題名:Clinton-part16

五郎の入り口に戻る

日付:2001/4/5

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2001/5/23-様々な物の見方

国会は少し前までとは違った形で何かと話題に上っている。総理をやめても尚話題を提供してくれるのが親愛なる森君だ。田中外務大臣が米国政府高官とのMeetingをキャンセルしたことについて批判する言葉を発してくれた。どっかの国王が来たときに仮病を使って派閥の若手議員と飯を食っていた男がだ。

かくのとおり総理の座を退き、適当に批判的な発言する立場にたたせてみると、あの巨躯が物をいってなかなか重々しく見えるのは面白い。思い出せば総理という地位につく前の森君はこのように見えた物だ。かくの通り人の評価というのはなかなか難しい。

批判する言葉だけで妙な人気をとっていた田中は、自分が批判される立場にまわることになった。伏魔殿と称される外務省の役人との戦いは独ソ戦-ヒトラーとスターリンの戦いのようなものだ。外務省のお役人たちの論理は今更いうまでもないことだが、

「心身共にパニックに陥っていた」

といってMeetingを取りやめる大臣も先行きに不安を感じさせる。というかこの季節。新しい環境、新しいポジション、新しい社会人としての生活で心身共にパニックに陥っている人は多かろう。

「新しく会社にはいって心身ともにパニックに陥っていました」

とかいって上司との面談をキャンセルすれば、「使えない新人」というレッテルを貼られてそれでお終い。であるから皆それと一生懸命戦っているというのに大臣たあ良い商売だねえ。

これが単なるミスキャストなのか、あるいは毒をもって毒を制すなのかあるいは変人首相から目をそらさせるための避雷針の役割なのかはまだよくわからない。しかし過去1年あまり政治家の異様な言動についての報道はいささか聞き飽きた感がある。いいかげん政策でもって何かを言ってほしいと思ったりするのだが。

話を森君に戻そう。ここのところ何人かの人と話していて気がついたのだが、彼は総理であることによって、確実にある物の見方を人々に与えていたのだ。NTTと名が付く企業で働いていた時に私も感じた

「幸せになる簡単な方法は、無神経で、無責任であること」

というのがそれである。何?仕事の失敗で悩んでいるって?森君を見なさい、森君を。あんだけ馬鹿な事を言っても堂々としていたでしょ。そうでしょそうでしょ。他人を省みず、自分だけの論理の中で無神経に生きる人間が幸せに暮らせるというのがこの世の姿。自分の言動に責任を持ち、他人を思いやる人間はそのために苦しまねばならない。天道是か非かと書いたのは司馬遷であったか、などと言い出したところで

「何、このわけのわからない言葉を振り回すいやみな奴は」

と思われてだいたい会話はおしまいになるのだが。

 

2001/5/13 - I will go to Disneyland

親愛なる金正日の長男氏はゴールデンウィークに東京ディズニーランドを訪問しようとしたそうだ。最後まで報道での呼ばれ方は

「長男とみられる男性」

であったが、北朝鮮が一切沈黙を守ったのが「長男」である何よりの証拠。そうでなければ

「日本側は意図的にデマを流し、朝日関係を損なおうとしている」

とわめき出すはずだ。そう思うとビデオに短時間映ったその姿は父親そっくりの傲慢さを持っているようにも見える。

即時返還をしたことについて色々意見もあるだろうが、何よりもその姿、顔がTVで広く放映されたことが大きいと思う。彼はいつの日か金正日の後継者となるかもしれない。そして講堂一杯の人民から拍手を受けているその姿が映されるたび私たちは思うのだ。

「ああ。あのディズニーランドのおっさんね」

これでは威厳もカリスマ性も-北朝鮮人以外にとっては-あったものではない。

さて、国内を観れば、変人内閣は妙な支持率を取っている。何もしていない時点での支持率だから某外務大臣が言った通りの

「ご祝儀相場」

というのが適当だろうし、それまで最高だった支持率が細川のものだというところも笑える。それでも

「いきなりエベレストの頂上に登った」

などと言っている某大臣の知能がどれくらいか、という事が解っただけでも有意義ではあったが。

 

2001/4/22-沈むコップの中での争い

自民党総裁選挙たけなわけである。4人の候補のうち一番顔を知られていないのは麻生とかいう男。どんな奴かと思って彼のWeb Siteを観ようかと何度か試みたが最初のアニメーションの次にどうしても進めない。

であるからして言っていることを聞いてみるわけだ。すると党員投票と議員投票に関して

「近くにいて観ている人(議員のことか)と遠くから観ているだけの人(党員のことか)では意見が違って当然だ」

とのこと。言葉の感じからして前者を重く観たいという意図が伺える。貴様らに何が解る。俺達候補者をよく知っている議員様が選んでやるから心配するな、という雰囲気だ。何故最近になって首相公選制などが取りざたされるかと言えば、その高貴なる議員様がお選びになった森が国民10人のうち9人から不適格と言われながら議員様に何度も信任されたからなのだが。

そして外国人記者相手に「よい国とは」と聞かれ「金持ちのユダヤ人が住みたいと思う国」と言う。米国のユダヤ人団体から抗議がくると

「別にユダヤ人を差別するつもりはない。華僑でもアルメニア人でもいい」

と今度は華僑人権擁護団体とかアルメニア人中傷監視団体(そんなものがあるかどうか知らないが)から抗議をうけそうな言葉で応酬する。○○人は金持ち、という紋切り型の物の見方が非難されているのに、それもさっぱり理解していない。

理由は知らないが森君を最後まで強力に支持し続け、公費ばらまきだけにいつも積極的な亀井君は論外として、小泉君が言うことと言えば「自民党の再生」だけ。それを何故か応援している田中は小渕首相の死を「自業自得」などと口をすべらせた。たいていの人は、人の死の前では厳粛になるし冗談は言わない。ましてや小渕君はそれなりに国民から愛されていたと思う。この失言のセンスにはちょっと驚くが、これを失敗と認め二日であっても謹慎するところが森よりはまともなところか。しかしその「歯切れのよい批判」で妙な人気をとっているこの議員に何ができるかは依然として不明のままだ。

気の毒なほど人気がないのが親愛なる橋本君である。言うことが「200日ください」だけで何も具体的な内容がないのは問わないことにしよう。しかし出馬を辞退した野中君は例によって総裁選後の人事について、橋本君の頭越しに自分が決定者であるかのように発言を続ける。

他の人間も亀井を除いては森君より(たぶん)まともな首相になるとは思うのだがふと考えるのだ。たとえば米国の大統領候補指名争い。あれとこの差は一体なんなんだ。経済が最優先課題はいいとして、他に何か言うことはないのか。日本に他に問題はないのか。自民党の再生だけを訴えればいいのか。日本はその内容と意図がどうであれ世界に対し顔を持たなければいけない地位にある。その国の首相たろうという人間が「金持ちのユダヤ人」しか外交、国際関係について言うことはないのか。

さて、政治は自民党、野球は巨人。親愛なる巨人軍は勝ち続けているがTVの視聴率は下がっているらしい。巨人のオーナーは「視聴率が下がっても独走してくれたほうがいい」と放言したのこと。プロスポーツとは所詮見せ物であり、観客で成り立っている物なのだが、このオーナーは自分の球団の勝利しか頭にない。そんな人間に牛耳られている世界が地盤低下を示すのは当然のことだ。イチローがシアトルの観客-イチローが「目が肥えている」と称する人たち-から受ける大歓声と日本の球場で響き続ける機械的な読経の声を比べれば、お経を唱えている本人達以外には前者の方がExcitingなのは当然の成り行き。日本人大リーガーの活躍に伴い、大リーグの試合も日本人の目に触れるようになった。あの爆発的なパワーから比べればどっかの球団の「重量打線」も「小太り打線」くらいにしか思えない。「何夜連続さよなら勝ち」とか言われても本当にファームの試合結果を聞くようだ。

自民党本部の中だけで争いを続ける人たち。東京ドームの中だけで戦いを続ける人たち。その中で勝利を得たところでその狭い世界自体が沈んでしまえば無意味なのだが。

 

2001/4/14-Save face

米国の偵察機が中国軍機と接触した事件は「米国が書簡を渡し、謝罪したと中国側がうけとめた」ことにより解決をみた。朝NHKでこのニュースを聞いたとき

「米国が申し訳なく思う」

とかなんとかいう表現を使っていた。何だこれは?と思い原文を観てみればこのようである

Please convey to the Chinese people and to the family of pilot Wang Wei that we are very sorry for their loss.

Although the full picture of what transpired is still unclear, according to our information, our severely crippled aircraft made an emergency landing after following international emergency procedures. We are very sorry the entering of China's airspace and the landing did not have verbal clearance, but very pleased the crew landed safely.

確かにSorryという文字が2カ所にでてくる。しかし最初のSorryは

「パイロットが行方不明になったことに対する悲しみの意」であり次のSorryは

「国際的な緊急時の手続きに従って緊急着陸を試みたが、口頭での許可を得ないうちに中国の領空にはいり、着陸した事について」

である。両方ともまあ論議のないところであり、普通「謝罪」という文字から想像する内容とはかけ離れている。あの口を極めた非難の言葉、行方不明になったパイロットの妻からBushにあてた「あなたは卑怯者だ」という手紙。これが全てこの的はずれなSorryで解決。中国人はメンツに何よりもこだわると聞くことがある。私はそれについて自分の体験から語ることはできないが、このやりとりを観ると、なるほどそうかもしれない、と思えてくる。2度もSorryがでてくる文章をださせたのだから、メンツは守られた。十分謝ったことにしてやろう、というわけか。

かくのごとき経緯を観ていると、問題の解決は双方の国としての利害関係のみに基づいて行われ、言葉に現れたように見えた非難の感情などは、メンツを保つこと、もしくは交渉を少しでも有利にするためだけのものだったかとも思えてくる。しかしこうした冷徹な利害計算に基づき外交が行われるというのは安心させられる事でもある。何の計算もなく「英霊に申し訳が立たない」などと戦争など始める国よりはマシかもしれない。こう思ってこそ日本が60年前に言っていたような「己を是とし、他人を非とする」以下に示す文章も冷静に読めるというもの。

「中国政府と人民が連日、この事件について米国の覇権主義的行為と闘争した結果、米国政府が当初の強硬で横暴な態度を改め、中国人民に謝罪した。

(中略)

中国政府は米国側に強く抗議し、交渉を行い、米国の覇権主義的行為に対し、適切に闘争を行った。この闘争により、正義が広がり、覇権主義の気勢が衰え、国家の主権と民族の尊厳が守られ、世界の平和が守られ、大国の強権を恐れない中国の大国としての風格が示された。 」

中国の国民はこの文章をどのように感じて読んでいるのだろう。文字通り受け止めているのか。それとも醒めた目で観ているのか。

 

さて、国際ニュースの次にはスポーツの時間である。ここのところしばらく

「日本の6球団よりも数人の大リーガー」

という報道スタイルが続いている。彼らが愛してやまない巨人の勝利よりもイチローが外野から返球したことの方が大きく取り上げられる。私にとってはこの傾向は望ましい物だ。イチローのすばらしいプレーも技と力を競う大リーグの中においてこそ栄えると言うもの。日本野球界の地盤沈下を憂える言葉もあるようだが、なに大丈夫。球場に行って宗教的な呪文を唱えている人たちはもともとプレーなんか観てないんだから。視聴率は多少落ちるかもしれないが、観客動員には影響ないよ。

 

2001/4/6-先行する者

中国周辺で電子偵察をしていた米軍機が中国軍戦闘機と接触。中国領内に緊急着陸した。国境紛争ではいつものことだが両者の主張は全く食い違っている。中国は

「米軍機がぶつかってきた証拠を持っている」

と称しているが例によってそれはどこにあるのかわからない。第3者としては鈍重な大型機が敏捷な戦闘機に対して接触をしようとしてもできるものではない、という米軍関係者の言葉に理があると思うが、どちらのサイドも主張を引っ込めるとは思えない。

問題はその後だ。中国軍は機体の中に踏み込み乗員を拘束した。その理由は彼らの公式発表によればこうである。

「米機が許可を得ずに中国の領空に進入し、中国の空港に着陸した行為は、中国の領空と主権をひどく侵害する行為である。米国側が中国側にもたらした損害および米機が許可を得ずに中国の領空に進入し、中国側の空港に着陸したことについて、中国側は米国側にさらなる申し入れを行う権利を留保する。」

その後中国側が発表した機体の破損状況を見れば、米軍機の着陸は不時着に近い物だった誰もが思う。それをまるで領空侵犯の様に扱うとは。この理屈で言えば旅客機が不時着を要請し、それに対して許可を出さなければ相手を領空侵犯機として扱うことができる。まさしく何でも有りだ。

しかしながらこの「絶対謝らない国」の言葉は国と国との戦いの一部としてとらえるべきなのではないか、と思う。そこにあるのは善悪ではなく持っているカードの出し合いである。なんといっても機体と搭乗員は中国側にあるのだ。彼らはカードを持っている限りにおいて、それを勝負に使うことに躊躇したりはしない。そして言葉の上では相手の悪逆非道さをなじり続ける。ふと私は考えたりするのだ。えひめ丸が衝突した相手が中国の原潜であったら彼らの反応はどのようであったか。そして近隣諸国を愛して止まない親愛なる我が国のマスメディアの反応はどうであったかと。

ついでに中国発の愉快な言葉を一つ引用しておこう。HONDA,そしてSONYが発表したロボット。これに驚嘆した人は多いと思うのだが、中国の発表によれば長砂国防科学技術大学でその先端技術においついたロボットが開発されたとのこと。名を「先行者」と言う。

その写真だけでも人を笑い転げさせるに十分だが、いくつかのサイトでの扱いは腹部を痙攣させずには居られないほどの破壊力を持っている。この「中国の持つ先端技術の発表」を思うとき笑いとともに彼の国について何かを学んだような気がする。少なくとも「世界水準のロボットを開発した、と発表した国」と思えば彼らの言葉を少し余裕をもち冷静に見つめることができると思うのだが。

しかし私はこのロボットをみて笑ってばかりは居られない。このロボットなみのコンピュータシステムを導入し「世界最高水準の機能を持っている」と堂々と発表した会社から一時給料をもらっていた、というのは事実なのだ。それが笑い物にならなかったのは、ひとえにこの写真のようにわかりやすく無かったからであり、その内容の馬鹿馬鹿しさは勝るとも劣らない。しかし会社という組織、あるいは組織全般かもしれないが、というものには時としてこうした狂気が宿る、ということは覚えて置いて損はないという気がする。

 

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注釈

絶対謝らない国:(トピック一覧)この点において、中国は北朝鮮と双璧と思うが。本文に戻る

堂々と発表した:この事情については「私のMacintosh」参照のこと本文に戻る