PS3の後始末
2008-09-29 00:00
Cell B.E.を拡張してPS4に載せようと構想するSCE。しかし、ゲームデベロッパの多くは、現在のCell B.E.のCPUコア数を単純に増大させる方向は望んでいないと見られる。Cell B.E.は、未だに多くのゲームデベロッパから積極的な支持を得られているわけではない。にも関わらずSCEがCell B.E.にこだわるのは、そうしなければならない事情があるからだ。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース
この記事にもあるが、ゲーム業界にには一時「セオリー」なるものが存在したそうだ。
Cell B.E.を拡張してPS4に載せようと構想するSCE。しかし、ゲームデベロッパの多くは、現在のCell B.E.のCPUコア数を単純に増大させる方向は望んでいないと見られる。Cell B.E.は、未だに多くのゲームデベロッパから積極的な支持を得られているわけではない。にも関わらずSCEがCell B.E.にこだわるのは、そうしなければならない事情があるからだ。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース
こうしたセオリーを得意げにかたる「事情通」がたくさん存在したのだろう。そしてこのセオリーは「イノベーションのジレンマ」を拡大させるものだった。それに気がついた任天堂は、社長のリーダーシップのもと、異なる方向にカジを切った。その結果は今のところ見事だったとしかいいようがない。
一方のソニーは、Cellへの膨大な投資の後始末に苦しむことだろう。先日ゲームの開発者と話す機会があった。Cellは理論上のピークパフォーマンスはすごいが、実際にはそんな性能はでないとのこと。結局「7人の小人」ことSPEに働かせようと思うと、メモリをやりとりをああやってこうやって、、とやっているうちにSPEの演算能力が相殺されてしまう、と。接触判定とかやるためには結局CPU間でデータ(というかメモリ)を密に共有しないといけないしね。
というわけでクタラギ氏の「美学」で決まった8個のSPEもあまり役には立たないということらしいのだ。げんに未だに「PS3でなければこのゲームは実現できない!」というものは発表されていないように思う。(Blue rayの大容量を生かすものはあるようだけどね)
しかし「将来を見越した膨大な投資」をやってしまったからには、その路線を捨てるわけにはいかない。この「将来を見越した膨大な投資」は性能向上の線がユーザニーズを超える手前であれば有効に機能したかもしれないのだ。
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しかし「イノベーションのジレンマが招く滝壺に向かって一直線」の組織の中で何ができるのだろう、と考えると暗澹たる気持ちになる。所詮将来のことは誰にもよくわからない。将来は予測するものではなく、描くものなのだ。そして組織の長が「Cellが作り上げるバラ色の未来」を語っている以上(それが何を意味しているか理解できなくても)そちらに進むしかない。
いや、たいていの組織では「夢を語る組織の長」すらいないことが多いのではなかろうか。ただなんとなくみんなが幻想を共有している。ソ連を仲介とする和平交渉。誰もがそんなことはあり得ないと思いながら、とりあえずその幻想にすがる。そして破綻が来る。
サブプライム云々も誰もが破たんすることを知っていながら、結局破たんするまで誰も何もできなかった。こうした「幻想が肥大し破裂する過程」には常に興味をひかれる。いつか引退したら調べて本を書きたいとかなり真面目に思っている。