日付:1999/3/5
32章:new Members今回の合コンのメンバは女の子側はともかくとして男の子側はかなり新しい顔ぶれとなった。
一人は前にも書いた私の新しい職場にいるTRである。彼は幼い頃からみていた吉本新喜劇系のギャグを得意としている。もうひとりはTRの同期で私も少し仕事でつきあいがあるLuckyである。彼の実力はこの時点では全く未知数であった。
さて土曜日だと言うのに出勤した私は予告通りよれよれになりながら待ち合わせ場所であるところの巨大丸栄マーク前についた。
さて今回も例によって私は10分前に待ち合わせ場所でたっていた。本日の本は「河童、ある阿呆の一生」である。この本に収録されている「歯車」は気分が落ち込んだ時に読めば軽い分裂症を引き起こすに十分なくらいの名作である。
さていつも待ち合わせ場所では、「歯車」を読んでいなくてもいろいろな脅迫観念におそわれる。一つは日時が間違っていないかということ。次のは場所を間違えていないかということ。3番目が他のメンバが同じ間違いをして別の日時に別の場所に行っていないかということである。
その不安を解消する唯一の方法は誰かが私の視界内に現れてくれることである。今回私を強迫観念から救ってくれたのはLuckyであった。
彼はくるなり、「今日はどーもどーも」と言い出した。彼は今回の合コンの女の子側の幹事は私の彼女であると思っていたらしい。彼の言葉に依れば今日は彼は合コンそのものよりも私の彼女をみれることのほうが楽しみであったという。そんな機会があれば私にとっても興味深いものになるに違いない。
さて出勤後の私はよれよれであった。あとのメンバはどうしたのかなと思っているうちに、同じく壁にひっついて前回(というかつまるところ中山美穂と会ったのはこの一回だけなのであるが)会った犬山がいるのを見つけた。彼女は同時に私に気がついたようである。中山美穂と同じ位置にいるにもかかわらず彼女は私に気がついていないようであった。
なんだかんだと言って挨拶を交わしているうちにTRが到着した。人数のそろったわれわれは例によって例のごとく六本木浪漫邸に向かうことになったのである。
さて例によって例のごとく到着したのはいいが、今回案内された席はいままでで最低の立地条件であった。まず椅子の席であることと、もう一つは階段の下なのである。まあこういうこともあらあなととりあえず気にしないことにした。いまさら場所を変えろといってもどうなるわけでもない。私が適当にほれほれと指図して決まったのが次の座席である。
この座席で私の右側は通路である。従って中山と私の距離は会話を許さない物であった。今回の合コンは最初から私は勘定外であるからこういう場所でもなんの問題もない。というか正確に言えば願ったりかなったりの座席である。
さて適当に飲み物など来て歓談の時間となった。自己紹介は簡単だったのでお互いのプロフィールなどはこの時点では判らない。私は唯一の選択肢である隣の韓国としゃべっていた。彼女はなかなかユニークな女の子で、一度つとめたが退職して一年韓国に留学していて、今は行政書士の資格をとるため勉強中なのである。
などと言っている間にいきなり花火タイムに突入した。最初スロースタートであった我々の会話に一息をつかせるのに絶妙のタイミングであった。花火タイムが終わると、たいだい私と韓国、あと4人という組になって盛り上がり始めた。
私は韓国とまじめな話をしていた。だいぶ前に「合コンでまじめな話をするのは間違いだ」などとしたり顔で書いていたような気がするが今回は間違いではなかった。彼女は自分を不敗の立場に置くような人では無かったのである。話題は「韓国の構造的問題」と「科学と幾何学の違い」についてであった。彼女からの質問に対して私はそこらへんの本から切って張ったような内容を答えた。幸いにして彼女から合格点をもらえたようである。私は彼女からの賞賛の言葉を聞いてそっくり返らんばかりに増長していた。
次に彼女と話したのはドラマの話題である。こうなると私の返答は決まっている。私はドラマをみることができないのである。
理由は簡単だ。私がみたいドラマというのは「一日何もなかった。今日も良い日だった。明日も良い日だろう。さあ寝よう」という感じのドラマである。ところがたいていの連続ドラマというものはそうならない。うちの祖母の名言を借りよう。「かならずみんなが困った方に向かう」のがドラマなのである。
女友達と食事をしていると必ず自分の彼女とでくわす。へらへら一人で歩けば浮気をしている彼女とでくわす。それが誤解であったとしても今度は彼女に誤解される。妙なうわさが立って誤解が深まる。and so onである。
私は幼少のみぎり、ウルトラマンをみるのも心配だった。ウルトラマンと怪獣が向かい合っている。いきなり怪獣が消える。絶対後ろに回るにきまっているのにウルトラマンは「ジュワッ、ジュワッ」などと言ってうろちょろしている。そういう場面になると私はタンスの陰にかくれて「あぶないぞ」と一生懸命教えていたそうである。
かくのごとき小心者で心配性の私が連続ドラマなどみれるはずがない。などという理屈を得意になって説明していたら彼女は「小心者」とポソッと言った。ここでさっきかせいだポイントを総て使い果たしてしまったようだ。
増長しきった雰囲気からいきなり「さてどうしたものか」と思っていると向こうのほうで多分Lucky発案だと思うが「山手線ゲーム」というのが始まったので私は救われた気分になってそのゲームに参加した。
ルールは簡単である。ある人がテーマを決める。(例えば「歌手の名前」とか)そして右回りにどんどんそのテーマにあてはまる名前を挙げていって詰まった奴、あるいは前に挙げられた名前と同じ名前をいったやつがが酒を飲むというルールである。これが結構な盛り上がりをみせておもしろかった。ゲームが進むにつれて酔いがすすみ、みんなよれよれになるのでよけい簡単な質問でもこけまくって話がおもしろくなるのである。
ゲームでさわぎながら考えた。こういう感じの合コンもよいなと。こういう風に盛り上がるのは本当にひさしぶりであるという気がする。やはり新しい風を吹き込んだだけのことはあるわけだ。
さてひとしきりみんな均等に負けた後で、時間となり我々は浪漫邸を後にした。均等に負けたということは我々はみんな酔っぱらっていたということだ。表にでて2次会の相談となった。韓国は豊田なので一人で先におかえりだ。残る5人はLuckyの先導で2次会の場所へ向かうことになった。
さて外は3月だというのに妙に寒かった。ぶるぶるふるえながら我々はLuckyいうところの飲み屋を探したのだがいつまでたっても見つからない。そのうち「まあどこでもいいや」ということでどっかの飲み屋に入った。配置は以下の通りの集団見合いパターンである。
2次会では最初適当に会話が進んでいたが、そのうちLuckyが静かになったなと思ったら彼は完璧に寝ていた。「彼は限度を超えると突然死にますから」とTRが言っていたとおりであった。私もそうはいいながら完全に放電状態である。こうなると総てはTRの双肩にかかってくるわけだ。そして彼はこういう状況でも事態をちゃんと切り抜けるだけのユーモアのセンスを持ち合わせているのである。
彼の出身は四日市であり、文化圏からいえば名古屋よりは関西に違い。従って吉本系のギャグに通じているのである。従って話題は吉本系のギャグの話と「最近視た泣ける映画」という2本立てて進んでいった。
さて楽しい会話もいつしか時間となった。女の子二人は犬山方面。Luckyは車で来ていたのである。寝ているLuckyをたたき起こして中山美穂が「あたし車運転できますよ」と言ったので相当酔っぱらっていた私たちは「じゃあよろしく」などと言ってLuckyを女の子二人にたくし、二人でタクシーにのって寮に帰った。タクシーの中で聞いたTRの感想は「いやー楽しくていい子たちでしたね」であった。私は彼に中山美穂の電話番号を教えることを約束し、今後の交渉をまかせたのである。そして寮に帰った我々は安らかな眠りにつくことになった。
翌日目が覚めて考えた。Luckyと女の子二人は果たして無事についただろうかと。仮に中山が運転して犬山まで帰ったところでLuckyはどうすればいいいのだろうか。それでなくても3人とも結構のんでいたのに車でかえらせたのはまずくなかっただろうか等など。
もんもんとしているうちに部屋の電話のベルがなった。中山美穂のお礼のお電話というやつである。彼女は簡単に礼を述べた。私は「昨日ちゃんと帰れた?」と聞いたら彼女は「結局Luckyさんが”星がきれいだねえ”とか言いながら運転してかえりましたよ」と言った。何なんだと思いながらほっと胸をなで下ろした。
「また何かやりましょうね」という言葉とともに電話は切れた。あとはTRにおまかせというやつである。そして今回の合コンは楽しくてよかったなあなどと感慨に耽っていた。
そのとき誰かが扉をノックした。でてみればHRである。彼は「この部屋はきたねえな」と言いながら抹茶ケーキを手渡してくれた。そして言った。「決まったよ」
それから彼の部屋に行って半年も冷蔵庫の中にほおってあって味の変わったビールを飲みながら、抹茶ケーキをつっついて話を聞いた。これほどおもしろくない話も少ないだろう。12月5日に知り合って、1月の最初にはプロポーズ。週3回のペースでデートして7月の9日に結婚式。
そのとき心のなかで決めた。この物語の最後はそこにしよう。
中山美穂:この女性がなぜこの名前で呼ばれるか、については、HappyDays1-3章参照のこと。本文に戻る
私はドラマをみることができない:(トピック一覧)このせいだけではないが、芸能人関係の人名もさっぱりわからない。本文に戻る