インタラクション2011感想

2011-03-16 06:42

とういわけで3/10-3/11午後3時までのインタラクション2011の感想をば。私は混んでいるデモにはいかない人なので、私が見ることができたデモの中で、印象に残ったものを。

お弁当箱を介したコミュニケーション支援システム

なんというか発表者の意図を超えて、いろいろな妄想が広がるシステムであった。

パターンその1)お母さんが幼稚園児向けのお弁当を作っている。朝のおかあさんは忙しい。殺気だってお弁当を作り、子供をしかりつけ用意をさせ。。。
その様子をお弁当を食べながら見る子供。さて、どんな感慨を持つのか

パターンその2)男というものは、女性の隠れた努力をしることがない。こっちが苦労して作った弁当を、2分で食べて、黙ってんじゃねえよ!という彼女の「隠れた努力」をしらしめることができるシステム。

いや、聞いたところ開発者の意図は「お母さんが子供に"今日のお弁当は○○よ"と伝え、子供がお母さんに感謝の気持ちを伝える」システムとのことなのだけどね。

OrpheusBB: Human-in-the-loop型の自動作曲システム

CrestMuse 最終シンポジウム 2010 デモセッション「聴く」より引用:


自動作曲システム「OrpheusBB」
北原 鉄朗(日本大学), 深山 覚, 嵯峨山 茂樹(東京大学)[研究紹介サイト] [movie]
OrpheusBBは、システムが作曲した曲のメロディ(またはコード)を変更すると、それに合うコード(またはメロディ)を自動的に探し出して当てはめてくれ、全体として違和感のない曲に仕上げてくれる作曲支援システムです。このシステムを使うのに音楽の専門知識は必要ありません。メロディとコードの相互の当てはめは、「メロディがこういう音ならコードはこうなる」という情報を蓄積して統計的に処理をすることで実現しています。

ものすごく難しいことを裏でやっていることはわかるのだが、某氏がtweetしていた

「素人にも玄人にもありがたみがわからないシステム」

に同感だ。「もっとこう派手に」とか「ぐわっいう感じで」とか何かの方法で入力できれば、私も使うと思うのだけど。

幼児向け折り紙作品の創作支援システム

インタラクション2011より引用:

幼児向け折り紙作品の創作支援システム

1枚の正方形の紙を折ることで形を作りだす「折り紙」は,日本に古くから伝わる遊びであり,我々の多くが幼少期に体験するものである.近年では,折り紙の数理に関する研究の成果により,複雑な折り紙作品を創作するための技術が発達してきている.しかし,まだ手指を正確に動かす能力が十分に発達していない幼児らを対象とした,少ない手順で簡単に折れる折り紙作品の創作については,これまでに十分な研究がされてこなかった.そこで本稿では,4回以下の折り操作で作ることができる単純な折り紙作品を,新しく創作するためのシステムを提案する.本システムは,あらかじめ4回までの折り操作で作ることができる折り紙の形を列挙し,それをデータベースに蓄えておく.ユーザが動物の顔など,折り紙で作りたい形をシステムに入力すると,それに類似した形をデータベースから検索し,折り方を提示する.近年の計算機の性能の向上により,このような力づくのアプローチでも目的を達成することが可能となった.幼児向けの折り紙作品に見られる「目の追加」を実装するなど,より実用的なシステムを構築した.

「この折り方は幼児には難しいのではないですか?」という質問に対して(多分言葉のあやだと思うが)「いや、"幼児向け"というのは枕詞のようなものですから」と答えが返ってきた。

であれば「幼児」という言葉を外したほうが誤解がないのではないか。今のシステムはとても幼児向けとは思えない。

インタラクション2011より引用:

Fruit Plotter:ドライフルーツ画素を用いた食べられるディスプレイシステム

筆者らはユーザーのその時々の気持ちや提示したい情報を即時に反映したデザート(スイーツ)を作るための仕組みの実現を目指している.本稿ではこのような仕組みのプロトタイプとして,"ドライフルーツ"という素材に着目し,ドライフルーツを粉砕した粒を一画素(フルーツ画素)としてx,y平面上にプロットする手法を提案する

正直研究の内容はもう一歩詰めがほしいのだが、(気分が沈んだときに、それを反映したスイーツがでてきたら余計めげると思う)これを発表したグループのパンフレットが大きな反響を呼んでいた。

ChordxxCode=About Us=より引用:

About us

東京大学の女性博士研究者7人が集まるエンジニアリング・サロンです.


Philosophy  
chord xx code ∝ 幸道



女性的感性(chord)と,論理的思考(code)によって,日々の生活を分析し,

幸せを導くための新しいメソッドやデバイスの開発を目指しています.



CHORDxxCODE_Philosophy

希望だが、もっとぶっとんだものを作ってください。お茶女の「遠距離恋愛支援システム」のように他人に有無を言わせないほどふっとんだものを。

たとえば

これの女性版ですよ。
というわけで言及しないわけにはいかないだろう、LovePress++である。レベルがどうとかいうまい。有無を言わせぬこのインパクト。

カートグラムを用いた空間のアフォーダンスの可視化

これはすごい。やっていることは比較的シンプルで、GeoタグつきのTweetを数に応じて地図上にプロットしたもの。

何がすごいといって、(動画が見つけられないのが残念だが)本当に「都市が呼吸している」ように見えるのだ。朝が来ると人が集まる箇所がふくらみ、深夜にしぼむ。これを世界規模で見えるようにしたら、朝のウェーブとか、アフリカに広まる民主化の波が可視化できるのではないか。

デモ・ポスター発表 | 五十嵐Pより引用:

. 渡邊恵太、松田聖大、佐藤彩夏、稲見昌彦、五十嵐健夫
smoon: 計らなくて済むスプーン、インタラクション2011、3月10日、日本科学未来館. インタラクティブ発表賞
PDF 120KB   

渡辺さんの新作。意図するところは「ブラウザに閉じたWebではなく、Web上の情報と連動するロボット」とのこと(私が理解できた言葉だけならべてます)

実用されているところが想像できるだけに「別のものを計るときに洗わなくていいのか」と突っ込みたくもなるのだろう。そうした具体的な突込みがはいることは、偉大なことなのだが。

撓みのメタファを用いたビューポート制御インタフェース

こうした「地図をひじませる」インタフェースは山ほど提案されているが、「これは使えそうだ」と思ったのはこれが初めてである。よく考えられており、もう少しつめれば実用化できるのではないか。

Seek Rope: 曲げて切って結べるシークバー:明治大学理工学部 宮下研究室より引用:

Seek Rope: 曲げて切って結べるシークバー

seekrope.jpg

本稿では,シークバーの概念を拡張し,単に再生するだけではなく編集機能も包含したインタフェース シークロープ を提案する.このシステムは,固定されている棒(バー)のメタファではなく,柔軟に曲がる紐(ロープ)のメタファでインタフェースを再考したものである.時間軸を意味する線分を紐のように扱うことができ,「曲げる」「切る」「結ぶ」といった機能を持つ.これにより,シークバーの特性である再生位置のわかりやすさと再生位置の変更のしやすさを残しつつ,プレイリストの作成やコンテンツ編集を柔軟に行うことが出来る.

発想は良いのだが、現状では平行して演奏されるトラックとの本質的な差異がない。面白いものになるか「一生懸命実装しました!」で終わるかは今後次第。

これは(例によって)ものすごい。平たく言えば

「歌詞のテキストとMP3ファイルだけ入力してやれば、自由に操作できるデータを作成してくれる」システム。これさえあれば、流行の曲を自分流にアレンジして演奏するのもニコニコにアップロードするのも自由自在だ。

説明を聞きながら「これをGarageBandに取り入れたら$100多く払っても買う」

と言ったがそれは嘘ではない。

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今年からインタラクティブ発表は査読がなくなった。見る前は

「つまらないものが増えるのではないか」

と危惧していたが、この方針は正解だったと思う。LovePress++が見られるのだから。

そもそも「査読すれば発表の質があがる」かと言われれば(私にとってみれば)そうではない。今回の一般講演は「なんだこれ?」というものが(くどいようだが私にとっての話だ)多かった。(一日目の午後だけは議論がおもしろかったが)

などと好き勝手言っているが、じゃあお前はどうなんだ、と聞かれれば下を向いてしまう。そもそも私が面白いと思う研究はどのようなもので、どのような研究をみて残念に思うかは近々明確にする。それよりもなによりも

「じゃあ自分でやってみろよ」

といわれたときに「これだ」といえなくてはね。