日付:2004/6/24
定期で横浜駅に行き、そこから踊り子号という電車に乗る。かたこんかたこんと揺られる間に居眠りする。熱海で列車を切り離し、伊東を過ぎ降りたのは伊豆稲取という駅である。私と同じ車両から降りた人はゴルフクラブをもっており、仲間とおぼしき人たちを見つけるとおーい、と言った。
もちろん私には仲間などいない。孤独な珍スポット巡りである。さて、今日の目的地はどこかときょろきょろしていると駅のホームに小さな看板が出てくる。徒歩一分ということはそれほど迷いようもないだろう。
駅にある地図で場所を確認し、てくてく歩き出す。駅前の比較的広い道をてくてくあるくとまたもや看板があり「徒歩0分」となっている。ほう。0分とは何秒の事だ。四捨五入かそれとも切り捨てか。などと考えているうちもう一つ看板がでてきて右に曲がれと言う。もう少し曲がるといきなり目の前に寺が出てきた。
ここが今日の目的地である。既にしてなにやら異様な雰囲気を感じるのは看板の下に寝そべる赤い帽子を被った羅漢のせいだったか。
この寺のあちこちに羅漢が居ることは知っていた。というかこの寺のオフィシャルサイトとおぼしきところには既に羅漢を扱った頁が存在するのだ。であるから私は特にあれこれ書いたりしない。境内を進んでいくといろんな物がでてくる。この寺では手を洗う水は不動様の口から出てくる。その名も「不動水」
さらに本堂の前には赤不動明王と黄不動明王がいるのだった。
そのあでやかな色合いを見、「青まきがみ、赤まきがみ、黄まきがみ」と頭の中で唱えながら先に進む。左手には「なでほとけ」とか一つの岩に怒った顔と笑った顔を彫り込んだ石などがいる。そしてその奥には「世界一ビルマの佛鐘」があるのだった。
いや、確かに世界一というのはすばらしいことだが、ここまでもろに書かなくてもと思ったりする。私は鐘と言えば釣り鐘で丸いもんだと思っていたが、ビルマのそれは厚板のようなものだ。奥にある最大のは叩いちゃだめだけど、手前にあるやつはいいよん、と書いてあるから叩いてみた。くわーんと音がする。
でもって本堂に入る。正面にはなにやら仏様らしき物がいるのだが、あまり見ていない。左手には宝物殿があるという。そちらに向かいかけると女性がきて「ごらんになりますか。200円です」と言う。黒い扉を開けて電気をつけ、ついでに説明用のカセットまでスタートさせてくれた。
カセットからはここの住職とおぼしき方の声が流れ続ける。入って右手に顔がてかてかに光ったビルマの国宝がある。なぜ国宝があるかというと壇家に陸軍中野学校出身者がいて、ビルマの兵隊さんを訓練してビルマの独立に貢献でそのご縁でどうのこうの、という話だった。(細部覚えていません)なぜ顔がてかてかかと言うと、ビルマでは毎朝顔を拭いてからお経を唱えるのだそうな。
でもってその隣にはこれも国宝、ビルマの竪琴がある。おーい、水島。一緒に日本にかえろう。私が若い頃この映画がはやったせいだろう、あ「竪琴」と聞くと自動的にこの台詞が頭に浮かぶのだが、今の若い人はしらんかもしれんなあ。などと私が考えている間も説明は延々と続く。最初はビルマやらインドやらゆかりの話が多かったのだが、そのうち籠はでてくるわ。裃はでてくるわ。とにかくいろいろある。
これが観光地にありがちな説明テープだったら途中ですっとばしたのかもしれないが、普通の人が語っているテープだけになんだか聞かなくちゃ、という気になる。最後まで聞いてその部屋を出た。本堂はさんで反対側には七難厄落とし巡りと納経堂がある。こちらも200円。先ほどの女性が言うには、真っ暗だから壁から左手を離すなとのこと。階段を降りてみると確かに真っ暗だ。左手を壁につけたまま進むがいつものように頭をふっとばされるのでは、という恐怖に襲われる。この状況で自分の生き様を見つめ直す気などさらさら起きない。あれこれ考えた末、左手を前方高くかかげ壁を触り、右手は右前方に差し出すことにした。頭を吹っ飛ばす何かがあってもこの手にひっかかるだろう。そのうち左手に何かが触る。をを、と思いひっぱってみれば換気扇のスイッチだった。そのすぐ先に小さな仏様があり厄落としはおしまい。反対側の部屋には十二神がいたようだが、こっちはどうということはない。
というわけで本堂はおしまい。外に出るときょろきょろする。壺の中で水滴がおち音が響く-水琴窟-が置いてある。それ自体なかなかいい音がするし、羅漢が聞いているのは今更気にならないがビクターの犬もいるのだった。
と思わず忘れそうになったがこの寺の別名である「かやの寺」の由来であるところの大きなかやの木もありました。天然記念物だけあって立派でした。