Bad UIを作る人たち

2018-05-28 07:32

明治大学の中村教授が「楽しいBad UIの世界」というサイトを作っている。中村さんがあちこちで体験したり目にしたBadUIが掲載されている。

大変啓蒙的な内容ということなのだが、私はいつもこのサイト(ならびに書籍)を読むと「なぜこうなるのか」により興味を持つ。

米英相手に無謀な戦争を始めた日本政府は大バカものでした。それは結構。中学二年ならそれでよかろう。私が興味を持つのは「なぜそんなに愚かな判断をしたのか」である。

なぜBad UIが世の中にでるのか?設計した人間がバカだったのか?設計を指示した上役がバカだったのか?あるいは結果的にBad UIと評価されただけで実はいいものだと思っていのたか?そうでないとして、自分たちでも問題があるとわかっていたのならなぜそれを世の中に出してしまったのか?

地獄への道は善意が敷き詰められている。Bad UIへの道は優秀なデザイナーと、有能なマネージャーと、ユーザテストで敷き詰められている(場合もある)しかしそうした裏事情が表にでることは滅多にない。

2003年、Bill GatesがMicrosfot.comのサイトからMovieMakerをダウンロードしようとした。そして彼はひどい沼にはまり込むことになる。しかしなんといってもBill Gatesだ。彼は会社の人間に「これはなんだ?」とメールを投げる。

The lack of attention to usability represented by these experiences blows my mind.

訳:この経験が意味するユーザビリティの軽視には驚くしかない。

しかし

面白いのはここからである。あまりに長いので要約した部分を引用する。

And if you read the finger-pointing, ass-covering, wheel-spinning internal email conversation between the people Bill flamed, you will understand why the product sucked so hard.

引用元:Epic Bill Gates e-mail rant from 2003 / Boing Boing

このメールが引き起こしたのは「誰がこの問題に責任があるのか?対処するのか?」という果てしない議論。シン・ゴジラの「今のどの役所に言ったんですか」どころの話ではない。

なるほどなあ。Microsoftに集う優秀なエンジニア、デザイナー、マネージャーが寄ってたかってゴミ見たいなUIを作る理由の一端がここに表されている。本当にBad UIを改善しようと思ったら、こうした背景にまで踏み込まなくてはいけないと思うんだけどね。再び戦争を引き起こす愚を避けるためには

「戦争は愚かな行為なんだよ」

を知ることだけでは十分ではない。

「ではなぜその愚かな戦争は世界中からなくならないのか。賢人たちがどうして戦争を引き起こすのか」

について知り、考える必要があると思うのだけど。