つまるところ足りないのは何なのか?
2008-05-27 00:00
先日行われた「近未来テレビ会議」に出席した人は↓の文章を読んでどのように感じるだろうか。
「ああそれね、わかっちゃぁ、いるんだよ。でもね...実際に製品にするとなると、ね...」一昨日行われた百式田口さん主催のBRAVIA会議には出席できなかったが、おそらくは参加者のブレストで出てきたアイディアの大半が議論し尽くされたものだろう。そして、その中のいくつかは、実際に効果的な手法であることもわかっている。一見すると実装が簡単そうに見えるのもわかる。でも、でも...という技術者・商品企画者の心の声を、冒頭の一文で代弁してみた。
キャズムを超えろ!キャズムを超えろ!
私の感想は「実際そうなのだろう」である。日本の家電メーカーには優秀な技術者、商品企画者が山ほど存在しており、「アイディアだし」に費やされている時間もまた膨大なのだろう。そうして生み出された多数のアイディアは「さまざまな理由」で商品化されない。結局、従来の延長線上にある商品か、あるいは誰もが「これ何につかうの?」と思う新機能だけが搭載され続ける。
そうした中、「大人の事情」「業界の常識」に対して「無知」なメーカーがあっと驚く製品をリリースする。それらに対する日の丸家電メーカーの反応は概ね
「技術的にたいしたことはない」「うちでもすぐできる」
といったものになる。古くは2004年
ライバルと目されるアップルのiPodについても、「HDDウォークマンは半年、1年でiPodを追い抜く」「一社独占状態への挑戦だ」と強気を見せた。
ITmedia ライフスタイル:「HDDウォークマンは半年、1年でiPodを追い抜く」――ソニー・安藤社長ITmedia ライフスタイル:「HDDウォークマンは半年、1年でiPodを追い抜く」――ソニー・安藤社長
ソニーの社長は力強く宣言したが、いまだにHDDウォークマンがiPodをしのいだ、というニュースは聞こえてこない。あるいは、
とはいえ、あからさまに嫉妬にとらわれて不平を言う技術者ほど笑えるものはない。私が気に入ったのは以下のコメントだ。「技術的にすごいと感じるところは1つもない。われわれならもっと安く作れる」ぜひそれを作ってほしい。大勢の欧米人が(私も含め)、MacBook Airのコピー製品を1000ドルで購入できるのを待ち望んでいる。
日本の技術者チームが『MacBook Air』を語る「中身は無駄だらけ」 | WIRED VISION日本の技術者チームが『MacBook Air』を語る「中身は無駄だらけ」 | WIRED VISION
と自分達の「技術力」をベースに力強く宣言し、尊敬よりは、ひやかしの対象になったりする。
と考えるとだよ
今日のエントリーの標題、「つまるところ足りないのは何なのか?」という問題に突き当たるわけだ。日本にはすばらしい「製造技術」がある。そして(恐らくは)新しい製品、サービスのアイディアも豊富に生み出されている。
それでありながら「特徴のない、特に購買意欲をそそらない」製品が延々と生産され続けているのはなぜか?ごく一部のメーカーがユーザにインパクトを与える製品を作り出し、そこからキャッシュを生み出しているのを横目で見ながら「うちでもできる」と言い、結局何も新しいことができないのはなぜか?
冒頭引用した文章を書いた人は、松下電器を辞め、家電のベンチャーを立ち上げたという。あるいは
SPIDER PROでいちばん面白いと思ったのは,テレビの視聴体験が劇的に変わる点です。大げさに言うと,テレビに「自由」と「発見」を導入するのです。
テレビの自由を妨げるもの - 日経エレクトロニクス - Tech-On!テレビの自由を妨げるもの - 日経エレクトロニクス - Tech-On!
私も見せてもらったことがあるが、この製品は楽しい。というかGoromi-TVを使って感じるのと同じ楽しさをもっとちゃんとした製品として体験することができる。これを作っているのもベンチャーだ。
となると問題はどこにあるのか?
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ちょっと追記
でも、コントロールすることに慣れ切った各業界は、おいそれとはこれを手放さない。オールドメディア(古参のマスコミ)とはそんなものである。今のこの時代になっても未だにコントロールを維持しようと奮闘している。情報の受け手(オーディエンス)との間の関係性が変わってしまったことはオールドメディアも承知しているのだが、それにどう対処していいか答えを探しあぐねているのだ。
TechCrunch Japanese アーカイブ » マスコミはまだコントロール体質から抜け切れていないTechCrunch Japanese アーカイブ » マスコミはまだコントロール体質から抜け切れていない
自分達はコントロールが可能だし、コントロールしなければならないという脅迫観念を捨て去らない限り、オールドメディアとその関連業界(TVメーカーもそのひとつだが)からは何も生まれてこないかもしれない、、、