イノベーションのジレンマPart2
2011-04-19 07:00
破壊的イノベーションを起こした企業は、いつしか持続的イノベーションに移行し、新たな企業からの破壊的イノベーションによって滅ぼされることになる。
しかしこのような展開を誰が予想しただろう。
米携帯ゲーム市場では、iOSおよびAndroidがニンテンドーDSのシェアを大きく侵食していることが、米調査会社Flurryが4月15日(現地時間)に発表した調査報告で明らかになった。
via: iOSとAndroid向けゲーム、ニンテンドーDSの覇権を脅かす――米Flurry調査 (ITmedia News) - Yahoo!ニュース
【拡大画像や他の画像】
Flurryが独自に分析した調査結果によると、米AppleのiOSを搭載するiPhoneおよびiPadと、米GoogleのAndroid搭載端末向けのゲームの2010年の売上高は、米携帯ゲーム市場の34%を占めた。同市場では任天堂のニンテンドーDSが圧倒的な首位に立っているが、2009年の70%から2010年には57%へとシェアを大きく落としている。ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション・ポータブルも2009年の11%から9%にシェアを落とした。携帯ゲームの総売上高は2009年の27億ドルから24億ドルに減少した。これは、比較的低価格なゲームが多いiOSおよびAndroidの台頭によるものとFlurryは指摘する。
持続的イノベーションの権化、PSPに対し、破壊的イノベーションをもたらしたDSが圧倒した。任天堂の岩田社長は一貫して
「任天堂の敵は、ソニー、Microsoftではなくゲームの無消費」(当方の意訳)
と訴えてきた。つまり今までゲームを敬遠してきた人たちにゲームをプレーしてもらうのが目的だったわけだ。これは破壊的イノベーションの性格にぴったりあてはまる。実際岩田氏はこのような講演も行っていた。
テーマは「ゲーム業界におけるイノベーションのジレンマからの脱却」
via: 任天堂岩田社長講演会@大岡山のメモ - Unchained Life
さて、DSとWiiにより、任天堂はゲーム機の中で大きな成功を収めた。ところが思わぬところから敵が現れた。スマートフォン上のゲームである。
スマートフォンは定義によってネットに接続されている。したがってゲームをダウンロードだけで使用することになんの問題もない。ゲームソフト、ハードの小売チャンネルがどうとか気にする必要は全くないわけだ。またハードの投資もいらない。スマートフォンを所有している人であればそのままゲームをすることができる。
また携帯電話というのは、いつでもどこでもユーザとともに存在し、一瞬で起動することができる(というかどうでなくてはいけない)スキマ時間をつぶすのにはぴったりだ。
加えて、ソフトの価格が安い。3000円だのというパッケージの価格や、月315円(黙っていればいつまでも金を取られる)のガラケーゲームと違って、無料か105円買い切りである。これではゲームメーカーの経営が、とか言っている間にDSやWiiが目指したものより
「もっとカジュアル」
なゲームがシェアを伸ばしているのだ。
実際我が家では、一時期iPhoneがゲーム機として十分機能していた。今はケータイを一切持たない生活に戻っているが、そのうちiPadがゲーム機として活躍するようになるだろう(iPad2早く売ってください)となると我が家にDSの出番はないかもしれない。
さて
野次馬として興味深いのは、今後ゲームメーカーがどちらに向かうかだ。ゲーム廃人をターゲットとした隙間産業に縮退するのか。あるいは新たな
「岩田マジック」
を見ることができるのか。任天堂の株を持っているわけでもない気楽な観察者としては後者を希望するところだが。