TimとMarkとアルベルト

2018-04-04 07:12

Facebookが情報漏洩に関するスキャンダルで揺れている。それに関してAppleのCEOとFacebookのCEOが間接的に議論をしている。

この二つの会社は、その成り立ちが大きく異なる。Appleは製品を販売し、その代金で利益を得ている。対するにFacebookは無料で誰もが使える。その代わりにFacebookの利用者は広告を見させられる。ここで次のフレーズを常に念頭に置いておくべきだ。

“When an online service is free, you’re not the customer. You’re the product.”

引用元:Daring Fireball: Users and Customers

訳:もしオンラインサービスが無料だとしたら、あなたは顧客ではない。商品だ。

なぜ無料で提供できるかといえば、ユーザの時間を企業に売ることで収益を得ているから。そこに注意しなければならない。

さて、Tim Cookはこう述べた。

アップルのクック氏はこの問題について、MSNBCなどの取材に対し、「もし我々がユーザーで金もうけをしていれば、もしユーザーが我々の製品だったとしたら、莫大な利益が出ていただろう」「だが我々はそうしないことを選んだ」と語っていた。
さらに、「ユーザーからもっとお金を取ろうと熱心に働く企業の方が、ユーザーのことを考えてくれていると思わされないことが大切だ」と言い添えている。

引用元:CNN.co.jp : アップルのクック氏とフェイスブックのザッカーバーグ氏、無料サービス巡り論戦 - (1/2)

これに対するマークの反論はこうだ。

「世界中の全ての人がつながるのを助けるサービスを構築したいと思っても、現実にはお金を払えない人がたくさんいる」「そうしたサービスを支えられる合理的なモデルは、広告に支えられたモデルしかない」と訴えた。

引用元:CNN.co.jp : アップルのクック氏とフェイスブックのザッカーバーグ氏、無料サービス巡り論戦 - (1/2)

なるほど。確かにそれは正しい。世の中にはAppleの製品を購入できない人の方がはるかに多いだろう。そうした人々にもFacebookはサービスを提供している。

しかしマークの反論には一つ弱点がある。もしFacebookが非営利団体ならば彼の主張は正しい。お金を払えない人にもサービスを提供するため「必要最小限」ユーザを売り物にする。これならば誰にも文句を言われる筋合いはない。

問題は

Facebookは営利企業だということ。つまり利益が最優先なのだ。ならばできる限り「商品を高値で売りさばく」ことにフォーカスしないとおかしい。今回のスキャンダルは、漏洩したデータによってトランプ陣営が選挙戦を有利に進めることを可能にしたものであり、同じようなことはFacebook内部で行われている。彼らの目的はトランプを当選させることではなく「広告を高く売りつけるため」だが。つまりFacebookはTim Cookのいう

「ユーザーからもっとお金を取ろうと熱心に働く企業」

なのである。

さて、ここで第3の人物に登場願う。アルベルト・シュペーア。ナチスドイツでの建築家であり、軍需大臣になった男だ。彼はニュルンベルク裁判の最終弁論でこのように述べている。

ドイツ国民のように進歩的で教養があり洗練された国民がどうしてヒトラーの悪魔的な支配力に屈してしまったのでしょうか。それは現代の通信手段 ―ラジオ、電話、電信― のせいです。いまや指導者は遠隔地にいる部下に独自の判断を下させるための権限を与える必要がなくなったのです。現代の通信手段を使えばヒトラーのような指導者が、自分のいいなりになる集団を通じて自分で支配できるのです。ですから世界の科学技術が進歩すればするほど、個人の自由と人々の自治が不可欠になるのです

引用元:アルベルト・シュペーア - Wikipedia

インターネットの進歩は、トランプという認知症患者を米国大統領=核のボタンを押せる人間にした。私は彼が戦争を始めないまま(貿易戦争はしかたがない)任期を終えることを望んでいるが、はたしてそうなるかわからない。仮に無事そうなり、トランプが歴史のジョークとして忘れられる時が来ても、アルベルトの言葉は胸に刻んでおくべきだ。