創造する者と、解析する者

2011-03-22 07:17

少し前のことだが、「アナリスト」の採用試験を受けたことがある。会社からいろいろなデータを集め、将来の動向を予測する職業だ。

私のやってきたことから言えば、適合してもよさそうだ。しかし面接の間中ずっとこう考えていた

「あんたたちの予測をふっとばすような物を作りたい」

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先日この本を読んでいた。


以下のような記述がある。

同じ変遷が、ノートブックコンピュータと無線ハンドヘルド機器という二つの破壊的コンピュータ製品で、いずれ完了するだろう。当初最も成功する企業は、最適化された相互依存型アーキテクチャを持つ企業である。時期尚早にモジュール式戦略をとる企業は、競争基盤がまだ性能に置かれる初期段階には、性能面での競争に苦戦するはずだ。その後アーキテクチャはオープンに、産業構造は特化型へと進化するだろう。

この記述がなされたのはiPhone/iPadが発表される前だったことに留意する必要がある。確かにその時点では

「携帯電話とは、ノートPCの開発はやりつくされた」

と公言する人がいたのだ。そうなれば、製品はモジュール化され、オープンなアーキテクチャに基づき、安い部品を集めて製品を作ることができる会社だけが生き残る。

しかし現実に起こったことは

「いずれ完了するだろう」

どころではなかった。Appleが製品に要求されるレベルを蹴り上げたからだ。再度前掲書から引用する。

だが忘れてはならないのは、顧客のニーズも変化するということだ。通常この変化は、図5-1の点線で示したように、比較的緩やかなペースで起こる。だがときには、顧客が要求する機能性に非連続的な変化が生じ、図5-1の点線を情報に押し上げることもある。これが怒ると、産業はグラフの左側に向かって押し戻され、統合が競争優位の源である時代に時計の針が逆戻りする。

この場合顧客のニーズを変化させたのは、iPhone/iPadという「絶対にユーザインタビューからは生まれてこない製品」だった。メーカーが主導して、顧客すら気づいていなかった潜在的な要求を引き出したのだ。

さて、

無線ハンドヘルド機器の三国志において、それぞれの陣営がアーキテクチャをどのように構築しているかの差異は実に興味深い。

Apple:完全にソフトウェアとハードウェアを統合したクローズドなアーキテクチャ
Android:オープンなアーキテクチャ。アプリケーションにいたるまでオープン
Microsoft Phone:ソフトとハードは分離。しかしソフトの側からハードには強力な制限を設ける。

仮に前掲書に書いている理論が当てはまるとすれば、当初はクローズドなiPhoneアーキテクチャが勝利を収め、その後Androidが勝利することになるのだが、はたしてどうなるのだろうか。

ひとつだけこの「理論」から逸脱しているのは、今のところiPhone/IPadが異常とも思える価格競争力を保持している点だ。モジュール化が進み、それぞれのモジュールで価格低減が可能となればオープンアーキテクチャのほうが価格が下がるはずなのだが。

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ちなみに先ほどの面接結果は「一次でお祈り」でした。