映画評:パイレーツ・ロック

2009-10-28 07:12

朝から妙なトラブルが爆発する日は本家から転載

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豪華な出演者の演技は見事。また途中でうるうるした場面があったのも確か。しかし全体としてこれ以上の値段は付けがたい。

ロックが栄えつつあったころ、BBCでは一日45分しかロック、ポップを流さなかった。それゆえ北海に停泊した船から一日24時間ロックを流す"海賊船"は大人気になったのだ。

8人のDJ、何人かの船員、エンジニアそしてそこに送り込まれた18歳の男。後から考えればそれぞれの性格がそれなりにきちんと描かれていたのは見事だと思う。基本的には女人禁制の船だが、そこに時々女性が登場する。それでもって騒動を巻き起こす。

18歳の"男子校出身だからキスもまだ"の男は、なかなか良い役。男達が彼を慰めるシーンがこの映画の中で一番気に入ったシーンでもある。

その他それなりに楽しく観る事ができるが、思うにそれは芸達者の出演者達にささえられてのことではなかろうか。とはいえアカデミー賞受賞のホフマンがジャック・ブラックのように見えたのも確か。ブラックではこの映画は成り立たなかっただろうが。

な どと言っているうちそろそろ時間が気になる、と思ったところでクライマックスとエンディングを迎える。それらはあまりにもありきたりで映画的。目障りな海 賊船をなんとかつぶそうとする英国政府。彼らをもっと賢く、滑稽にすればこの映画3倍くらい楽しくなったかもしれん。個々の役者が乗っている全体の筋、そ れがどうにも弱い。

つまるところ"脚本がダメ"ということになろうか。いや、それはあくまでも相対的な話。こんなに面白い史実(衰退はもっ と現実的に起こったようだが)すばらしい役者をそろえてなぜここまでしか面白くないかなあ。使われている音楽は素晴らしいものばかり。しかし個人的に一番 感動したのは、クライマックスで流れるエルガー作曲、エニグマだったりする。

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こうした"ラジオを流す海賊船"に関して何か資料がないかとあれこれ探すがまだ見つかっていない。わずかにあったのは

"本家のラジオ局が、海賊船からどんどんDJを引き抜いた"

というものだ。おそらく本当に起こったことはそのようなことだったのだろうな。