題名:カレーの道

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日付:2011/1/13

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カツカレー大盛り@中華飯店 靉龍:仙台[店舗] (2011/9 /14) 量:5+ 味:3 接客:4

 2011年9月14日の夜。一人急ぎ足で歩き続ける。ここは杜の都仙台。何故ここにいるか聞かないでほしい。とにかく来て しまったのだ。

私が泊まっているホテルは西口。目指す場所は東口。定義によってJRの巨大な駅をくぐりぬけなければならぬ。もちろん駅というからには 「東西自由通路」のようなものが存在する筈だがそれはどこにあるのだ。それよりもまず駅はどうしてこうも遠いのだ。途中繁華街を通る。お そらく 七夕祭りの時には巨大なぼんぼりのようなものがつり下げられるのだろう。などと考えながら歩いているとよく食べるチェーン店が目に入る。ああ、あそこに入 れ ば、450円でおいしいものが食べられる。そう思ってもここはぐっと我慢だ。折角遠くに来たのだ。何かいつもと違う物を食べなければ。

ようやく仙台駅にたどり着く。きょろきょろする。そのうち自由通路らしきものが目に入る。そちらに向かいひたすら歩く。ようやく反対側 の出口が見えてきた。こちらはちょっと明かりが少ないようだ。もっともかつての彦根駅のような差があるわけではないが。

駅前にある地図とプリントアウトしてきた地図を見比べる。なんとなくの見当をつけると駅から出て歩き出す。少し広い通りを歩いた後裏道 に 入る。ハングル文字が並ぶ韓国料理屋(と思しきもの)がある。あそこにはいれば、おいしいビビンバが食べられるかもしれない。しかし今は 我慢。まもなく中華料理屋とおぼしき店が目に入る。そちらに歩いて行くが、どうも看板の文字が異なるようだ。プリントアウトしてきた紙と 見比べる。最近文字が小さいと読みづらいのだが、そもそも文字数が違うようだ。地図を見直し別の路に進む。するとようやく見えてきた。

外観

多分ここだろう。どうみても中華料理屋だし、実際中華料理屋だが、私が食べたいのはカツカレーなのである。中には適度に人が居る。

「お一人様ですかー。カウンターにどうぞ」

と言われる。隣にいたおじさんが荷物をどけてくれる。メニューをぱらぱらとめくる。力一杯中華料理屋である。女性が水をもってきてくれ る。私は

「かつカレーありますか?」

と問う。メニューのどこにカツカレーがあるか探すのが面倒だからである。女性はあります、と答える。私は「大盛りありますか?」と問 う。女性は再度肯定する。それではかつカレー大盛りで、と御願いする。

それからぼんやりしながらカツカレーを待つ。ちなみにメニューはこんな様子である。

メニュー

どうみても普通の中華料理屋のメニューの中にカツカレーだけがぽつんと存在している。これは期待が高まるというものではないか。

そもそも何故仙台まで来てカツカレーを食べているか。貧乏な私は最近外食を安くあげることに血道を上げている。ホテルで水を飲めば只 だ、とかホテルの朝食バイキングからパンを2個持って行けば昼食いらない、とか。しかし色々な人の話を聞くと旅行先ではその土地の名物を 食べるのも楽しみの一つとか。しかし私は貧乏だ。仙台に北からといって牛タンを食べるなどは夢にさえ見た事は無い。

この相矛盾する状況をどうやって打開すればいいのか?答えは常にカレーにある。というわけで、旅行にでて外食する時にはGoogle先 生が告げるその土地一番のかつカレー(ただし徒歩で行けるところに限る)を食べることにしたのである。

などと物思いに耽っているがカツカレーはまだこない。店内を見回す。一度疑問を持ち始めると様々な物がきにかかる。あの片隅におかれて いる凧はいったい何のためにあるのか。そこは日本の中華料理屋としか表現できない空間だが、何がそう感じさせるのか。

などと考えているうちに「カツカレー大盛り」が運ばれてきた。

かつカレー

カレーその2

サイズがわからないと悔しいと思い何枚も写真を撮る。大きい。とても大きい。脇にはサラダが、反対側には福神漬けがもられているのだが このサイズもすごい。カツも上面を覆うように広がっている。

ひとしきり写真を撮るといただきます。まずはサラダを食べる。キャベツに少しカレーをつけて食べるなどとは贅沢の極みではないか。あ あ、うれしいなあ。カレーのルーは特に印象がない味だが、この量を考えればその方が好ましいのかもしれぬ。さて、サラダを食べ終わるとカ レー本体である。

広大なカツの下にはそれ以上に広大でかつ厚みもあるご飯が広がっている。皿自体も広大なのだが、いろいろなものが大量に載っているので かき混ぜるのに苦労する。一口食べてはかき混ぜ、一口食べてはご飯とカレーとカツの位置を入れ替える。

満腹中枢が刺激されてはおしまいだ、ととにかく食べ続ける。そのうちカツカレーを味わうというより、山道をひたすら登っている錯覚にと らわれる。途中何度か「これは登頂断念か」という悪寒に襲われる。カツとカレーは両方ともあまり印象がない味なのだが、組合わさるとうま い取り合わせになっていた、と後から考えた。そのときの私はひたすらスプーンを動かし続ける。

最後に「カツ一切れとご飯少々」が残った。そこで躊躇する。子供がよくご飯を一口二口残して固まっている。

「あと一口でしょ!早く食べなさい!」

と怒声がとんでもなかなか食べない。今の私にはあのときの子供達の気持ちがよくわかる。本当に満腹になったときは、

「あと一口」

が果てしなく遠く思える。しかしここで負けては何のカレーの道か。えい、と一口食べ、残ったご飯粒を奇麗にたいらげる。

ああ、全部食べる事ができた。「おいしかった」よりもそちらの感慨の方が先にくる。途中で出してもらったお茶を飲み干すと御会計だ。値 段は1100円。あの量と味を考えれば決して高くはない。

店 の人はとても愛想良くにこにこと見送ってくれる。「また御願いしまーす」とか言われるが果たして私がまたここにくる事はあるのだろうか。 確かに仙台で食べる機会があればここにくるかもしれない。しかしそのときは普通盛りにしよう。もう大盛りを食べて喜んでいる年ではないの だ。よれよれとホテルへの帰路を歩き続ける。


気まぐれカレー@カレーやさん Little Shop[店舗](2011/1 /6) 量:5+ 味:4 接客:4

 2011年1月6日。私は寒風にさらされながら歩いていた。

事情により、来週から職場が品川に移動する。今は広い目で見れば渋谷界隈。特に思い入れがあるわけではないが、ひとつだ け心残 りがあった。会社からあるいて10分ほどの場所にあるカレーやさん。以前何気なしに立ち寄ったことがあり、でてきたカレーの量に圧倒され た。そしてあろう とことかある まいことか私はカレーを残してしまったのである。

3度の飯よりカレーが好き、と公言している男がカレーを残すとはゆゆしき事態だ。この悔いを残したまま渋谷を離れることになっていいも のだろうか、 いやない。是非ともリベンジしなくては。

その思いは年末からずっと私の頭の中に宿りつづけていた。しかし年末年始は肥満のシーズン。実家に帰ると同じく帰省している姉が

”お前がスリムになったのが気に入らない。これを食べろ”

と無理やり糖分をとらせる。家に戻ってきて体重計に乗った私は卒倒しそうになった。昨年の後半、つらい思いをして7kgも減らした体重 が元に戻ろ うとしている。

このような状況であの膨大なカレーを食するなどというのが賢明な選択だろうか。そうだよ、忘れたことにしてさっさと渋谷を離れしまえば いいんだ。何 度自分にそう言い聞かせことだろう。

いやしかし

カレーから逃げることはこの私の気持ちが許さない。体重を増やすのは一瞬、減らすのは何カ月もかかる。しかしカレーを残してしまった男 などと世間様 に後ろ 指さされていいものだろうか。いや、よくない。(私以外誰もそんなことを気にしない、なんてのは些細なことである)というわけで理性的な 判断を全 て振り切りカレー屋に向かうことにしたのである。

歩くことしばらく。ようやく目的地が見えてきた。その瞬間”しまった外したか”と思う。前に来た時は店の前に行列ができていたはずだ が、それが見え ない。まだ正月休みだったか。しかし数秒後その恐怖は解消した。よくみれば2名店の前に並んでいるのである。

 お店の入り口

これが店の外観。昼だけ営業しており、夕方ここを通ってもがらんとしている。そもそも店が存在しているのかどうかもあやしく思えるほど だが、今は行 列がで きるほどの繁盛ぶりだ。写真を撮ると列の後ろに並ぶ。ほどなくして人がでてくる。人がはいる。私が一番前になったので中を覗き込むと

”もうしばらくお待ちください”

と言われる。入口はあけっぱなしになっており、ビニールがカーテンのように下がっている。透明なビニールだから中の様子はよく見える。 待っている人 間からすればこうした配慮はとてもありがたい。

そのうち少し年配(私もいい年だが)の人がお金を払う。どうも常連らしく、店の人と親しげな会話を交わす。片付けが終わると、一名様ど うぞ、という ことで机に案内される。

ご注文は?と聞かれる。店内に張られているメニューには何種類かのカレーが並んでいる。一つを除いて全て700円。なかでも”気まぐ れ”という項目 に”オ ススメ”という文字がついている。前回はこの”きまぐれ”をのこしてしまったのだ。であれば今日頼むものは決まっている。

待つことしばらく。運ばれてきたのが”気まぐれ”カレーである。

 きまぐれカレー

気まぐれカレーその2

カレーの量もさることながら、上にのっている具の量もすごい。いや、感心している場合ではない。

写真をとりおえ、右手にスプーン、左手にフォークを握ると食べ始める。量が多い場合は早く食べなくてはならない。満腹中枢だかなんだか が刺激された らアウ トなのだ。まずピーマンをたべる。次にガンモドキというか何か茶色い豆腐のようなものを食べる。合わせてカレーと御飯を食べる。カレーの 味は

”からい”

というものではないが、食べ終わった後にちょっとぴりっとする不思議な味わいである。カレーを食べる。肉のフライを食べる。この肉はそ もそも何なの だろう。見た時は魚かと思ったのだが、薄さは豚肉のよう、断面を見る限り鶏肉のような気がする。いや、今は考えている場合ではない。食べ る のだ。ひたすらに。

最初はとにかく山盛りなので、カレーと御飯をかきまぜることもままならない。しかし少しずつ食べ進めていくうち、ようやくかきまぜる余 地が生まれ る。ス プーンをつかってかしゃかしゃやる。するとまだ残っているカレー+ご飯の量の多さに圧倒される。具はだいぶ減ってきたが、まだ大物の”か らあげ”がいくつ も残っている。

腹具合を確かめる。前回はこの時点(どの時点だ)でかなり苦しかった思いがあるのだが、今日はまだ余裕がある。いけるかもしれない。と いうわけでカ レー+ご飯のほうから片付ける。ぱくぱく。少し苦しくなったがまだ大丈夫。最後に唐揚げを食べれば完食だ。

しかしいつものことであるが、苦難は最後に残っている。唐揚げは”申し訳”についてくるような貧相なものではない。立派なのがごろごろ しているのだ 。一つ食べる。胃にずーんとこたえる。もう一つ食べる。ずーん。残りは3個。しかしはたして食べきることができるであろう か。気分は箱根駅伝の5区、往路最後の山登りである。まだカレー+ご飯もいくばくか残っている。とにかくそれを片付け、最後の3個に挑 む。ああ、後ろから は”満腹”という名前の山の神が迫ってくる。なんとか逃げ切らなくては。食べるぞ。ずーんずーん。はあはあ。いや、ここで水を飲んだら負 けだ。ええ い、最後のずーん。

 完食

というわけでめでたく完食。お財布を取り出すと700円渡す。これだけ食べて700円はどう考えても安い。

店をでると若いカップルが立っている。あの女性のほうもこのカレーを食べるというのだろうか。私にとってはこの”気まぐれカレー”が限 界のようだ。と はいえ私の直前にオーダーしていた人は、”スペシャルの大盛り”を注文していた。スペシャルとは気まぐれ+チーズと何かである。ああ、カ レーの道 は遠い。

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注釈