成功者の言葉
2011-05-26 06:49
というわけでザッポスである。
印象に残る点が多い本だが特に驚いたのは以下の記述である。ザッポスにおいては企業文化が重要である、との認識の元に「ザッポスブック」をつくろうという話になった。その作り方だが
社員、顧客、ビジネス・パートナーがあなたの会社の企業文化について語ったことをすべてそのまま本にしても構いませんか。もしできないなら、本をつくるために何が必要でしょうか。ザッポス伝説 p233
誤字、脱字のほかは無編集で載せたとのこと。
これには本当に驚いた。私は前働いた会社で、社内報に「入社1年目の社員たちの声」を載せたことがあった。
「学生の頃は、プログラミングで徹夜も楽しかったけど、この会社じゃそんなことは意味ないな(外注管理ばかりしているから)」
とかそうした「生の声」が掲載され大騒ぎになった。
(ちなみに、次号にのった「幹部の反響」は「甘いことを言っているんじゃねえ」だったが。まあ「10年泥のように働け」世代の人だからねえ)
これはあの会社で私が遭遇した唯一の「いいなあ」と思った出来事であった。しかし普通の会社ではまずそういうことは起こらない。企業文化を重視している、と称する会社はたくさんあるが、社員の声を無編集で書籍化する度胸のある経営者はそうそういないと思う。
成功者(あるいは自分で「成功した」と思っている人)の言葉というのは通常極度に退屈である。ぺらぺらと自分の「成功の秘訣」を語ったところで、聞いていて楽しいは自分だけ、ということが多い。しかしこの「ザッポス伝説」は実に面白かった。こうした本をCEO自身が執筆する、ということは何よりもザッポスという企業の宣伝になると思う。
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少し話がそれるが、少し前にMITの石井教授の元に、糸井重里氏が訪問したときの様子が公開されていた。
最初の2回は実に退屈だった。石井教授が一方的にしゃべっているだけだから。糸井氏がおもしろいツッコミをいれて、話が発展するかなと思えば「次にいっていいですか」と一方的に話を打ち切る。
糸井氏が社長と対談したシリーズというのが別に公開されている。読んでみると、任天堂の岩田社長だけが面白く、あとは実につまらない。いや、もちろんどの社長も私などが及びも付かぬ立派な人であることは間違いないのだが。対談になっておらず、社長がしゃべり続けるだけなのだ。
石井教授もそのパターンか、と思ったが後半は面白くなった。石井氏の講演はUstreamとかで見ることができるが、そうした講演では聞けない話がいくつもでてきたからである。
アメリカに来てやっていくことはインフェリオリティー・コンプレックスばかりです。劣等感の塊です。
via: ほぼ日刊イトイ新聞 - 石井裕先生の研究室。
「成功者のくだらない演説」で終わらないところが、糸石、石井教授の凄さかもしれん、と考えた。