ、統計学、パターン認識、情報理論、制御理論に深く関係していた。

マッカーシーは逆に論理を強調していた。現状世の中を支配しているのはWienerが挙げた項目だが、マッカーシーの用語を旗として掲げている。

端的に言おう。今世の中でもてはやされている機械学習はそもそもAIの創始者が考えた「論理」とはなんの関係もない。パターン認識であり、それを強調したのはサイバネティクスという用語を掲げたWienerだった。

つまり

今起こっているのは「AI革命」ではなく「サイバネティクス革命」なのだ。ものすごく細かい話を全部すっ飛ばしていうが、ニューラルネットは「学習」を行う。そこにはなんの論理も存在していない。出力に対するフィードバックを得て、出力がだんだん修正されていく。これはPIDなどのフィードバック系の制御理論そのものだ。(すいません。詳しい方がもしここを読んでいたら怒らないでください。まだこのロジックはドラフトです。)

エキスパートシステムがもてはやされた「第2次AIブーム」は確かにマカーシーのいうところのArtificial Intelligenceだったかもしれない。一階述語論理でなんでも記述できるというとんでもなく楽観的な(今から考えれば)想定のもと、いろいろなことがなされた。

そして

今起こっているのは「第3次AIブーム」ではない。サイバネティクス革命なのだ。今異常に発達しているのは「パターン認識」であり「人間の知性を模倣、代替すること」ではない。

先ほど引用した文章は、全部日本語に訳してAIペテン師やら、シンギュラリティ馬鹿にぶつけてやりたいような名文である。シンギュラリティは疑似科学だから、それに染まった人は何も学ばないが、純真な若者が道を誤るのを防ぐ効果はあるかもしれない。

というわけで

ここで書いても、誰も読まないが、当ブログでは今後今「AI革命」と呼ばれていることを「サイバネティクス革命」と呼称します。AIという用語をマカーシーが用いた意味以外で使用したとすれば後ろに(笑)がついていると思ってください。