「学習会議 @ NHK」に行ってきたよ
2008-03-19 00:00
というわけで、「学習会議@NHK」に行ってきました。例によって体系的かつ詳細なレポートは皆さん書かれると思うので、私は印象に残ったところだけ。
当日印象的だったことはいくつかあるが、思いつくまま列挙すると
- 司会というかインストラクターの李浩さん、ローラ・チャンさんはなかなかよいコンビだと思う。ローラのボケを李氏がうまくカバーしている。ちなみに二人は、会場で配られた「テレビで中国語4月号」に全冊サインをしてくれました。
- 黙って座っていても知性がにじみ出るNHKおよびNHKエデュケーショナルのメンバー。また彼らと彼女たちの番組作りにかける熱意
特に後者は印象に残った。記憶に残っている言葉だけあげると
- 中国語は英語についで多く話されている言葉(プレゼンで)
- 北京オリンピック、上海万博などイベントが続く(プレゼンで)
- いつも「学んでほしい」という熱意があふれるものだから、語学テキストの4月号は厚くなってしまう。低下は380円だが、内容を考えれば絶対お買い得(懇親会で)
さて、この会議は参加後にブログでフィードバックすることが必要条件となっている。したがって私は彼らと彼女たちの熱意に大いなる敬意を払いつつも正直に自分の考えたことを書かねばならない。
番組の作り手の「是非この番組で中国語を学んでほしい」という熱意はいやというほど伝わってきた。
問題はその「熱意」の方向が間違っているのではないか、という点だ。たとえば一点。熱意を込めて「分厚くて、内容を考えればお買い得なテキスト」を作ることは、果たして学習意欲を掻き立てることにつながるのだろうか?逆に「ああ、こんなに分厚いテキスト。おなかいっぱいだ」と思わせないだろうか?
会議で議論されたのは「脱落者1%のすごい語学番組」を考える、というものだった。(テキストの売り上げは半年で半分になるのだそうな)私が主張した点と後で考えた点を書くとこうなる。
- 「普通の人」は学ぶことによるメリットをいくら説かれても、絶対継続して勉強なんかしない。(だから380円はお得、とは多分だれも考えない。それは本当だろうけど)
- 継続して語学を学ばせるには、「理不尽な願望」を持たせる必要がある。人間自分が「本当に好きな」ことならいくらでもやる。そうでなければやらない。
- 私がアメリカに行ったとき、最良の教材はCheersというコメディ番組だった。正直私のヒアリング能力を超えるものだったがなんだか面白そうだ。「インドネシアでは吹き替えで放映してるよ」というインドネシア人の言葉をうらやましく思いながらも、聴覚障害者用の字幕をみつつ必死に見続けた。今から考えればあれは結構効果的だったと思う。
- というわけで「面白いドラマを放映し、”肝心な部分”だけ中国語にする」というのはどうだろう。絶対「これを聞き取ってやる」という意欲がわくに違いない。
- あと「中国語限定ニコニコ動画」のような仕組みもいいかもしれない。コメントをつけていいのだが、中国語でなければ通さない。これにより「ああ、あんなこと言ってやがる。文句をつけたいが、、」という欲求が語学学習の推進力となる。多分罵詈雑言が中国語で飛び交うだろうけど、それでもいいんじゃないのだろうか。まず最初の一歩を踏み出してもらうことが肝心。
- 私が所属したグループででたアイディアは「中国語で言われた言葉に対して、それは何か、バリエーションは何か?などお互いにディスカッションしつつ教えあえるWikiのようなものができないか」というものだった。そしてたとえばそこで人気があった言い回しは翌週の番組で使われるとか。
- これを代表の人が発表したとき、NHKのスタッフが「それは難しい」と小声で言った。確かに番組の作り手からするとそうなのだと思う。しかし私は考えるのだ。語学講座というのは、どうもインストラクターが落ち着き払って常に正解を知っているのが気に入らない。今回の番組では「初心者代表」として小池某が出演するとのこと。それは大変いいことだと思うのだが、私は「インストラクターがおたおたするところ」も見てみたい。本番30分前に台本変更とかでもいいではないか。それでこそ「ともに学ぶ」ということがいえるのではなかろうか。
- それが難しければ「自分が思う話の続きを動画で投稿してください。ただし台詞は中国語で」とでもやれば結構珍妙な回答が集まるし、エンターテイメントとしてもよいのではなかろうか。ニコニコ動画に集まっている名もなき才能を見れば、きっと「予想の斜め上」を行く投稿があつまりスリルにあふれた語学講座になるのではなかろうか。
- もう一つは「ああ、中国語ってかっこいいなあ。オレも言ってみたいなあ」という憧れを持たせることも重要だと思うのだ。好きな曲は言語で歌いたいでしょ?英語の歌丸暗記というのも結構学習の足しになったのではなかろうか。そう考えると(著作権の関係で難しいと思うけど)映画HEROで始皇帝が朗々と述べる台詞とか、あるいはブルースリーのきめ台詞、とか。そんなものがあればなあ。
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などとつらつら書いているうちコンサルタントの秘密
という本にでてくる「バッファローのブレーキ」を思いだした。
- 「バッファローはどこへだってつれてゆけるさ,やつらが行きたがっているところへならね」
- 「バッファローをどこかへ行かせないことはできるさ。やつらが行きたいと思っていないところへならね」
視聴者に何でも学ばせることはできるさ。視聴者が学びたがっていることならね。
また帰りのバスでは遠い昔1度だけみたCMを思い出した。
「みんな忙しい、忙しい、時間がない、と言っているけど、好きな人にはちゃんと会ってるんですよね。だから時間を作ろうと思えば作れるはずなんですけどねえ」
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最後に、私が所属したグループの6名しか見ることがなかったであろうお土産の写真を披露。
ああ、包装紙に輝くNHKマークがまぶしい。
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全体の進行は、前回の検索会議と同様。ただし今回発表は2グループのみ。そのうえで挙手により表彰対象グループをきめるやり方。また前回各グループのプレゼンで「ホワイトボードに書いてからプレゼン」ということで時間を食ったためか、今回は各グループで書いた紙をPCに取り込んでスクリーンに映していた。こうした点、細かい改良を積み重ねていくところがすごいなあ、と感心した。