題名:私のMacintosh

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日付:2001/12/10


30章:iBook-ADSL

思えば私が初めてブロードバンドへの移行を考え出したのはいつであったか。当時はケーブルTVに加入するつもりで、

「ケーブルと一緒にインターネットも申し込めばいいや」

と考えていたのである。そしてその後話題に上り始めたADSLという4文字からなんとなく距離をとろうとしていたのだが。

それを一変させたのがYahoo BBの登場である。その値段はあまりにも安かった。月額2280円である。それまでISDNのつなぎ放題を3000円以上で提供し、それより早いADSLを5000円台で提供していた他の業者、特に

「愚かな民どもに我々やんごとなき身分のものが特別の慈悲をもって設定した価格で高速回線を使用させてやろう」

と考えていただろうNTTは仰天したことだろう。

しかし私はまだなんとなく距離をおいてそれをみていた。こうした新しいサービスというのは少し時間をとり、一般ユーザーの声が聞こえるようになってから選択したほうがいいのではなかろうか。特に相手があのソフトバンクだけに。

さて、Yahoo BBのサービスが始まりインターネット上のサイトでもいくつか評判をみかけるようになってくる。なんのかんのと不安がささやかれていたがそこそこ使える、という話だ。そして8月2日の朝私は決意したのである。何も考えずに申し込んじゃうぞ、と。

2度ほどメールのやりとりがあると「あれこれの手続き待ち」状態にはいった。いつつながるかな、いつつながるかなと楽しみに待つ日が続く。しかしなーんの音沙汰もない状態が続く。そのうち電話局ごとの開設日程情報というのがサイトで確認できるようになった。私が住んでいるエリアは何月何日に開設予定とかでているのだが、その期日がどんどん後ろにのびていく。しまいには11月末とかになってしまった。これはあまりにあまりではなかろうか。私はまたある朝(朝は思考能力が低下しているから、衝動的な行動をとりやすい)決意した。他の業者はそりゃ1000円くらい高いかもしれないけど、とにかく使えなくてはしょうがないんだから。Yahooを解約して他をさがそう。

解約手続きのボタンを押すと「本当に解約していいんですか」とか「また一からやりなおしになりますよ」とかとにかく何度か翻意をうながすような画面が続くが、ええい、うるさいとばかりに押してついには解約をした。しかし数日後私は考えなおしたのである。そりゃたしかに開局は遅いかもしれないけど、この価格差は結構大きいや。やっぱり申し込み直そう。順番が一番後になっちゃうけどいいか。

そうするとおそらくは自動処理されているのだろう。最初の時と同じく手続きを促すメールが届く。それに従い本申し込みを行おうとし、あれこれのボタンを押す。すると

「すでに登録されています」

という画面がでる。

何だ?この前たくさんの警告文書とともにキャンセルしたではないか。もしかしたらあのキャンセルはきいていなかったのだろうか、などと虫のよいことを考え自分のステータスを確認する。するとでてくるのは

「ただいま申し込み取り消し処理中です。処理が終わったら連絡します」

とかいう画面である。

ふーん。そりゃまあものすごい数の申し込みがあって手続きに時間がかかってるのだろうけど、取り消しになんでそんなに時間がかかるのかなあと思う。そして知ったことはとにかくこの取り消しができないことには申し込みもできない、ということなのだ。一度メールで問い合わせてみたらそう言われた。

これを書いている今現在、取り消しからおよそ2ヶ月はたっているのだが、私のステータスは相変わらず「取り消し処理中」のままである。これで私は完全に見切りをつけた。他の業者を捜そう。

開局まで延々と待つのはもう飽きたから、現在すでにサービスが始まっているところを探す。すると三つあることがわかった。そのうちNTTの資本が入っているところはもちろんパスである。残る2社のうちあまり名前を聞かないが、初期費用がやすい方にした。もちろんマイナーな業者だから今後に多少不安はあるが、まずはもののためしというやつである。申し込みをしたのが10月の27日。翌週の金曜日、11月2日には

「ADSL適合結果のご連絡」

というメールが届く。題名をみて私は反射的に

「ああ。適合結果がだめで、これは申し込み取り消しの連絡だ」

と思った。なぜかと言えば、採用の面接などをうけて、その段階がクリアだったら

「次回面接のお知らせ」とかいう題名のメールが届き、そっけない

「面接結果のお知らせ」

だったらそれは落ちた印だ、というトラウマがあるからだ。もしこれがよい知らせだったら「開通日時のご連絡」とかになっていそうではないか。

などと考えながら文面を読み始めると問題ない、という内容である。少し拍子抜けする。開設は11月8日の木曜日。それまでにモデムが届くとなっている。一人暮らしの私にとって荷物の受け取りというのは常に困難な事項なのだが、不幸にして届けてもらう時間の指定も不可能なようだ。まあなんとかならあなと思いその日を待つことにする。

 

家に帰ったとき「お届けにあがりましたが不在でした」という紙がはってあったのは6日の火曜日のことである。さっそく黒猫ヤマトに電話をする。今日中に再配達してくれるとのことだから、わくわくと待つ。きっとあれはADSL用のモデムに違いないのだ。

私の就寝時間は9時半なのだが、その時間になってもまだこない。いつくるかいつくるかと思っているものだから、お風呂にはいる時間もいつも以上に短くしているというのに。しょうがない。思えばあの電話をうけてくれた女性は信じられないくらい頼りなかったなあ。仕事で私に電話をかけたきた人間も同じくらい頼りないという印象をうけるのかな、などと思いながら寝床につく。そこからも外で人の足音や、車の物音がするたびにはねおきるのだが、何も起こらない。

翌朝また配達の電話をする。米国にいたときはとにかくこうした荷物の受け取りには悩まされたものだが、日本はまし、と思っていた。やはりそれは幻想にすぎないのか。しかしそこまで悲観的になることはなかったようだ。今度はすんなりと届いた。すでにして遅い(私にとってはだが)時間なのだが、思わず箱をあけて結線を始める。今つなごうが電源をいれようが開通は明日なのだから何の意味のないのだが、思わず期待が高まる、というやつである。

さて、翌日。私はくだらない会議に出席しよれよれになって帰宅した。普段だったらこのまま無意味に回り続ける頭をかかえながら、布団の中で眠れない夜をすごしかねない状況だ。しかし今日は違う。私にはやることがあるのだ。へへへえ。なんとかつないでしまうぞん。

そう決心するとさっそくあれこれの設定を始める。しかしここで私はこの作業が予想通り結構面倒なものであったことを認めざるを得ない。いや、これは別にADSL回線のせいではない。接続自体はマニュアルを適当に読んで、なんだか

「こうなってるんだろう」

とおもいこんであれこれやっていったら思いの外簡単につながった。これでいよいよあの

「ぴーひょろひょろひょろぎゃぎゃぎゃ」

という音とおさらばし、何かと言えば勝手にInternetにつなぎにいくことが問題だったOS Xを快適に使用できるのだ。公称1.5Mbpsの速度は、今までの56kbpsと比べればまるで飛ぶように感じる。しかし問題は大坪家内のLAN環境にあった。

先日無線LANを導入した際にルーターというものを買ったということは前述した。これは実にあっさりとつながったのだが今度ADSL用に届けられたものもADSLのモデム+ルーターの機能を持っているのである。ルーターが二つだ。細かいことは別の文章でかこうかと思っているのでここでは述べないが、ちょっと言うと一つの家の中にしきりやが二人いるような状態である。果たしてこの二人が勝手に仕切ろうとしている状態で問題はないのか、あるいはどちらかにしきりやの座を降りてもらわなくてはならないのか。またやっかいなことに工場出荷時状態ではこの二人は

「この家の範囲はここ」

という問いに対して異なった答えを出すのである。これまたどうしてくれよう。

もんもんと悩んでみるのだが、どうにもぱっさりとした解決策が見つからない。一応頭の中に描いた配線図に従ってiBookが無線LAN経由でADSLで接続できるようになったのは確かである。しかしそれと同時にもう一つあったはずのルーターにはアクセスができなくなり(動いているのは確かなのだが)そしてPowerBook2400とLibrettoはがんとしてLANでの接続を拒否しだしたのである。

うげげげと思いあれこれやってみるがなかなか事態は改善されない。そのうちなんとか回避策を考えとりあえずそれですませることにする。それよりも新しいADSL環境をご機嫌に使ってみたいではないか。以前から「常時接続になったらあれをやろう」ていたことがあるのだ。iTuneについてくる「インターネットラジオ」である。

これまでにも何度かインターネット上でFootballの中継などを聞いたことはある。しかし5分8.5円をはらってまで音楽をかけっぱなしにしようとは思わない。しかしADSLになってしまえばそんな心配とは無縁の世界が広がっている。音質のよい放送、それにこれは重要なことなのだがあの聞いているといらいらするような日本語でのダベリとは無縁の放送を聞くことができるのである。

さっそく目に付いた適当な局を選んでみる。すると見事に音が鳴り始めた。それだけで私はご機嫌になる。しかしまだ問題は解決したわけではない。今度は自分が気に入る局を探し出す必要があるのだ。トライすること10局あまり。ようやくちょっと古めでLightなRockを流してくれるところを見つけた。ステレオから音を出しているのはTwin PowerMacの片割れ。G4@350MHzで放送を受信し、音を流し続ける。ああなんて幸せ。これだけでも2980円の元はとったかもしれない。

これでADSL環境がほぼ使えそうだというめどがたった、と自分で勝手に決めつけると今度はあれこれの手続きを始める。まずは電話回線の種別をプッシュ回線からダイアル回線に切り替え。今ではたいていの電話機がプッシュであるにもかかわらず偉大なるNTTはそれに対して月400円の課金をし続けているのである。確かプッシュ回線が世の中にでたときには

「これで電話機が電卓代わりに使える」

とかいう付加価値もあったように覚えているが、今更電卓がなんだというのだ。唯一のメリットはボタンを押してから相手につながるまでの時間が短いことだが、私は滅多にデータ通信以外で電話はしない。そのデータ通信がADSLになったからにはこれ以上NTTに金を貢ぐいわれはない。私は実に爽快な気分で116に電話し回線種別を切り替える。なんでも工事費が必要だとかいうことだが、そんなもの半年もせずに元が取れよう。

次には市内電話割引サービスの解約だが(これもADSLに変えた今となっては無用なもの)こちらもあっさりと終わる。さてそうなると私は今まで目を背けていた問題に再び立ち向かおうとする。しかしとにかく2400とLibrettoはつながらない。最後には頭にきて、Librettoを無線LAN経由の接続に切り替えた。理由はさっぱりわからないがこれでLibrettoはつながってくれた。これは私にとってもう一つの困難の解決にもなった。今まで一番うるさいマシンは2400だったのだが、それをRAMディスクで動かせるようになってからは、一番うるさいのはこのLibrettoなのである。有線のLANで接続する限り布団の近くにおいておく必要があり、実に耳障り。しかし無線でつなぐのであれば、部屋のどこにおいても大丈夫。実のところ隣の部屋でも大丈夫だと思うのだが、とにかく私は以前以上に惰眠をむさぼることができるようになった。 

残った2400はAppletalkではつながるのだが、TCP/IPではがんとしてつながろうとしない。もうこれでいいや、とあきらめては見たがこれでメデタシメデタシとはならない。愛しのiBookだが、買った直後に気がついたことがあった。トラックパッドがなぜか半分めくれかかっているのである。いや、より正確に書こうとすればめくれかかっているというよりは浮き上がっているのだが、いずれにしても隙間に何かつっこんでしまったら一気にめりっといきそうである。最初はしらんぷりをしようとしたのだが、どうにも気になる。しょうがないから日本で3カ所しかない対面修理をやっている場所に持っていくことにした。

この対面修理というのは実にご機嫌な制度で、修理に送ったはいいが、故障が再現しない。「問題なし」という紙と共に送り返されて来たが、故障は依然として存在している。今度は怒りと共に修理に送る、などということはないから気楽だ。おまけにトラックパッドは誰の目にも明らかなほど浮き上がっている。相手は「数時間預かっていいですか」と言った。私はどうぞどうぞといって会社に戻る。しかしその数時間後電話がかかってきて知らされたことは

「これは売り出されたばかりの機種でまだ対面修理はできません」

ということなのだ。えー、そんなー。iBook全機種修理対象だって書いてあったじゃないかあ、などといっても空しいこと。私は終業後にiBookをとりに戻った。しかしその前からだかあるいはその時からだかよくわからないのだが、スピーカーから音がでなくなった。特に不便はないのだが実家でモデムを使い接続するときに

「ぴーひょろひょろひょろ」

が聞こえないのでちゃんとつながろうとしているかどうかわからないのが難点である。しかし今の私にとってこのiBookを手放すことは一日であってもさけたい。修理にだせば10日から2週間かはiBookなしの生活を強いられるわけだ。しょうがない。何ヶ月先か知らないが対面修理の対象になるまで待つとするか。

 

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注釈