私は他人と夢の話をするのが好きです。
夢といっても、将来の夢じゃなくて、昨夜見た方の夢です。
自由奔放、前後不知、モノクロありカラーあり、たとえ夢がどんなに奇抜であっても、まったく人畜無害であります。
私の家内は、楽しい夢など見たことない、常に夢の中では困っていると申しております。時間に間に合わないで焦っているとか、番組と違う謡曲の本を持ってきたなど困ったことばかりで、夢など絶対見たくはないと申します。
それと対極に、私の夢は殆ど楽しい夢なのです。
そんな楽しい夢の中で、わりに多いのが空を飛んでいる夢です。せいぜい周りの建物の3倍程度の高さなのですが、風の方向を読み、上昇気流を予測して飛び続けるのです。言ってみれば、トンビの真似ですね。
もう一つはスキーです。小難しいコースでなくて尾根でも谷でもいいのですが、シラカバ青空のコースをぶっ飛ばしている夢なのです。
さていろいろの人とお話していると、万人に共通の嫌な夢は、オシッコをしたくなってトイレを探している夢らしいですね。
体験上、私のその手の夢の場合、スキー宿でのトイレ探しのことが多いのです。曲がりくねった狭い階段を上下し、宿のご夫婦の床の裾を曲がったり、行き着いたトイレは満員、トイレと言っても昔のコンクリートで溝になっているだけのやつ、そして致命的な欠陥は、放尿しても切迫感が一向に解消しないのです。
最近病を得、88歳という年齢からも、夜ののトイレが煩わしく、思い切って尿瓶を求めました。
使った最初の夜から、すっかり大好きになりました。
オシッコが尿道を流れてゆく快い刺激、そして出し切りスッ切りした安心感。
人生で味わってきたあのトイレ探しの焦りの夢は何だったのかと、幾千回の夢の敵を一気に打ち果たした気持ちになっているのです。
尿瓶が出現した頃は、まだノーベル賞などなかったことでしょう。発明者にはお気の毒なことでした。