垂直統合から水平統合への移行(笑)

2011-08-16 07:20

NokiaとMicrosoftがくっついたあたりから(実質的にはそういうことだ)疑問符が付き始めた標題の「命題」だが、いよいよ怪しくなってきた。

GoogleがMotorolaのMobile部門を買収したのだ。

もちろんこの動きを「目的はMotorolaが保有する特許のみ」と考えることもできる。たとえば2chのこの書き込みのように。

直接端末製造に乗り出すんじゃなくて、大量の特許侵害でおなじみの
AndroidのメーカーがMSなりAppleなりに訴えられたときに、反訴用の
特許を貸し出すだけの目的だと思う

その場合、もちろん特許以外のものは全て売却、従業員は全部解雇

via: Googleがモトローラを約125億ドルで買収

しかしまあそれじゃおもしろくないから、別のシナリオを考えてみよう。

言葉遣いはいろいろあるが、Androidに関しては以下に引用する意見が大多数だったと思う。

水平分業のAndroid搭載デバイス、進化と競争が持ち味

水平分業モデルは市場の成長と技術の進化を促す。Android搭載デバイスは、多様性を増しつつある。複数のメーカー、ソフトウエア・ベンダー、通信事業者が、それぞれ得意分野にフォーカスして付加価値を生み出そうとしている。Androidのエコシステムには、あちこちに大きな隙間が空いている。どのようにしてAndroidエコシステムに「食い込むか」が各社の課題だ。

GoogleはAndroidのエコシステムで大きな影響力を持ってはいるが、その支配力は限定的である。具体的には、以下のようになる。

via: 垂直統合のiOSと、水平分業のAndroid──エコシステムの「隙間」の違いを考える - Publickey

「多様性=競争=良いこと」という単純な図式を信奉していた人は多かろう。しかし現実を見ればその図式に疑問符が付き始めていたのも確かだ。

私はAndroidはプラットフォームではなく、OSだと主張している。実際AndroidはOSとして普及しているが、その上のエコシステムは存在しない。(ゴミアプリの山をエコシステムというのは自由だが)あまりにも分断化が進んでいるからだ。アプリをインストールしたとして、それが自分の機種、OSで動くかどうかは神のみぞ知るところである。

最初に挙げたシナリオを捨てた場合、この買収は現状のAndroidビジネスが期待ほどうまくいっていないことに業を煮やしたGoogleが決断した

「Androidプラットフォームを構築するため、携帯ハードウェアビジネスを焦土化する動き」

と見るのが適当だと思う。

それにしても、はしごを外された形になったのはAndroidを採用した他のスマートフォン・メーカー。全く異なるビジネスモデルを持つGoogleは、これで文字通り「破壊的な価格」で携帯電話を販売することが十分に可能になったわけで、これでAndroidスマートフォン・ビジネスは「デバイス単体では利益が出せないビジネス」になることはほぼ確実である。

via: Life is beautiful

Googleのコアビジネスは、あくまでもGoogleのサービスを利用させることにある。ハードウェアは利益を出さなくてもいいのだ。そして今やGoogleはその手段を手に入れた。Motorolaを使い、利益0で携帯電話のハードウェアを配れば良い。Android OSを使い、ハードウェアを作ることで利益をだそうとしていた他のメーカーは全て破綻である。

Googleにしてみれば、これでようやくAndroidの分断化という問題を解決することができる。正しいのはMotorola製の端末。これさえ買えばAndroidアプリはちゃんと動きます。他の機種でどうなろうと知ったことじゃありません。

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さて、次の疑問は

「はたしてGoogla(Google+Motorola)は消費者にとって魅力ある製品をつくることができるか?」

である。

いつも未来は予想を裏切る。だから将来に対して確たることを言うのははばかられる。しかし今までの両社の歴史を見れば

「そんなことは起こりそうにない」

という結論が簡単に導かれる。MotorolaもGoogleも他の部門はともかく、消費者の目から見た時にはゴミの山しかつくることができないのだ。製品としての魅力は別として、Appleに匹敵するほど安くハードウェアを作ることができるか?これにも疑問符がつく。

もうひとつの懸念は、Googleの没落だ。

Additionally, Google just added 19,000 new employees. 19,000! Google itself only has 29,000. Google just increased the size of itself by 60%--in a company in which culture is crucial. Does Google really have the management in place to manage that?

via: THE TRUTH ABOUT THE GOOGLE-MOTOROLA DEAL: It Could End Up Being A Disaster

Motorolaはその「素晴らしい企業文化」でも有名である。その文化をもった社員を19,000人も雇用することになる。対してGoogleの社員数は29,000。Googlaの社員のうち40%はMotorola文化を持った人間ということになる。はたして

「混ぜ物で薄まったGoogle」

はこれまでと同じようにGoogle文化を守り、発展していくことはできるだろうか?

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という考察を経て「明るい将来像」を描いてみよう。

iPhoneはSteve Jobsの引退(どんな形にせよ)をのり超え、携帯電話のBMWとしての地位を確固たるものとする。しかしもちろん市場を100%支配することなどありえない。低価格帯にはGoogla製造のAndroid端末が存在していて、台数のシェアでいけばそちらの方が高い。

誰ひとりとしてGoogla端末がほしいとは思っていない。しかしそれしか買えない人のほうが多いのだ。

いや、もっと低価格帯には、Feature Phoneのメーカーがひしめき合っている。AppleとGooglaを除いた全てのメーカーは今やここで血みどろの競争(というより足のひっぱりあい)をしている。一時は、Android採用でスマートフォンビジネスが花開く夢をみることができたのに、担当者はぼそぼそとつぶやく。

いや、忘れちゃいけないのがWIndows Mobile.Microsoftは鐘や太鼓で宣伝を続ける。Bingが使えます!Xboxと連動です!今やMicrosoftの一部分になったNokiaは大量に端末を売ろうとするが、Windowsマークのついたハードゥエアに誰も見向きもしない。。
(最後は個人的感情がはいってます)
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というわけで、私の意見はこの記事と同じだ。

Bottom line, a bold move by Google. But one that raises a lot more questions and challenges than answers. And one that could end up being a major disaster.

via: THE TRUTH ABOUT THE GOOGLE-MOTOROLA DEAL: It Could End Up Being A Disaster

私は携帯電話持ってないから、全部「他人ごと」なんだけどね。