映画評:ミルク
2009-04-24 07:14
金曜日は恒例の本家から転載してお茶をにごそうのコーナー。
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映画の冒頭からショーン・ペンの見事な演技が炸裂する。いや、この人は本当にどんな役でも演じる。すごいなー、と思っていたら映画が終わった。
彼が演じたミルクが殺されたのは1978年だから私が高校に入った年。つまり(私にとっては)そう昔ではないわけだ。ゲイというだけで問答無用で解雇される危険性もあった時代。そうした中にありながら自らゲイである事を公言し、公職につくべく選挙に挑む。
あるいはまじめに丁寧に、映画的なフィクションを交えずにミルクの後半生-8年だが-を描いたということなのかもしれない。40歳にして"何もしていない"とつぶやき、San Fransiscoにパートナーと移り住む。何度落選してもめげずに戦い続けるその 姿。当選しても、全国規模でゲイの教師を追放しようという法案との戦いが待っている。その勝利の瞬間に、、観ているほうがあまり感動しないのはなぜだ?
この映画で描かれる恋愛関係は、"相手と同意できれば手当たり次第"といった趣だ。お互い同意しているのだから第3者がどうのこうのいうべきではないが、最後まで距離感が残る。同じく男性同士の愛情を描いたブ ロークバックマウンテンでは最初感じた違和感が消え、最後には"これは人間の物語だ"と思えた。この映画ではそれがない。
殺 された原因も、結局ゲイの権利云々とは関係ないではないか。殺人犯もなんだか普通の人で、特に追いつめられているようにもみえないし。。というわけでこれ 以上の値段をつける気にならないのであった。単に私が映画的な味付けに慣れてしまい、自然食を食べても味を感じないということかもしれないが。
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40にして何もしていないと思い、西海岸に移り住む。そこから8年、彼は公職につきそして暗殺される。
40にして立つ、というのはカエサルも同じだ。寿命が延びたことを考えれば40すぎてだいぶたってから立ってもいいはずだ。
などと考えるネタは山もりのはずなのだけどね。。結局印象に残ったのはショーン・ペンの見事な演技だけだった。