人工知能芸の観察

2018-10-24 07:19

おもしろい文章を見つけた。松原仁という人工知能研究で有名な人のインタビューである。出だしは期待が持てる。

「松原さん、まず“わかる”ってなんですか?」と。
「実はそれがまだわからないんです。“わかる”ということが“わからない”んですね」

引用元:AIは「わかる」が何かは「わからない」──松原仁、人工知能の本質をかく語る|WIRED.jp

をを、と思い読み進めると人工知能芸が炸裂し始める。

もしも“わたしにわからないことはない”というクラウド型AIが実現できたとしたら、フレーム問題は解決するでしょう。それは世界中のことが瞬時にわかるということですが、ぼくは工学的にいくらコンピュータが速くなっても難しいと思います。

引用元:AIは「わかる」が何かは「わからない」──松原仁、人工知能の本質をかく語る|WIRED.jp

これはコンピュータがフレーム問題を解決できるか、という文脈の中での発言。この短い文にいきなり

「クラウド型AIが実現できたとしたら、フレーム問題は解決するでしょう」

という大胆な予想が出てくる。しかし松原氏は(少なくとも記事に引用された範囲では)クラウド型AIとは何かを説明していないし、その説明していないものがどうフレーム問題を解決するかを示していない。

しかしすぐ次の文では

「工学的にいくらコンピュータが速くなっても難しい」

とそのフレーム問題の解決を否定する。わけがわからない。

人工知能研究をしていると称する人にはいろいろなタイプがいる。私の経験の範囲内でいうと、このように

「ふわふわした言葉だけで前後の矛盾を気にせず喋り続ける」

というのは一つの話芸だ。こういう人と話すと時間の無駄に終わることが多い。言っていることはわけがわからないのだが、立て板に水で目の前でしゃべられると何か重要なことを言われたような気がする。

コンピュータがこういう会話ができるようになればそれこそ「シンギュラリティだぁ」ということなのだろう。