WISS2011に行ってきたよ(その3)
2011-12-07 07:15
というわけで、本日は「ぬいぐるみ」に関する二つの発表について。
まずは登壇発表+デモがあったPINOKYだ。
既存のぬいぐるみにリング型のデバイスをはめる。リングの内側にモーター+車輪のようなものがついており、それが動くことでぬいぐるみを動かす。手で動かして動きを学習させたり、ずいぶんいろいろな学習モードがある。
一見すごい、と思う。しかし実物をみて「これを子供にあげたい」とは思わなくなった。問題は二つある。一つはうるさいこと。ギアの音がジージー言う。次に外装にフェルト(?)などはって外観にも気を使っていることはわかるのだが、やわらかいぬいぐるみと、巨大ロボットのようなデバイスの外観はマッチしない。
より本質的な問題は、登壇発表の時に園山氏が指摘した以下の点だろう。
「ぬいぐるみを動かすことが本当に正しいのか。子供はぬいぐるみを自分で動かしたりして、あれこれ想像している。その想像を損なうことにならないか」
モモという本にこんな一節がある。
もちろんこういうおもちゃはとても高価ですから、モモのこれまでの友達はひとつももっていませんでした。-モモがもっていないことは言うまでもありません。とりわけこまるのは、こういうものはこまかなところまでいたれりつくせりに完成されているため、子どもが自分で空想を働かせるよちがまったくないことです。ですから子供たちはなん時間もずっとすわったきり、ガタガタ、ギーギー、ブンブンとせわしなく動きまわるおもちゃのとりこになって、それでいてほんとうはたいくつして、ながめてばかりいます。-けれで頭のほうはからっぽで、ちっとも働いていないのです。モモ p110-111
ここで引用した内容と、園山氏の指摘の心は同じなのではないかと思う。残念なことにこの質問に対して発表者がなんと答えたか忘れた。あまり印象に残る内容ではなかったのだろう。
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でも発表ではもうひとつの「ぬいぐるみ」が発表されていた。SmileSnailである。
特徴
via: SmileSnail | maki.hogel.org
- ユーザに過度に干渉しない動作
- 生活になじむ形状
まだ未完成というか駆け出しの段階ではある。しかしこちらのほうが私にとってはおもしろかった。というか「想像を働かせる余地」があった、ということかもしれない。
マッスルワイヤというデバイスを用いているので、音はほとんどしない。しかし早い動きは不可能だ。しかし「感情を穏やかにコントロール」することを考えれば、この選択は適切だと思うのだ。
発表者といろいろ議論して、例えばこんな方向性があるのではないかと思った。既存の「お気に入り」のぬいぐるみに服を着せるような形でマッスルワイヤを取り付ける。もちろんその方式では細かい動きはできない。
しかし感情を表すのであれば「普通の姿勢」と「背筋を丸くし、顔を落とし、手を前に出す」という姿勢の2種類だけでいいのではないか。
例えば、彼氏に送信したメールだけを入力とする。そのなかの感情を表す単語だけを抽出し、(彼氏に対して)攻撃的なとげとげしい言葉が入っていれば、ぬいぐるみがしょんぼりする。そうでなければ普通の姿勢。それだけでも
「自分が彼氏に対してぶつけている感情」
をフィードバック式に把握することになり、役立つのではないかと思う。しょんぼりしたぬいぐるみを見て、ユーザが考える。この「想像力を働かせる余地」が大切なのだ。
ちなみに、この方がポスターで使っていた
「不機嫌な顔」
と
「もっと不機嫌な顔」
はとっても素晴らしかったのだけどさすがにネットでは見つからないようだ。