題名:私のMacintosh

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日付:2001/4/21


26章:Shaky Days

日本にはGolden Weekという美しい伝統がある。4月の終わりから5月の第一週は休みなのである。しかしその前私を震撼させるニュースが飛び交い始めた。すなわちiBookのモデルチェンジである。

iBookという名のパソコンが初めてが登場する前、「これこそが待ち望まれていた小さなPower Bookではないか」という多分に願望が混じった観測が飛び交った。そして発表されたのは巨大な団扇のようなiBook。話題にはなったがあまりにも巨大すぎる。ある雑誌の表現を借りれば

「そのスタイルから、女性タレントと雑誌の表紙を頻繁にかざる。ただし、女性タレントのウェストはほとんどの場合iBookで完全に隠される」

という状況である。

それが理由かどうか知らないがセールスは今ひとつ盛り上がらず、そしてそのモデルチェンジはかなり前から噂されていたのである。そして5月1日に何か新機種の発表があるらしい、という情報が伝わるのと前後して新iBookの確度が高いと思われる情報が出だした。そしてそれはPowerBook G4ことMercuryが発表される前に存在していた噂-NF1の要素をたぶんに含んだものであった。すなわちG3を搭載し、比較的小型であると。

米国時間の5月1日は日本では5月2日。その時私は旅行先に居た。そしてそうした私の浮気頃、あるいは控えめに言って心の動揺はPB2400の知るところとなったのである。そして彼(もしくは彼女)は旅行中において、いきなり起動不可能の状態に陥った。

その時の様子は別の文章を読んでいただくことにしよう。あれこれの苦闘の後、PB2400のご機嫌が治り、初めて私は心穏やかに電気屋の店頭でインターネットに接続されたマシンをいじることができるようになった。そして観たのである。新iBookを。私は発狂を押さえるのに必死であった。だめだ。第一にPB2400は聞いている。第二に経験から学ばなくてはならない。新製品の1stロットには必ず問題があるのだ。数ヶ月後には、おそらくスピードがあがるだろう。そしてカラーバリエーションも増えるに違いない。ハードディスクにキーボード交換サービスが始まるまでにも少し間があるはずだ。そして何よりも私はMac OS Xに移行したいと思っている。OS Xプリインストールモデルが発売されるまでにはまだまだ月日が必要なはずだ。落ち着け。落ち着け。

 

そんなことを言い聞かせているうちに新iBookの展示が解禁される日がやってきた。その日某ビルの7階まで一気に上がると小走りにMacintosh売場に急ぐ。あるではないかあるではないか。2台展示されているiBookにはいつも誰かが触っている。ここはおとなしく順番をまとう。

私の番が来るとあれこれさわり出す。本当の事を言えば、Mac OS Xを搭載してどの程度のスピードがでるか試したかったのだが、乗っているのは両方ともOS9.1。しかしその動作は大変快適だ。大きさもちょうど良いのだが、特にそのキーボード。実にしっかりとしていて、未だにDuo280cのぐにょぐにょした感触を覚えている私としては、またもや即購買の衝動を抑えるのに苦労する。落ち着け落ち着け。

さて、ネットで情報をあさると、PBG4の時には賛否両論だったのが、今回の新iBookは絶賛一色である。おそらく少なくとも日本では爆発的に売れるに違いない。次の機種はPBG4にほぼ決めていた私は直角の方向転換を行おうとしていた。

それとともに一つ以前から買いたいと思っていたものを買うことにした。Boblbe-eのバッグである。これはプラスティックのシェルを持っており、華奢なPBG4には必須と思っていたのである。iBookははるかに頑丈そうだからあるいは普通のデイパックでいいのかもしれない。しかしゴールデンウィークが終わったとき私は体の各所に筋肉痛を覚えたのである。特に腹筋が痛い。どうやらMacintoshを抱えて長い旅をするのが思いの外体に応えるようになったらしい。デイパックの中ではMacintoshは下のほうにあり、そして私の体を後ろにひっぱる。対抗しようとすると腹筋が痛くなるとかそういう理屈ではなかろうか。対するにこの新しいバックを使えば高い位置にMacintoshを保持することができるのである。

旅行から帰った翌日に私はこのバッグを買った。今まで何度か買おうかと思ったが値札をみて二の足を踏んでいたのだが、もう普通のバッグでMacintoshを持ち歩くのはつらすぎる。いかに高くても効果が僅少であっても、少しでも改善がなされるのならばそれを断行したい気持ちである。買ってさて、どんな調子であろうとMacintoshを突っ込んで担いでみるとこれが全く重さを感じないかのようだ。すばらしい。担ぐ位置をかえるだけでこれほど違う物か。シェルパとか巨大な荷物を背負ったおばあちゃんとかが高い位置に荷物を置くわけだなあ。本当の事を言えばデイパックより容量はだいぶ小さくなったのだが、この軽さには抗しがたい。かくして私はMacintoshより前に毎日かつぐデイパックを更新することになった。

さて、かくのごとく私のMacintosh生活は変化の予感を感じつつ静かに過ぎていく。iBookがようやく店頭にも出回るようになり、それに触るにも

「あのやろう。とっととどきやがれ」

と憤怒の炎を燃やさなくてもよくなったころ、またしてもMacintoshが何を押しても立ち上がらない状態になった。何度かあれこれのボタンを押したあと、先日観た

「パワーマネージャーリセット」

を試みると見事に立ち上がる。しかしこれがどこまで持つのかは偶然の神さまだけが知っていること。後数ヶ月。あと数ヶ月で良いのだ。なんとかもってはくれまいか。それまで私にできることは頻繁なバックアップくらいのものだが。 

さて、そんなことをしているとき、妙な情報が流れてきた。台湾でMacintoshの製造を請け負っている会社が株主総会で、将来のMacintoshのラインナップ及び製造台数について言及したらしい。

これは恐ろしい出来事である。以前Appleからの発表前に自社の製品が新しいMacintoshで使用される、と発表し激怒をかったメーカーもあったのだ。それをラインナップに製造台数付きでばらすとは。その内容はiBookにカラーバリエーションが増えるとのこと、及び14inchディスプレイを持ったiBookも製造する、というものである。

これに対してはAppleから即座に否定するアナウンスがでた。すなわち現在のiBookの計画からみてこれは正しくないと。表にでたのはこの声明だけだが、我々の目の届かないところでどのようなやりとりが行われたかは想像するだに恐ろしい。では彼らは全く嘘を言ったのか。それもちょっと信じがたい。では何がおこったのだろうか、などと首をひねっているうちにそれに繋がるような情報がでてきたのである。

iMacは2月東京において新柄2機種が発表されたが、売り上げは完全に沈滞化している。そのうち次がでるだろう、でるだろうと言われ続けてはいたがいつまでたっても姿を見せない。一時噂された17インチディスプレイを持つiMacはおそらく実際に製作されたのだろうが遂に発表されることは無かったようだ。そうしているうちに

「Appleは液晶ディスプレイだけをラインナップとして使う」

とかなんとかいうCEOの発表があり、外付けディスプレイは液晶だけになった。となると誰もが考えるのは「次のiMacも液晶になるのかしら」である。しかしそれでiBookとの差別化が図れるのであろうかとは(これまた)誰もが考えるところ。そこに某サイトに次期iMacの予想図が掲載されたのである。

それをみた瞬間私は「まずい」と思った。iTuneを使うとMacintoshをジュークボックスとして使えるとは以前に書いた話しだ。ではその用途専門のMacintoshを買おうかとは何度か考えたのだが、常にひっかかっていたのが「ではキーボードはじゃまではないか」ということなのである。本体にディスプレイにキーボードを付けるとどうしても設置面積はかなり大きくなる。なんとかぽんぽんと画面を押すだけで操作できるようにならないものか。

さて、発表された想像図を信じればそれは、四角い小型の筐体の上に液晶ディスプレイがついたスタイルである。おまけにディスプレイは取り外しが可能でタッチセンサーがついているという。これならばJuke Box構想にもってこいだ。DVDプレーヤーとしても使え、またインターネットをちょこちょこ触ることもできそう。この液晶のサイズが14インチとすればあの「間違った発表」との整合性もとれるではないか。Oh my , これがもし本当ならばどうしよう。我が家には既に3台のMacintoshがあるのだ。おそらくは7月のMac World Expo at New Yorkで発表があるはずなのだが、それがくだんの発表で製造メーカーを変更することによる遅れる、なんて筋書きはあるまいな。そんなことを考えている間に、複数のサイトが

「あの絵は全くの嘘だ」

という情報を掲載し出した。例によって例のごとく真実は発表が行われるまで解らない、ということか。

ううむ。このような状況では私のMacintoshライフは一体どこへ向かっていくのか。OS Xの製品全てへのインストールは予想より早く5月に始まった。とはいってもまだあいかわらずの品質だし、まだ一皮むけるには時間がかかろう。しかしそれも遠からず私を移行に駆り立てるようなものになりに違いない。結論は一つ。とりあえず夏の間はおとなしくしていましょう、である。しかし親愛なる2400はこの夏を無事に乗り切ってくれるであろうか。そうこう考えていると、バッテリのもちが悪くなってきていることに気がつく。朝5時40分に電源を入れ、品川に着くのは6時50分すぎ。これまではそこまで余裕で持っていたのだが、それが怪しくなってきた。おまけに昔は

「今予備電力で動いています。早くスリープしてください」

みたいなメッセージがでていたのが、最近はそれも何もなく使っている途中にいきなり電源が落ちる。どうやら予備電力を蓄えるべきバッテリが完全にお亡くなりになってしまったということではないか。そしてMac World Expo New Yorkを目前にした頃液晶が時々突発的に明るくなることに気がつく。明るくなると言うことは暗くなるということだ。果たしてこのきわどいレースはどちらの勝ちになるのか。新機種が新しいMac OS Xと共に手にはいるのが先か、あるいは2400が、、、、 

 

などともんものとしている間にApple Expo New Yorkはやってきた。Expoはいつもその一週間前くらいが一番「希望的な観測」がでる時期のようだ。「液晶iMacは確実」とか「デスクトップは一新」とか「PowerBookも含め全機種一新か」という見出しもあったくらいのなのだが、その日が近づくにつれ

「iMacは結局今のまま」

とか

「新しいとしてもPower Mac G4とiMacくらい」

とかいう言葉が飛び交う。これはあまり新しい物がでないのだろうか、と思っていると、キーノートを数時間後に控えた7月18日の午後、Macお宝鑑定団のサイトに

「アスタラ・ビスタ・CRT」(原文はアルファベットにて表記)

という一行メッセージが表示された。このサイトに掲載される内容は過去の例からして確信度が高い。となるとやはり新しい液晶を使ったiMacがでるのだろうか。

そんなことを考えながら眠りにつく(キーノートは午後の10時から。その時間私はいつも寝ているのだ)翌朝目覚めるとさっそくサイトにアクセス。しかしそこにあったのはなんとも期待はずれの内容だった。

iMacは確かに改訂された。ただしそれは縮小する形である。CPUは早くなかったかもしれないが、Tokyoで発表されたFlower Powerともう一つの柄はあっさり消えることになった。そしてPower Mac G4は確かに変更されたが、それは事前に噂されていた

「全く新しい筐体」

ではなく、一週間ほど前に某サイトに掲載され「これは偽物だ。こんな筐体のわけがない」と言われていた「現行筐体の小改造」である。つまりハード関係の大きな発表は来年までお預けというわけか。しかしそこまでこの2400が持つものだろうか。

 

かくしてこの日のキーノートでの一番大きな発表は、某サイトの表現を借りれば「Mac OS Xのバージョンアップ」だったりする。10.1と称されるそれは確かにいくつかの問題が解決されているようだ。しかしその発売は9月。となると私に残された選択肢はとてもとても狭くなってくる。というか一体どうすればいいのだ。その日は蒸し暑くどんよりとした夏の日。私もなんともすっきりしない気持ちになるのは天気のせいばかりとはいえないようだが。

等と考えている間に私の情熱は変な方に向かっていたのであった。 

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注釈