「音楽を楽しむ」」いろいろなやり方

2008-05-13 00:00



「ぼかりす」による動画が発表されてからというもの、ネット上でさまざまな反響を目にした。


その中に「調教の楽しみがなくなる」「ミクは人間っぽくないところがよかったのに」といったものをかなりの数目にした。


そして


「なんだか閉じた世界の理屈だなあ」


と思った。そうした楽しみは確かに存在すると思う。しかし「Vocaloidを上手に歌わせることが難しいことを知っている人限定」の楽しみ方だけに執着してどうするのだ、と。


そうした「前提知識を要求する楽しみ」だけにとらわれると、喜ぶ人が限定されひいては衰退の道をたどるのではなかろうか。某ワークショップである人が言った名言


「萌えの形骸化」


もそんなところから来たのではなかろうか、と。


そこからあれこれ例を考え始める。たとえばCDが普及し始めたころも同じような言葉が聴かれたのではなかろうか。「アナログレコードの味わいが失われた」(これはある程度正しい部分もある) 「アナログレコードをどうやって音質良く聞くかが工夫のしどころだったのに」とかね。*1


しかし↑の例は別として、そうした「音楽の楽しみ方」は何もVocaloidに始まった事ではないことにも気がついた。


仮にVocaloidを「演奏が難しい楽器」と捕らえたとしよう。何も予備知識を持っていない人は、「ああ、きれいな曲だね」と感心する。演奏の難しさを知っている人は、それに加え「なんとあの難しい楽器をこんなに弾きこなすとは」と感動する。


具体例を挙げよう。私は小学生のころ「下手なホルン吹き」だった。だから今でもホルンが旋律を奏でると緊張する。ああ、音が外れるのではなかろうか。そしてそれが見事に決まったときの感動は、ホルンが難しい楽器であることを知らない人より深いのではなかろうか。


知らない人でもそれなりに。知っていればもっと深く楽しめる、というのは広く受け入れられているものに共通する要素であろう。そう考えれば「ぼかりす」がVocaloidを用いて作れたら作品群の盛り上がりに水を差すなどというのはまずありえないことだ。私などの貧弱な想像力を超えて広がり続けるVocaloidの世界において、「調教の楽しみ」などは一つの要素でしかない。


仮に「ぼかりす」が広く使用可能になったとしてそれがVocaloidを用いた創作物にどんな影響を与えるかは誰にもわからない。野次馬としては例によってあさっての方向への進化が起こってほしいと思っているのだが。


ちなみに


なお本技術は、 より多くの方々が、 より容易に歌声合成技術を使って楽曲制作を楽しめることを意図したものです。 現在多くの方々が歌声合成技術を用いて優れた楽曲を生み出している状況を 支援することは望んでいても、阻害することは意図していません。 科学技術の発展と文化の発展のために、 本技術をどのように世の中に出していくのが望ましいか、 熟慮しながら今後の展開を進めていきますのでどうぞよろしくお願い致します。

VocaListener (in Japanese)VocaListener (in Japanese)


私が知っている限り、後藤一派のこのメッセージは文字通り受け取るべきものである。後藤一派はとても音楽を、そしてニコニコ動画に代表される「みなが音楽を作り発信する現象」を愛していると思う。そして彼らは自分達の行動がどのような影響をもたらすかについて思考し、かつ意見に耳を傾けるだけの賢明さを持っている。


さらにちなみに


どちらかと言うと本当に興味深いのは1ヶ月に1回は話題や問題を振りまいて陳腐化しない「初音ミク」という存在そのものではないだろうか。実体はなくても確かに存在している、そんな気がする。

rerofumiのつぶやき ≫ 「ぼかりす」で何を創るのかrerofumiのつぶやき ≫ 「ぼかりす」で何を創るのか


この意見にもまったく同意する。それが何であったかを分析するのは好きな人にまかせておいて、今はその騒動をリアルタイムで体験できることを幸運だと思おう。そんな私が最近「幸運」を感じたのはこの動画


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D


原作もすばらしかったが、それに演出を加えるとこれほどまでにすばらしい作品になるのか、と驚かされる。コメントにもあったが、曲にあわせて最初から最後まで忠実にモデル化された指の動きをここまで大胆にカットするとは。




*1:私が知っている限りでもそれは大変だったのです。レコードにスプレーかけて、埃を丁寧にとって、ターンテーブルが縦になっているものもあったような