映画評:ベンジャミン・バトン 数奇な人生

2009-02-19 07:06

例によってネタのない日は本家から転載。

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80歳で生まれ、0歳で死ぬブラッドピットの物語、かと思えば最後の時が近い母親と娘の会話が始まり少々めんくらう。

母親が、娘に” 日記を読んで”と頼む。そこからベンジャミン・バトンの物語が語られていく。生まれたときの異様な姿故、父親に捨てられた彼は、老人ホームのよ うな場所で育てられることになる。”成長”してからは船乗りになり、第二次大戦を経験し、、、と話は続く。

人は誰でもおむつをつけた赤ん坊からはじまり、おむつをつけた老人として終わる。年をとるに従い体は若返っていくベンジャミンもその例外ではない。その一生はあくまでも穏やか(Uボートと打ち合いをすることを穏やかというのなら)であり、

”人類の未来につながる秘密を持った人間”

として各国諜報部が争奪戦を繰り広げるなんてことはない。

人 はおむつをつけて始まり、おむつをつけて死ぬ。その短い間に人と出会ったり、恋愛をしたり、馬鹿な事をして相手を傷つけたり、家庭を作ったり、旅をした り、働いたり。そして年をとればみんな忘れてしまうのだが、それでいいのよ、とケイト・ブランシェットは語りかける。ピグミー族の男は”肌が何色だろう と、みんな孤独なんだよ”と言う。

なんでも演じられるケイト・ブランシェットは相変わらず見事だが、個人的にはブラッド・ピットの姿に感心 した。中身はいたずらっぽい青年である老人、とか中身は老人の10代の少年とか。CG+メイクの威力か、彼の演技力故かはわからないのだが、そうし たアンバランスさがうまく表現されていたように思うのだ。いかにも”英国美人でございます”といった外交官の妻がほれてしまうのも無理はない。

見ているうちにSteve Jobsが行った演説の一節が思い出される。

"君たちはもう素っ裸なんです。自分の心の赴くまま生きてならない理由など、何一つない。"

我ら、地域の仕掛け人!より

多くの人が感じる事だと思うが、どこか”フォレスト・ガンプ”に似た空気を感じる。少し”数奇な”立場にある人間を主人公にしてはいるが、描いてい るのはあくまでも”普通”の人生。そして悲喜こもごものイベントを取り入れながらその底には徹底して人生を、そして死を肯定する立場があるからではなかろうか。いまこうして書いてみれば、それはSteve Jobsのスピーチにも相通じることなのかもしれない。

今年のアカデミー賞に多数ノミネートされているそうだが、観れば納得である。隣で観ていた中学生は途中で携帯を見ていたけどね。映画の中の台詞に言う”折り返し地点をすぎた”年でないとこの映画の良さはわからないかもしれない。
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というわけで久々にこの映画には1800円の値段をつけることになった。

チェンジリングも期待はしているが、、監督が監督だけに”ずどーん”と思くなる映画という気もしている。