映画評:スカイ・クロラ

2008-08-27 00:00


ネタがない日は本家から改変しつつ転載でございます。


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この映画には、プロペラ推進の軍用機がたくさんでてくる。それらは色々な軍用機のかっこいいところを切って貼ったような。 確かに見栄えはよい。しかし所詮それらは妄想の産物である。どうにも薄っぺらい。そして所詮切り貼りだから驚きはどこにもない。


この映画全般にもそんなイメージを持つ。映画の冒頭から、断片的な会話が飛び交い、観ている私は考え続ける。キルドレという言葉は何を意味するのか。この子供っぽいパイロット達は誰と戦っているのか。


映 画を見終わってしばらく考える。永遠に続けられるべき戦争に従事している彼らと彼女達は、年を取らず空戦以外で死ぬ事もない。記憶は次第にぼんやりしてい き、自分がいつからこんなことを繰り返しているのかもわからなくなる。その日その日をただ消費し続けるようになる。それは「老い」という変化がまだ 自分とは無縁のものと思っていた10代~20代の私の姿にも重なる。


しかし同じように繰り返される毎日、などということは決してなく、自らの姿勢によって、、とか制作者は言いたいのかもしれない。そのテーマ自体は共感できそうなものだが、特に斬新とは言えない。そしてその提示の仕方があまりにも稚拙なように思うのだ。


映画の後半私の目には涙が浮かんでいた。あくびがとまらなかったからだ。凝ったわりに迫力のないCG。断片的言葉の応酬が延々続いたかと思うといきなり説明的な演説でストーリーが説明される。その唐突さに唖然とすると、また断片的な言葉が飛び交いだす。


後から考えてみれば、私が考えるところの「この映画で言いたい事」はすべて台詞でペラペラと語られていた。残りは何かと言えば持って回ったやりとりと中学二年生が喜びそうなメカ、思わせぶりな人物、設定だけ。印象としては「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 」に一番近いが、あれより退屈でありながら、不思議な事に腹が立たない。


だから金返せ、とは言わない。しかし観ていて何かを感じたとか、面白かったとも思えない。見る価値は0円といったところか。


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この映画にでてくる「軍用機」-それは震電もどきだったり、FW-190D9もどきだったりA-10もどきだったりJu-388もどきだったりするわけだが-を見ていると、松本氏が書いていたマンガに時々でてきた「こんな飛行機があったらよかったのにな」といったスーパー軍用機を思い出す。


どちらもたしかにかっこうはいい。しかしどこか薄っぺらく見ていると気恥ずかしい思いになるのだ。いや、子供のころとか私も書きましたけどね。時速750kmで20mm,30mm,12.7mmつんで、航続距離は3000kmで、、とか。


そのあと、終戦間もないころに、技術者たちが書いた「航空技術の全貌」という本を読む。



今から見れば、そこに書かれている内容には事実誤認もあるし、間違いもある。しかしそこから感じられるのは、必死に戦った技術者たちの声だ。


そうした生の声をもとに書かれた、ガンダムの仮想解説などを読む。するとやはりどうしようもない気恥ずかしさを感じる。


ええっと今日はオチはありません。