題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る
日付:2016/8/6


まぼろし博覧会:静岡県(2016/7/15)

新横浜駅から車でGoogle Map様のお告げ通り走ろうとする。しかし時々道を間違える。そのためかやたら裏道のようなところを走る。いつ人がでてくるかわからないから、自動車専用道の方がいいのだが。

今にして思えば一旦停車し、経路をちゃんと設定してから進むべきだった。しかしその時の私は「とにかく前に進む」ことしか考えていない。とにかく言われるまま右に曲がったり左に曲がったり。そのうち海が見えてきた。少しは目的地に近づいたということか。しかし所要時間の数字はその幻想を打ち消してくれる。

「伊豆スカイライン」というものに乗れと指示がある。そこで、最近あまりしたことがない動作をする。有料道路の入り口で財布を出しお金を払うのだ。ETCなる文明の利器が発明されてからやったことがなかったが、面倒だとか文句を言っている場合ではない。この伊豆スカイラインというのは最初に出口に応じた料金を払わなければならない。そして私はGoogleMapのお告げに従っているだけなので出口の名前がわからない。残りの距離が16kmとなっているので「16km先の出口はどこですか」と尋ねる。教えてもらったところまでの料金を支払う。

スカイラインというだけあって高度が高いところを走っているような気がする。なぜ表現があいまいかというと、辺りが霧に包まれており視界がきかないから。少しでも対向車線の車に気がついて欲しくヘッドライトをつける。このまま視界が悪いと大変だなと思うとともに、涼しくて楽なのも確かだ。

そのうちスカイランを出て、山道を下り続ける。すると遠い昔に来たことがある光景に出くわす。

うさみ観音

十四年前にここに来た。その時は最寄駅から歩いて登ってきたのだった。今から考えてもよくやったなあと思う。坂道をたらたら下って行くが、辺りの光景をなんとなく覚えているのに驚く。以前見た人力自動車屋とかはなくなっているが。

そんなことを考えているうち海岸沿いの通りに出る。ここをまっすぐ南下すれば目的地に着くはず。そのうち海岸沿いに「サンハトヤ」という赤い文字がついたホテルがあることに気がつく。

すると頭の中に

「伊東にいくならハトヤ。電話はヨイフロ。4.1.2.6.4.1.2.6」

というコマーシャルソングが流れ出す。あのCMをみていたのは一体いつなんだろう。他にも断片的なCMソングが頭の中を流れているがちゃんとは思い出せない。いや、思い出に浸っている場合ではない。目的地に近づいているのだ。ずっと南下してきた国道から左におれると目的地である。

入り口


ここが本日の目的地その1、まぼろし博覧会である。今見返して思うのだが、ここはもともと植物園とか温室の類だったのではなかろうか。しかしそのときの私は画面右下に写っている兵馬俑に気を取られていた。さっそく入り口に向かうとなにやら変わった格好をした男性が来て何か言う。聞き取れないので聞き返すと

「館長です」

とのこと。もらった名刺には「セーラちゃん」と書いてある。相手は男性でコスチュームの隙間からみえる体格からして私より年上だと思う。私は「どうも」といって入り口に向かう。なんでも開館5周年とのことでこんなボードが設置されている。

5周年

写真が小さくて恐縮だが、看板は明らかに今の方が悪くなっている。それを堂々と乗せるあたりが、この博覧会ということなのだろう。

まぼろし門と称する門をくぐり階段を上っていく。

まぼろし門

階段の両脇にはいろいろなものが所狭しと展示されている。

二股神社

この二股神社など、きっとカップルがきて「あんた、何みてんの?」とかじゃれあったりするのだ。ええい、最近の若い者は全くけしからん。後から振り返ってわかることだが、一番面白かったのはこの入り口までのエリアだった。なぜならここだけには、製作者の工夫が感じられたから。

秘宝館おじさん

私の記憶に誤りがなければ、この人形はいまは無き国際秘宝館の秘宝館おじさんのはず。ただ顔の表情などは多少変えてあるようだ。その先に入場券の販売ブースがある。100円の割引券をプリントアウトしておいたので、それを出すと1100円になる。すぐその先に3本の矢印が書かれており、その順番に回って欲しいとのこと。

というわけで館内にはいる。本を売っているエリアがあり、そこを過ぎると温室のようなところに入っていく。すぐ見えるのが巨大な聖徳太子だ。

聖徳太子

実物を見るまではこの聖徳太子は、私が以前大阪でみた奈良の大仏の変形版ではないかと思っていた。しかしこうやって対峙するとそれはありそうにもない。まず第一にあの大仏はかなり下を向いていたが、この像はそうではない。また原型があってそれをここで改良したというよりはどこからか運び込んできたと思われるのだ。なぜかというと、ここに入りきらなかった頭頂部が存在しているから。(説明とともに)

聖徳太子頭頂部

この聖徳太子像が鎮座しているエリアには、あちこちの古代遺跡の模型があり、世界中の女性のマネキンがいる。想像するに各地のつぶれた博物館から展示品を引き取っているのではなかろうか。

世界の女性
古代遺跡の模型

ピラミッドは半分緑に埋もれている。いや、このエリア全体が緑に埋もれかけている。これらの展示が何らかの意図を持って集められ、主張をもって配置されていたらどんなに面白い展示になっただろう。

しかしだんだん気がつき始めるのだが、それらは「置いてある」だけ。だからそれ以上何も感じることがない。

雑然

こうやってとにかくペタペタ貼られてもねえ。あちこちの秘宝館由来と思しき人形とかあるのだが、やはりただ置いてある。行ったことはないが鳥羽秘宝館にあったと思しきSFものなど、ちゃんと展示すれば面白いかもれしれないが。伊勢秘宝館で見た動物の剥製たちも山のように積まれている。

雑然

ピンクレディーの二人は今の基準からみればあまり見事はスタイルとはいえない。PC8001,にMZ-80、インベーダーゲームとか個人的に興味を引かれるものはあったのだが。

立て看板

私は学生運動が収束した後の時代しか知らない。しかし学内に存在していた立て看板はこんな文字ではなかった。彼ら特有の字体で書かれており、少なくともこんなひょろひょろではなかった。

写真を撮るのもそこそこに外にでる。先ほどの場所で館長に話しかけられる。

「どうでしたか?こんな変わった場所他にありませんよ」

と言われる。なるほど。彼の情熱は「人に変わっていると思われること」自体に向けられているのか。それゆえいろいろなものを雑然と集めるだけ集め、その展示自体には工夫が感じられないのかもしれぬ。
私が今まで行った珍スポットの多くはこうではなかった。

「誰がなんと言おうと俺はこれがすごいと思っている」

と言わんばかりの作品自体をアピールする迫力に満ちていた。巧拙を超え私が感じていたのはそうした製作者の声だったのだろう。「変わっていると思われること」ではなく。

そこでは無料でかき氷が振舞われている。ソースとか変わったものをかけることもできるが私は素直に練乳を頼む。こうやって水分と栄養補給ができただけよいと考えよう。礼を言ってその場を立ち去る。さて次の目的地に出発だ。

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注釈