イグアナの夢

2008-08-23 00:00


日テレを含め、北京五輪期間中はテレビ地上波で巨人戦の中継は一切行われない。だが、星野ジャパンが帰国する翌日の25日から、日テレが満を持して巨人-中日戦を地上波中継する。しかも最近ではすっかり珍しくなった「延長あり」という熱の入れようだ。

プロ野球の視聴率を語るblog


おそらく誰かが



北京オリンピックで感動の金メダル獲得!その効果もあって、巨人戦の視聴率も急上昇!延長しても大丈夫!



というストーリーを考えたのだろうな。


またフジTVもその「金メダル確実!」ストーリーにのり試合の放送予定をたてたのだろう。決勝戦を午後6時半から延長もありで放映!


オリンピックの野球は良好な視聴率を出していたからこの判断は誤りではなかったと思うのだ。



もし日本が決勝に進出してさえいれば。



それもこれも「今度こそ金確実!」という予想に基づくものだった。



結果は韓国、米国と2回対戦し、それぞれ2敗。



「日本のプロ野球は、米国の3A以下の実力」ということが誰の目にも明白になってしまった。


それでも銅メダルを獲得していれば先のオリンピックと同じように




「金と同じと書いて銅と読む」


「プロとして最低限の仕事はできた」




とうそぶけただろうが、それすらもできない。


そしておそらくは



「星野ジャパン。金メダルへの軌跡」



とかいう特番をつくるため、膨大に撮影されていた映像も日の目を見る事はあるまい。監督の


選手たちはたまたまこの期間に調子が悪く、力が出なかったと思っている。日本の野球はこんなもんじゃない、このレベルじゃないということを、今後見せてくれると信じている。

力がなかった=星野監督一問一答〔五輪・野球〕(時事通信) - Yahoo!ニュース


という言葉は、同じくイグアナの夢を見ていた帝国陸軍の負け惜しみそっくりだ。



「海軍が負け、補給が続かなくなっただけ。陸軍は負けていない!本土決戦になれば目にもの見せてやる!」



帝国陸軍がそう言ったのは、一つには「自分たちの得意フィールドで戦えれば」という理屈でもあっただろう。彼らは確かに中国大陸では勝ち続けていた。(個々の戦闘では)自分たちの本領は、広大な大陸での野戦。ちまちました島での戦いでは本領が発揮できないのだ。


しかし「環境に適応すればするだけ、適応力を失う」というのも事実だ。


「平成の帝国陸軍」は言う。国際試合では、ストライクゾーンが異なっていたと。


ストライクゾーンがまったくほかの世界でやっているような感じだった。それで戸惑った感じだった

スポーツナビ | 北京五輪 | コラム|星野ジャパン、屈辱の北京五輪



しかしアメリカの選手はこういう。


制球に苦しむ日本の投手陣とは違い、四回以降完全に立ち直った先発アンダーソンは「ストライクゾーンには対応しないと」と、日本をあざ笑うかのようにさらりと言った。

中国残留の覚悟だった! 日本を撃破した米国 - MSN産経ニュース



また、異なるフィールドでの戦いに実績を残している監督の言葉を聞こう



敗因はいくつもあるだろうが、私はオールプロの彼らが、最後まで「箱庭」から抜け出せなかったからだと思っている。プロの彼らは整った環境下で、年に140回ほども同じ相手と繰り返し戦う。だが、五輪は違う。異なる野球文化で知らない相手と戦わねばならない。自分の庭でいかに秀逸な技能を誇っても、それを五輪でも発揮できるかとなると、話は別だ。

「プロ感覚」抜けず…審判も敵に回していた (2/2ページ) - 野球 - SANSPO.COM


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ガラパゴスのイグアナがみた夢は単なる妄想だった。


かつては繁栄を極めた「プロ野球」には膨大な数の人が関わるようになっている。それゆえ、イグアナは現実に適応した進化をとげるよりは、夢をみるようになった。そして変化する現実に適応するより、夢を維持するためにほとんどの労力を費やすようになった。



長い間、東京ドームで行われる巨人戦の観客は常に55000人だった。


人々がプロ野球からそっぽをむき出しても、スポーツユースの中心はプロ野球だった。



夢が現実から乖離するほど、その夢は変えがたくなり、かつ夢の維持に多くの力が必要とされる。



変化を食い止めたり和らげたりしようとして幻想を作り出すと、変化はますます起こりやすく、また受け入れにくくなるものだ


G.M.ワインバーグ著 「コンサルタントの秘密」より




「現実」が明白になった後も「イグアナの夢」を現実と思わせるために様々な努力がなされるのだろうか。


それとも



一気に崩壊が起こるのだろうか。



あるいは


何事もなかったのように、イグアナの存在すらなかったことにされるのだろうか。


TV、マスメディアについても言える事だが、こうした「イグアナの夢」が崩壊する様はなぜか私の興味を刺激して止まない。