小さな輪
ガンという名がついて以来、家族の中に私を中心にして小さな輪ができたのは確かだ。
なにを食べたとかなにを喜んだとか、まことに有難いことだが、いずれは消えてゆく。
それは私が死ぬときだが、どうもイメージがわかない。
心筋梗塞、脳梗塞などイメージの湧きやす病気もある。
肝臓がんについては非常にイメージし難い。
唯一、イメージできたのは、血管の変形、血管破断だけであった。
思うに肝臓は人体のあまりに巨大な化学工場で、諸機関と関係を持つているからだと思われる。
大帝国の変容のようなものではないか。
バスティーユ型か、ボルシェビキ型か、アヘン戦争型か。
ともかく、いつ頃、どんなようになるのか、考えても一向にわからないものである。