九州工業大学のPBLプロジェクト成果発表会に参加したよ
2012-01-26 06:55
というわけで九州工業大学のPBLプロジェクト成果発表会に参加した。(なぜかページが消えているので、Googleのキャッシュにリンク)
最初は、普通の大学の発表会だと思っていた。会場に一歩足を踏み入れたところで「をを」と思う。司会はプロを二人雇い、機材も本格的だ。舞台には移動式のカメラも設置され、状況に応じて画面を切り替える。このものすごいリソースはどこからやってきたのだろう。
PBLとはPorject -based learningということで「課題解決型学習」なのだそうな。謳い文句には「問題発見、問題解決」という言葉もあったように思う。
3年生が一年かけて取り組んだ成果の発表会、ということでほぼ全員スーツである。一グループだけ普段着だったのだが、それはひとりだけスーツをもっていない人がいたためとのこと。
●●班と名前がついているので何かと思えば指導した教官の名前とのこと。教官によって「課題」の与え方が異なるようだ。あるグループのプレゼンによれば、ある教官は「音声認識を使うこと」とだけ言ってあとは何もしなかったとのこと。
手のだしかたのレベルは様々だが、大きく
「問題発見」を学生に行わせたグループ
と
「問題は与え、問題解決を学生に行わせたグループ」
にわかれていたように思う。
先ほど述べた「音声認識を使うこと」だけが制約条件だったグループは「モテ声」を判別するプログラムを作っていた。人間にはモテる声というのがあるのではないか?そうした仮説を元にあれこれ試行錯誤してモテ声判別プログラムを作成する。
基調講演を行った明和電機の土佐社長の言葉を引用しよう。
「モテる、という人間の感性に挑む、破綻するに決まっている研究なのだが、そこに果敢に挑んだことを評価したい」
もう一グループはプレゼン中何度も「我々のプレゼンの目的は、聞いた人が太陽電池へのイメージを変えてくれることです。屋根に載っているものばかりが太陽電池ではない。太陽電池はもっと身近なものになりうるのです」
と繰り返していた。彼らは色素増感太陽電池に文字を埋め込んだ上で作成していた。彼らは審査員の投票で一位に輝いた。
問題発見、という点ではこの2グループが傑出していた。他のグループは基本的に
「先生から与えられた課題をがんばって解きました」
というものだった。こうしたプレゼンを聞いていると、その努力に感心しながらも「結局それをやることで何がしたかったの?」と聞きたくなる。彼らの答えとしては「PBLの単位がもらえました」ということなのかもしれないし、学生としてはそれで十分かもしれない。しかしプレゼンを聞いている方としては
「単位がとれたの。よかったね」
という感想しか持ち得ない。
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今回いろいろな企業から来た人が審査員として参加し、コメントをしていた。学部の3年生相手、ということで実に気を使ったコメントをしていたように思う。
しかし言わんとしていることは(学生たちに伝わったかどうかは別として)実に的確だった。覚えているものを列挙する。
・そもそもなぜこの課題に取り組んだか、という説明がない
・それを解決することでどんなすばらしい未来が広がるのか
・課題を解決した方法に新規性はあるのか
ここらへんは教官がどう指導したかに大きく依存している気がする。
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特に感心したのは明和電機 土佐社長のコメントだった。土佐氏自身、自分の作品をどう世の中に問うていくか、常に試行錯誤していることが講演から伺えた。
実は3年生の発表以外にも、1年生、2年生が各チームずつ発表した。それらは「がんばって作りました」というものだった。本来この4チームから明和電機賞が選ばれるはずだった。一チームは「出題する側から数学の問題を作る」という面白そうな課題をやっていたのだが、正直意味がさっぱりわからなかった。土佐社長も質問したが、回答は全く要領を得ない。「コミュニケーションがうまくいっていない」と土佐社長は質問をうちきった。
4チームの発表が終わったところで土佐社長が「これは課題を解いたということですか」と確認した。
さて、いよいよ明和電機賞の発表です、というとこで挙げられたのは、先程の「モテ声」だった。確かに「とりあえず電気回路作りました」という発表に甲乙つけて賞は挙げられんわな。
土佐氏は、懇親会まで残り、退出しなければならない時にこういった
「学生さんたちにアドバイス。プレゼンがくどい。3分で一端まとめて、そのあと細かい説明をしなさい。学会の発表だったらいいのかもしれないけど、学外の人もくるような場所ではそうしないと」
いや、この日で私は明和電機のファンになってしまいました。
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私がこれを受講する3年生だったらどうするかな、と思う。問題を与えられるチームに参加して、ちゃっちゃと本を読んで解決をまとめて、それについて発表しただろうなと思う。
しかし今や私は「ロボコンはくだらん」と考える「問題発見」指向のおじさんだ。
「こんな問題を発見し、それにこんな問題解決方法を提示した」
と胸をはれるような面白い発表がみたいな、、と野次馬としては思うわけだ。いや、学部3年にそこまで要求するのは無理、という意見もあろう。たしかに多くのチームが強調していた通り、知識も経験も0からのスタートだとは思う。しかし堂々と失敗できるチャンスというものはそう多くはない。知識も経験も0でもこんな解法もありますよ、というのを見せてもらえれば感動するんだけどなあ。