私が初音ミクの映像+音楽を見続ける理由

2007-10-05 00:00



映像を扱うという点ではテレビもCGMも同じように見えるが、CGMはメディアというよりは、みんなで遊んでいじり倒すという点でゲームやSNSに近い。生活者がゲームに続いて映像関連の遊び道具やコミュニケーションツールを手に入れようとしている点をテレビ局は察知するべきだ。このままではテレビに振り向けてくれる時間はどんどん減少していくことになりかねない。

テレビ関係者は「初音ミク」を侮ってはいけない デジタル家電&エンタメ-最新ニュース:IT-PLUSテレビ関係者は「初音ミク」を侮ってはいけない デジタル家電&エンタメ-最新ニュース:IT-PLUS




ここ数週間、ニコニコ動画をみる時間が急増している。初音ミクというキーワードでつながるその作品がとても興味深いのだ。なぜか?


この「音声合成ソフト」を巡る動きについては多くの人が言及している。それらを読んだ上で、以下に私の考えをできるだけ簡潔に書いておく。


*プロの制作者はすごい。それは一般ユーザーがツールを手に入れたからといって簡単に模倣できるものではない。


*しかしニコニコ動画上でのアマチュア作品の鑑賞、には作品そのもののでき以外に人を引きつける要素がある。すなわちコンテンツそのものよりも、コンテンツをきっかけとしたコミュニケーションを楽しむことができる、という点だ。


テレビを見ながら家族や友人とおしゃべりをするとき、実はテレビ番組自体はどうでもよくて、会話そのものを楽しんでいますよね。その感覚に近いんです。

YouTubeはニコニコの露払い・ひろゆき氏に聞く インターネット-最新ニュース:IT-PLUSYouTubeはニコニコの露払い・ひろゆき氏に聞く インターネット-最新ニュース:IT-PLUS


これが従来「お前らは俺たちが放送するものを俺たちが指定する方法だけで指定した時間にみればいいんだ」という一方通行的な放送の文化と異なる点だ。


いや、本来家族全員でTVの前に座るということにはこうした「コミュニケーションのきっかけ」的な意味があったのかもしれない。しかし今やそれは薄れてきている。


*もう一つ初音ミクを用いた作品に好ましい要素というのは(一部だが)JASRACフリーな映像、音楽の世界が存在していることだ。今やコンテンツの権利を持っている人たちは自分たちの都合のよい方法で視聴を強いることに全力を挙げている。想像だが彼らの本音は「購入した楽曲であっても、iPodから一度再生するごとに許諾と課金を強制する」ことではないかと思える節がある。おまけに下手するとYoutubeやニコニコ動画を視聴しただけで「違法行為」といわれるご時世だ(それが誤解だというアナウンスがあったが、内容をみる限り単に無知によるものとしか思えない。最大限好意的に解釈したとしても彼らがなぜストリーミングを対象外にしているのか理解できない。つまり仮にYoutube,ニコニコがストリーミング扱いになったとしてもいつ「違法」と言い出すかわからない、ということだ。)


しかし初音ミクのごく一部の作品を楽しんでいる限りにおいてそうした問題はなくなる。iPodで聞こうが家で家族と楽しもうがJASRACも文化庁も知ったことではない。


こうしたJASRACフリーという精神的な安心感はプロの楽曲に劣る、というディメリットを補ってあまりあるものがある。


つまりJASRACガチガチでも聞きたいと思えるほどプロの楽曲、映像に優位性があるか、というと、ごく一部のものをのぞいて優位性は存在しない、と思い始めているのだ。(ごく一部のCDはちゃんと購入してますよ。でもそれでも余分に金払うことにしたいんだよね。権利者の人たちは)


*プロの楽曲を楽しむ人と、ニコニコ動画を楽しむ人は異なるからすみ分けができるだけだ、なぜならプロの作品と素人の作品が質が違うから、などというの間違っている。


いろいろな製品、サービスのうち多くは有限な「ユーザーの時間」を取り合っているのだ、ということを忘れてはならない。先日聞いた例だが


「携帯の普及によりガムがうれなくなった。なぜなら手持ち無沙汰な時間にガムをかむかわりに、携帯をいじるようになったから」


なる現象があるのだそうな。携帯とガムは商品セグメントも違えば、何もかも関係ないように思える。しかしそれは実際に食い合うのだ。なぜならユーザの時間は有限だから。




ちなみに今度人前で「音楽をより楽しく、かつきままに検索するシステム」の発表をやるのだが、そのときに初音ミクのオリジナル作品を使わせてもらおうと思っている。音楽の社会性について述べる必要があるので、どうしても研究用の著作権フリーの楽曲ではなく、実際に社会に流通している楽曲を使う必要があるのだ。


50年以上前に死んだ作曲家の曲を自分で演奏すれば、半分はなんとかなる。あとの半分は初音ミクだ。