私のMacintosh

五郎の 入り口に戻る
日付:2014/12/11


46章:ダークマターの恐怖

これを書いているのは2014年の12月。もうMac Book Airを4年使い続けていることになる。そう考えるとここのところPCの処理能力向上は一時ほどではなくなったのだろう。以前は3年もすると「なんだこの非力さは」と思ったものだが。

2010年購入のMac Book Airを使っている。当時はお金があったので256GByteのSSDつきのものを買った。いつか読んだ言葉だが

「世の中には2種類の人間がいる。パソコンの記憶容量が足りないと悩んでいる人と、パソコンを使わない人だ」

は真理であり、いつのまにか残り容量が10GBを切る日が訪れた。

歴代のあれやこれやを全てメインのPCにおくのが私の主義だが、そうも言っていられない。あれをバックアップし、これをサーバーに移し、となんとかやりくりしてきた。時々「もう買い換えようか」と思うのだが、第一にお金がないし、第二に

「新しいMac Book だかAirだかわからない12インチの製品がでる」

という噂は根強く残っている。どうせならその新しい機種に買い換えたい。それに記憶容量以外は全く問題なく動いているものを捨てるのも勿体無い。

幸いMacBookAirにはカードスロットがあるのでそこに128GByteのカードを追加し避難先に使うということまでやった。iPhotoの写真データが丁度100GByteくらいなので

「これを全部外付けカードに移せば、容量が空くね!」

とわくわくしながらコピーし始める。しかしなぜか「空容量がたりません」と言われる。何かがおかしい。iPhone Libaryの容量はどう考えてもカードの容量より少ないはずなのに。思えばこのころから何かがおかしかったのだな。

しかし「まあいいや」と思いiTunesのファイルをそちらに移す。それで30GByteくらいあいたのはそう遠い過去ではないのにもういっぱいだ。しょうがない。まだ動かせるものはないか、と開発用のXCode関連ファイルをそちらにうつし先日久しぶりに

「空容量:20GByte」

という文字を見、これでしばらく大丈夫だろうと思ったのである。

ところが

ほれほれ使っていると「ハードディスクの残り容量はほとんど0です」(うろ覚え)といった恐ろしいメッセージがでる。おかしい。たった数日前にはあんなに残りが あったはずなのに。しかしどうにかしなくてはならない。緊急事態なので開発ツールXCodeを消してしまう。これだけで数GByte空くはず。ゴミ箱を空にし空容量を確認。ほっと一息つく。そしてディスク容量の可視化ソフトDisk Inventory Xを使って容量を確認し始める。

ところがまたもや「残り容量ほとんど0」の表示がでる。何かがおかしい。また何かファイルを消す。しばらくファインダーの表示を見ていると、数字が刻一刻減少していく。つまり毎秒数十MBの速度で空容量が減っていく。ついには空きが0になりファイルが一切書き込めなくなった。

今までハードディスクのトラブルにみまわれたことは何度もある。いきなり「認識できません」といわれ青ざめたこともあり、ある意味心の準備はできている。しかしこの「減少し続ける空き容量」には言いようのない恐怖を感じた。まるで密室に閉じ込められだんだん水位が上がっていくかのようだ。この原因を除去しない限り何をしたところで「空容量0」になってしまう。

きっと何かおかしなプロセスが走っているにちがいない。そう思い他のユーザでログインするが状況は変わらない。セーフモードで起動する(細かいことは知らないが、余計なことを一切しないで起動するらしい)が結果は変わらない。電源断、再起動もダメ。ディスク容量は順調に減少してくれる。何度目かの再起動時に、進行度合いを示すバーが止まり動かなくなった。システムが立ち上がらなくなったのだ。

こうなってはお手上げである。バックアップは取ってあるが、できれば最後にバックアップしてから更新したファイルも救いたい。会社にデータ復旧用のソフトがあるのでそれを使おう。そう思いその日は寝てしまう。

さて翌日。会社で仕事の傍らあれこれやる。理論的にはそのソフトのDVDから起動できるはずなのだが、なぜか立ち上がらない。あれこれ調べると、最近のMac OSには自動的に復旧用のエリアが設定されるらしく、そちらから立ち上げてみる。すると確かに起動する。よし、ここでディスク修復ツールを使って治してしまおう、と操作する。しかししばしあれこれ表示した挙句

「このディスクは修復できません。できるだけ多くのファイルをバックアップして、初期化してください」

という恐ろしいメッセージを出す。何度かやったが結果は変わらない。コーヒーか何か飲んで気を落ち着ける。どうやら最後に更新したファイルは諦め、フォーマットするしかないようだ。しかたない。こういうことはこれまで何度もあったじゃないか。そう自分に言い聞かせて初期化のボタンをぐいっと押す。

ところがしばーし沈黙した後「このディスクを初期化できません」と言ってくる。途端にいろいろな光景が頭に浮かぶ。以前会社のmacが壊れた時に修理屋に行った。またあそこにいくか。でもしばらく帰ってこないだろうし、恐ろしい額の請求をされるだろうな。ああ、果たして年が越せるだろうか。

とまでは考えなかった。しばらく何も起こらなかったふりをして再度初期化をしようとディスク修復ツールの画面をみる。するとなぜか知らないが先ほどとはディスクの表示が変わっている。ディスクが使えるようになるためにはまず「マウント」ということをしなければならない。ついさっきまで頑なにその「マウント」を拒んでいたのだが、いつのまにかマウントされている。

ひょっとしたらこのまま起動できるかもしれない。(ディスクのトラブル時にはこういうことが本当に起こる)ダメでもともとと自分に言い聞かせながら起動を試みる。バーの進行度合いが今までとは明らかに異なっている。そして見慣れた起動画面が現れた。

さて、ここで喜んでいる場合ではない。これで平和な日常が戻ったわけではない。実はディスクは死んでいるのだが、一時的に息を吹き返しただけだ。というわけで、最後にバックアップを取ってから更新したと思っているファイルを外付けハードディスクにどんどん移す。どうかコピーが止まりませんように。珍しいことだがその願いは聞き入れられた。

では次にどうするか。できればディスクを丸ごと外付けディスクにバックアップしたい。試みるとものすごい「残り時間」が表示された。これでは会社にいる間に終わりそうもない。一旦中断する。そして不思議なことなのだが、昨日あれほど私を悩ませた

「空容量が自動的に減る」

現象は落ち着いているようだ。これならしばらく持つかもしれない。となるとやることがいくつかある。昨日何度も

「外付けハードディスクから起動できるようにする」

というのをやっておくべきだったと痛感した。さっそくその操作にとりかかる。とりあえず必要なデータをダウンロードしたところで家に帰る。

家に帰るとまずやることはバックアップをとること。方法は二つある。まずTimeMachineを使うこと。これだと全体のバックアップ-復旧が可能になるからまずそちらを試みる。前にも書いたがMacBookAirの記憶容量は256GByte,ハードディスクの空きは400GByte以上。楽勝のはずだ。

あれこれ設定するとなにやらうんうん考え出す。何かメッセージが表示されたので読めば

「空容量が足りません」

とのこと。ちょっと待て。どう考えても足りてるだろう。もう何かが本格的におかしいとしか思えない。というわけで自分が使っているホームディレクトリのデータだけバックアップを取る。一晩中かかるかと思いきや2時間くらいで終わった。

それをやっている間にまた例の「空容量がどんどん減る」現象が再現する。どうもこれは一度まっさらにしてインストールしなおすしかないようだ。といったところでその日は寝てしまう。

翌朝出社すると、覚悟を決めて一度まっさらにする作業に取り掛かる。問題は「どのハードディスクを起動ディスクにするか」だ。そのためには内容を全部消さなくてはならない。しかし幸か不幸か昨日から

「このハードディスクは修復できません」

というどこかで聞いたようなメッセージを吐いているディスクが一つある。どうせ復旧できないだから消してしまおう、と消してしまう。そのディスクを起動ディスクに指定するとちゃんと立ち上がってくれた。ここで昨日のように

「このディスクは修復できません」

と言われると困るところだったが、素直にまっさらにできた。そこからシステムのインストール、必要なファイルの復旧を粛々と進める。

一通りファイルを戻し終わると何事もなかったかのように二日前と同じ生活が戻って来る。正確に言えばあちこちのサイトでやたらと

「ログインしてください」

と言われるところだけが違うが。

いや、こうした「いつもの日常が戻ってきた」という記述はまやかしである。一点信じられないような変化が生じている。ディスクの空容量が100 GByteを超えているのだ。

これは理解ができない。おかしくなる前に何が空き容量を圧迫しているかはなんども調べた。lost+foundに大きなファイルがあるとかそういうものは全て削除したつもりだった。なのに全く正体のしれないファイルが100GByteも存在していたのである。それはどこにあったのか。復旧してから特に不自由が生じているということはない。であればそれらはなんのために存在していたのか。

そう考えるとこれらを「ダークマター」と呼ぶしかない。ディスク容量に対する影響は観測できるが、その正体が何かわからないのだ。いずれにせよこれでMac Book Airの寿命が延びた、と思いたい。少なくとも容量の観点からは。新しいMac Book(だかAirだか)はいつ発表され、どんな製品なのだろう。

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注釈