誰もが通る道-適応型UIへの期待と限界

2009-05-18 07:28

誰もが考えることだと思うのだよね。"状況に合わせたメニューを出せばとっても便利!"と。

というわけでこのようなものが発表されるわけだ。

人の行動はある程度パターン化されており、携帯電話に搭載されたGPSやFeliCaなどのセンサー類を利用してデータを取り、それを解析することで「ユーザーの状況をある程度、判断できる」(説明員)という。エイチアイでは、このセンサーデータの解析技術と、時間や状況に応じて変わるユーザーニーズを解析する技術を組み合わせたUIを開発。その成果をブースで展示している。

via: ESEC:ユーザーの行動を"先読み"してメニュー表示――エイチアイが提案するケータイUI - ITmedia プロフェッショナル モバイル

なぜこうしたシステムが"デモはされるけど、さっぱり実用化されないか"書いてみる。

人間の行動が"ある程度パターン化されている"のは正しい。しかし問題はすべて決まっているわけではない、ということだ。

確かにいつも朝出勤時に見るサイトは決まっている、、かもしれないがそうではないかもしれない。毎日ニュースを見る人もいれば、疲れた時には仏像を眺めたい人だっているかもしれない。あるいは通勤時いきなりトイレにかけこんでいるかもしれない。



問題は

1)センサーデータからユーザの状態を正確に知ることはできない。世の中にそうした類の研究は山ほどあるが、未だ一つとしてロクにユーザ状態を推定できるものを見たことがない。


2)仮にユーザ状態が推定できたとしよう。ユーザ状態に応じてメニューが変化する適応型インタフェースは、外れたときに"あれ、いつもメニューはどこに行ったんだ?"という戸惑いを産むということだ。つまり外れたときのコストが大きい。なまじシステムが"気を利かせる"ものだから人間は返って鬱陶しく感じる。

少し前からMicrosoft Officeを使っていた人ならば、"ユーザがよく使う"短縮型のメニューがあったことを覚えているだろうか。あれは実に不評だった。最初は便利な気がするのだが、そのうち必ず"たまにしかないメニュー"を使う羽目になる。あれこれ探し、メニューを伸ばしそのままにする。結局のところフルのメニューを最初から出しておいたのと同じことになる。

CHIではこうした分野の研究は山ほど発表され、ほぼ決着がついていた、、と思うのだが未だにこうしたシステムの発表は後を絶たない。というかそうした先行研究を調べ、それを克服する方法を開発した、というのなら話は別だが、ビデオを見る限り"誰もが思いつくことをやってみました"というものにしか見えない。

エイチアイは開発中のUIに、キャラクターがユーザーの代わりに操作を行ったり、キャラクターを通じてサービスや機能をレコメンドする仕組みを実装する計画だ。「まずは見た目をかっこよくすることでUIに興味を持ってもらい、その次にキャラクターを表示して(UIを搭載した)デバイスへの関心を引きつける。キャラクターには感情や知能があり、ユーザーの行動を判断して的確な情報をレコメンドする」(説明員)

via: ESEC:ユーザーの行動を"先読み"してメニュー表示――エイチアイが提案するケータイUI - ITmedia プロフェッショナル モバイル

"キャラクターには感情や知能があり"ってそんなに簡単に言える神経がうらやましい。無知であることは、簡単に幸せになる一つの方法。私から見れば実に馬鹿げた話だが、それに金を出す、という人間がいる限り、どんな研究でも存続しうるんだもんねえ。