光速を超えるのだ
2011-10-25 06:35
ニュートリノが光速を超えた、というニュースが読売新聞の一面に乗ったときは冗談かと思った。しかしそうした
「科学のセンセーショナルなニュース」
が必要以上に大きく取り上げられるのもいつものことなのだろう。
こうした報道の常として、後の「訂正」は全く取り上げられない。先日こんな記事を読んだ。
光速を超えたはずのニュートリノの進路に黄信号が三つ点灯しました。
via: ニュートリノ減速す - Researchmap
まずは先週グローニンゲン大から出た論文 [ここ] で、実験解析のエラーの可能性が指摘されています。
実験では、732km離れた発射地点と観測地点の両方の時計を、GPSで合わせていました。上記論文の著者ヴァン・エルブルク博士によると、どうもOPERA実験チームの解析では、GPSを積んだ衛星の運動の相対論的効果のうちで「ローレンツ収縮」と「検出器の相対運動」を入れ忘れていたらしい。それを考慮すると、ちょうど64 ナノ秒だけニュートリノが遅く到着してる勘定になる、というのです。
もちろん専門家が間違っていたということは、大いにありうるし、大きな転換点を迎えたときはそうしたエピソードが満ち溢れている。しかし今回のニュースに対する専門家のコメントは以下のものに代表されているのかもしれない。
----- それにしても査読を通る前の生煮えデータの段階で、もういきなり記者会見ですか。「無名のギリシャ人選手100mを6秒92、驚異の記録」みたいな感じだね。「ジャマイカ人」で「9秒19」とかにしとけばまだしもねえ。
via: 光速を超えるもの - Researchmap
いや、もちろんギリシャからそうした驚異的な世界新記録が出てきてもいいんだけどね。
私が知りたいのは、そうした段階で「記者会見」を行った人たちの意図だ。まあいろいろ事情があるのだろうけど。
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もう一つ「大きく発表、こっそり訂正」の例をあげておこう。
【帯広】通信大手ソフトバンク(東京)が、帯広市の帯広競馬場に建設する太陽光発電実験プラントの発電規模が、最大で100キロワット程度になることが7日分かった。同社は当初千キロワット程度を想定していたが、プラント設置にかかるコスト面などを考慮したための「下方修正」とみられる。<北海道新聞9月8日朝刊掲載>
そういえば、最近「風力発電で、原発と同じ電力をまかなえる」とかいう話を聞かないねえ。とはいえ
「原発なくても風力発電でまかなえるそうじゃない!」
という意見だけはそこかしこに拡散しているのだろうな。