受賞の価値

2011-12-21 07:00

こんな記事を見つけた。

選考委員からの投票により選出された、2011年を代表するスマートフォンは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズのAndroid搭載スマートフォン「Xperia acro SO-02C/IS11S」だ。

via: スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2011:2011年を代表するスマートフォン、発表! (1/2) - ITmedia +D モバイル


こうした「審査員が選ぶ賞」というものは、基本的に私にとって縁遠いものだった。過去形で書いているのは、40すぎてぽつぽつそうしたものをもらうようになったからだ。

しかしそれはここ数年のこと。それまでの40年間で「賞がいかに無意味なものか」に関して確固たる理論を自分のなかで確立した。

この記事に掲載されている「専門家達の言葉」を読むと思わず微笑んでしまう。

今年最大のトピックスはやはり、Androidの大躍進。国内において牽引役となったのはいわゆる"ガラスマ機能"を搭載し、フィーチャーフォンからの乗り替えやすさに配慮した端末群です。

via: スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2011:2011年を代表するスマートフォン、発表! (2/2) - ITmedia +D モバイル

ガラスマバンザイ!といことなのだが、どこの世界の話だと思ってしまう。

この事象は本当に起きるのだろうか。試しに、WiMAXとテザリングをオンにして、auのラジオアプリ「LISMO WAVE」を起動しながら充電を続けてみた。バッテリー残量の確認にはBattery Mixアプリ、充電器はau純正のものを使用した。すると、本体が熱くなり、これ以上充電できない旨のアラートが通知バーに現れ、充電が停止した。

via: 「故障ではない」:「ARROWS Z ISW11F」、本体発熱時に充電や一部機能が停止する事象発生 - ITmedia +D モバイル

iPhone 4Sの登場で、携帯販売ランキングがかつてない光景になっている。上位6モデルにはソフトバンクとKDDIのiPhone 4Sがズラリ。どちらのiPhoneが首位を獲得したのかも含め、チェックしていこう。

via: 携帯販売ランキング(10月10日~10月16日):iPhone販売合戦、開幕 海外勢モデルで埋まるトップ10 (1/4) - ITmedia +D モバイル

しかしこれが「専門家」というものなのだろう。コメントを読んでいって、唯一読む価値があると思ったのは神尾氏のものだ。しかしずらりと他の専門家を並べ「総合得点」をとれば、Xperiaがベストになる。いや、すばらしい。

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と他人の言葉をあれこれしても意味がないので、私が考える今年の「携帯情報端末関連トピック」を列挙しよう。

1.災害時の携帯情報端末の役にたたなさ:もっと正確にいえば、IPは役にたたん。震災時使い物になったのは、公衆電話とワンセグだった。この事実には深い意味があると思うのだが、みんな喉元過ぎれば熱さを忘れてしまうのだろうな。

2.Androidの分断化、セキュリティリスクの顕在化:従来から言われてきたことだが、この一年でそれが明らかになってきたと思う。このふたつの問題は密接に関連しており、分断化故、端末ごとにアップデートのサイクルが異なる。おまけにそもそもメーカーにはアップデートを行う理由がない。ディメリットは明白だが。

スペック上はAndroid 4.0へのバージョンアップは可能といえる。木戸氏も「バージョンアップは積極的にやりたい」と話す。「なかなか言えない事情もある」ためこの場では明言を避けたが、「社内ではバージョンアップありきで検討している」とのことなので期待したい。ただ、バージョンアップは1機種開発するのと同じくらい時間がかかるといい、簡単ではないことを理解してほしいとした。

via: ITmedia読者×シャープ開発陣:王道路線で目指すは"究極のスマートフォン"――座談会で見えた SH-01Dの全貌 (3/3) - ITmedia +D モバイル

しかし古いOS上の脆弱性はそのままだ。Googleはひたすら前に進んでいるが、こうした問題には全く知らんぷりである。

また「自由なAndroid」はマルウェアが闊歩する世界である。無料ゲームをインストールしたとして、それが何をやっているかは誰にも分からない。DocomoがAndroid端末向けに無料ウィルス対策サービスを提供しているのは理由のないことではない。


3.AndroidのOSとしての普及とWindows Phoneの予想以下の不振

などと私が言ったところで、Android搭載携帯電話の数は増える一方だ。今やOSとしてのシェアはiOSを圧倒している。ほとんどの人はセキュリティがどうとかいっても気にしないのだろう。仮に気にしたとして、Docomo大好き、という人には何か選択肢はあるのだろうか?

Windows Phoneがとっているモデルはかなり興味深いと思う。ハードウェアに強力な制限をかけている意味についてAndroidを礼賛している人は考えたことがあるのだろうか?

「閉鎖的」なiOSと「自由な」Androidの中間にある存在として、WIndows Phoneの存在は面白いと思う。実際に触った人に聞くとなかなか評判もよい。しかし現実的には存在しないも同然だ。これは予想以下の不振だった。

国内では単に対応機種がないだけ、なのだが米国でも不振が続いている。NokiaがWindowsPhoneにコミットすることで、この図式に変化が生じるのか、あるいはNokiaがWindows Phoneと同じ運命をたどるのはかまだわからない。

4.スマホのキャズム超え

私の姪たちがスマホに乗り換えたのには驚いた。2010年に、2012年スタートのあるサービスの仕事をしたことがある。お客様は「スマホはちょっと違うだろう。ガラケーが主体」とガラケー向けデザインを一生懸命つくっていた。iPhone原理主義者の私はちょっと首をかしげながらも、そういうものかと思っていた。

それから一年経ってみると、そのサービスからは「ガラケー」の陰も形もなくなり、スマホ前提になっている。これほど急速にスマホへのシフトが進むと誰が予想できただろう。

5.日本メーカーの沈没

思えばiPhoneが初期の成功を収めたときに「こんなものすぐに同じものができる」「Appleはブランドイメージで売れているだけ」と言っているころが最後の花だったのだ。
当時は「日本メーカーの製造技術はすごいが、ブランドイメージ作りがヘタ」とか大真面目に論じられていた。今年になってから明らかになったことは、それが大嘘だったということだ。

富士通東芝モバイルコミュニケーションズの輝かしい経歴(2011年)


2/10 世界初、メールのできないスマートフォン風情弱発見器REGZA Phone IS04を発売

10/19 世界初、充電のできないタブレット風石板Arrows Tab LTE F-01Dを発売

11/18 世界初、通信通話のできないスマートフォンT-01Dを発売したと思ったら同日に発売中止

12/17 世界初、カクカクタッチパネル(R)を搭載したスマートフォンArrows Z ISW11Fを発売 キャッチコピーは「デュアルコアなのにカックカク」

via: ふぇー速 : 【不具合満載】国産超ハイスペック端末「ARROWS Z」がマジ産廃だった件について

Docomoの宣伝を見る限り、ガラスマは日本人女性向け「カワイイ」をうりにするつもりのようだが、そうした割り切り方が必然と思える。もはや同じ土俵で勝負することはできない、としか思えない。

6.携帯情報端末のゲーム機化

言いたいことは「ハードだけつくっても商売になりません。ハードはコンテンツを運ぶプラットフォームとしての役割しかありません」ということが明白になったということ。
前にも書いたがそんなことは40年前から分かっていたのだ。


つい数十年前まで、日本の製造業においては、デザインなどというものは、ほとんどかえりみられなかった。品質がよければ見かけはどうでもいい、ちおう考え方であった。ところが現在では、その品質ということばの内容が変化しつつある。その製品に付加された情報的価値こそが品質となりつつあるのである。工業の時代においては、ものが動き、それに情報がのっていた。ものが情報を動かしていたのである。いまやそれとはちがった様相を呈し始めている。うごくのは情報である。ものはそれにひきずられている。需要は情報にあり、ものそれ自体は、情報をのせる台にすぎないとさえいえるであろう。

情報の文明学p231 1971-1988

via: ごんざれふ

タブレット端末で、唯一iPadに挑めるのはKindle Fire。他の凡百の端末は存在しないも同然である。

7.依然として見えないAppleの次の一手

私の貧弱な想像力では、Appleが次のiPhoneをどうするつもりなのか予想できない。ここ数年は新しい方向性を小さく打ち出し、その結果をフィードバックしているようだ。Siriは話題になったが、それが新しい方向性なのか、話題で終わるのかはまだわからない。「次のハードウェア」についても同様だ。

ハードウェアについては来年のどこかで明らかにされるとは思うが。

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これだけ好き放題書いておいていうのはなんだが、今年は携帯電話を持たない幸せな一年であった。会社から貸与されていたiPhone4を初期化して箱に収めたときの開放感は未だに忘れられない。

家に帰れば、奥様はメールの着信音がなるたび席をたって手のひらを覗き込んでいる。もちろん意見はしないが、ああいうことはしたくないな、と思う。それが「贅沢」であることは分かっているのだが。