数値的裏付けがどうした
2011-06-16 06:51
最近「その数学が戦略を決める」という本を読んでいる。
内容としては「回帰分析、ニューラルネットで未来予測をすると専門家よりずっとすごいよ!最高裁判事の判決からワインの値段から教育の効果から、映画がヒットするかまでなんでもわかるよ!」
というものだ。
非常に面白い本なので、本を読んだ直後は「絶対計算」の信奉者になっても無理はない。しかし「訳者による付記」はもっと面白かった。以下引用する。
通常、この手のモデルを作るときは、もっともらしい変数をいろいろ選んでみて、いちばん統計的にうまくあてはまっているものを選ぶ、というプロセスを経る。で、なぜその変数がうまくあてはまるのか、後付けであれこれ理屈はこねるが、通常は「とにかく統計的にうまく出たんだもーん」という以上のものはない。つまるところ、モデルは複数存在し得て、そのどれが正しいか議論が必要な場合もあるということだ。あるいはデータの取り方によっても結果は変わる。その数学が戦略を決める P407
包皮切除とエイズ感染との関係も、もとデータのサンプリングを変えると結果がかなり変わり、有意とはいえなくなってしまうという批判があるとのこと。その数学が戦略を決める P407
また当然のことながら、回帰分析は、データを得た過去のシステムと未来のシステムに連続性がなければならない。システムが変わればそこでおしまいである。
こうした限界とかなんとかをちゃんと理解していれば、その活用がちゃんとできる、ということなのだろう。原発事故に関するデタラメな「分析」やら「予想」が飛び交っている昨今では特にその思いは強くなる。
逆に本書に書いてはあるが、日本では聞いたことがないのが「医療診断に絶対計算を活用する」システムのことだ。このシステムが医師に
「これまで検討していなかった大きな別の診断を指摘したケースが10%くらい」
とのこと。逆に言えば大金を払ってシステムを構築しても医者が「大間違い」をしている確率は10%ということもできる。
しかしそれが家族の健康に関わることであれば、ぜひともこのシステムを日本でも普及させてほしい。1万1000種にものぼる様々な病気があり、その診断、治療技術も日々進歩しているのだと思う。街で営業しているお医者さんがいかに勉強熱心でもその進歩についていけるとは思えない。
しかしなあ誰かが言った「先生、と呼ばれる職業はろくなもんじゃない」との言葉によれば、日本三大ダメな職業の「教師、医者、議員」の領分だからなあ。。
とかなんとかいいつつも本書は面白い。私が一番感心したのは、著者が「体重を減らし、維持した」グラフを載せている点だ。
ご様々な分野で高説を述べる人は多いが、いつも私は
「それであなたの体重は?」
と聞きたくなる。体重減少のための方策は自明。であれば、自分の体重を管理できないのに高説をたれる人間の言葉を信用する気にはならない。