信仰の力

2019-04-10 07:14

ビジョナリーカンパニーという本がある。今Amazonをみるとこんなレビューが付いている。

ジム・コリンズのビジョナリーカンパニーを読んだ。

この本は、会社としてビジョンを持つことの重要性を説いた本ではない。永続する企業の作り方を説いた内容になっている。

永続する企業とは、カリスマ経営者がいなくなり、売れ筋商品のライフサイクルが終わっても、繁栄し続ける企業のことである。

例えばソニーとケンウッドは同じような時期に同じような事業規模であったが、なぜソニーだけが偉大な企業になれたのか。その分水嶺が豊富なエビデンスと共に説明されている。

引用元:ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 | ジム・コリンズ, 山岡洋一 |本 | 通販 | Amazon

この本は大変あたったし、出版されてから年月がたっている。つまり彼らが「こういう要素を持っている企業は強い」とした企業がその後どうなったかが明らかになっているのだ。

2001年のベストセラーになったジェームズ・コリンズの著書『ビジョナリー・カンパニー2:飛躍の法則』(邦訳:日経BP社)を例に考えてみよう。コリンズはこの本で、過去40年にわたってパフォーマンスが株式市場全体を上回った11社と、そうではない11社とを比較した。そして、成功した企業に共通する顕著な特徴を5つ見つけ出した。

(中略)

コリンズは「ファインマン・トラップ」にひっかかった。ベスト企業やワースト企業、どのようなくくりであれ、時を経て振り返れば、共通する何かしらの特徴が必ずいくつか見つかる。それゆえ、それを発見したところで何の証明にもならない。

『ビジョナリー・カンパニー2』が出版されたあとで、コリンズが素晴らしいとした11社は、明らかに平凡なパフォーマンスになっている。株式市場全体を上回っているのが5社、下回っているのが6社だ。

引用元:仮説なきデータマイニングが陥る「ファインマン・トラップ」という落とし穴|WIRED.jp

これは絵に描いたような「相関(その時点での)と因果関係の混同」であり、それこそ教科書に載せたいような事例だ。例えばこんな命題と等価である。

東証一部上場企業の社長を調査したところ、右利きが90%を占めた。それゆえ右利きであることは偉大な企業の社長になるための有力な条件である。あなたが左利きなら、すぐ右利きに「治し」なさい。

いや、この本のいい加減さについては何度か述べた気がするし、彼らの言い訳術には興味深い点がある。今日書きたいのはそのことではない。

如此く有力な批判が存在する本でありながら、いまだにありがたがって信奉する人が存在する、という事実だ。なぜそんなことが起こるか?おそらくこのレビューが答えの一つだと思う。

40代、管理職です。
原著を読むほどの英語力はないので、正確な比較はできませんが、翻訳がすばらしいと思います。訳者の強い想いが伝わってきて、気持ちを奮い起たせてもらっています。
私の勤めている会社は、幸せなことに本書のように明確な理念を持った企業ですが、それでも迷うことなど日常的な話で、本書含めたビジョナリーカンパニーシリーズには企業の理念を信じる、信じきるための後押しをしてもらっている気分です。

引用元:ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 | ジム・コリンズ, 山岡洋一 |本 | 通販 | Amazon

理由はわからないが、私を含め人間には「多少目をつぶってでも、何かを信仰したい!」という強い傾向があるように思える。

そのため、私のような斜に構えた人間が「うーん。今になってみると間違いなんですけどね」という意見からは耳を塞ぎ「そうか、自分たちがやっていることは正しいんだ!」と背中を押してもらう。その方が幸せと思う人がたくさんいるんだろうし、多分私にもそうした傾向がある。

願わくばそうした自分の不合理な信仰について多少なりとも自覚を持てるようでありたい。