負の連鎖の恐怖
2011-08-22 06:39
こうした問題についてはかなり慎重に考えるべきであると思う。したがって現時点では気になった二つの文章を引用しておくことにする。
ベストセラーとなった Freakonomics(日本語訳『ヤバい経済学』)において、経済学者のスティーヴン・レヴィットと共著者スティーヴン(ステファン)・ダブナーは、ニューヨークの犯罪が減少したのはすべて割れ窓理論のおかげである、とする考えに疑問を投げかけ、その根拠として、
- 犯罪数の減少は、割れ窓理論を使った対策を始める前から始まっている。
- そもそも犯罪数の減少は全ての州で起こっている。
- 他の州の犯罪数減少と比べて統計上有意な差はない。
事をあげている。 代わりに彼は、1990年代に入る数年前に、中絶が合法化されたことに注意をうながした。子供を育てる能力が最も低い女性達(貧困層、麻薬中毒患者、生活不安定な)は中絶を選べるようになり、それによって崩壊家庭で生まれる子供の数が減少しつづけた。ニューヨークで起きる犯罪のほとんどは16歳から24歳の男性によって行われている。したがって、この若年人口の減少によって、犯罪発生率の減少が結果として起きたのである。
via: 割れ窓理論 - Wikipedia
結果、親子3代、殆ど働きもせずカウンシルフラットに住み続けている、という話は、もはやイギリスでは珍しいものではなくなっている。このような状況で子供が未来に希望を見いだせないのは当然のことだ。少なくとも彼らには、サッカーの才能に恵まれてプレミアリーグに行くくらいしか、この生活を抜け出る手段がないように見えるのではないか。これでは、リオデジャネイロの山肌に広がるスラムの子供にサッカー以外の未来がないのと大して変わらない(実際には、カウンシルフラット生まれでも頑張って勉強して、奨学金で博士号まで取る人もいる。そのための制度や組織もある。ブラジルのスラムに比べれば、カウンシルフラットの子供達は圧倒的に恵まれているという点は強調しておきたい)。このような状況で鬱屈しないでいられるのは、よほど心の強い人間だけだろう。
今回暴動でワイン1本を盗んで歓声をあげ、昨日裁判所で有罪を宣告された子供達は、多くがこういう鬱屈と共に生きているのだと思う。
via: イギリス暴動の裏にある鬱屈と絶望について
この二つの文章から伝わってくるのは、世代をついで受け継がれる負の連鎖がもたらす影響だ。
これが妥当な意見なのかそうでないのかはもう少し調べてみないとわからない。